あらすじ
父が死んで、身よりを失った女子高生の茜と妹のすみれは、親戚筋の久我家に住まわせてもらうこととなった。久我家は京都東山の麓、岡崎の広い敷地に「月白邸」と呼ばれる大きな日本家屋を構えており、二人はそこで、家主で若き日本画家の精鋭・青藍と、彼の友人で陽だまりのように明るい絵具商の青年・陽時に出会う。月白邸に集う人々の、じんわり優しい心の再生物語。
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Posted by ブクログ
確かに人嫌いではあるけれど、本来は面倒見のいい優しい人物なのだろう。
ただ彼の置かれていた環境や境遇が、それを素直に許してくれなかっただけで。
ここで舞台が「京都」ということが非常に活きてくるなと感じた。
偏見かもしれないが、京都の芸術系を嗜む旧家となると、それだけで血縁者がどのような境遇でいるのか、言われなくてもある程度想像できるのではないだろうか。
特に絵師の元に集う人々は、そんな旧家の出ながら彼らとは相容れない立場の人たちだったから。
実家から駆け落ちで飛び出した父に先立たれ、叔父の家で肩身を狭くして暮らしていた姉妹。
旧家から逃げ出そうとした従姉を救えなかった青年。
そして、その家で唯一絵の才能に恵まれながら、その家を出るしかなかった若き絵師。
そんな彼らが家族になれる場所、それが「月白さんとこ」だ。
勿論最初から上手く行ったわけではない。
姉はいつか家を出て行かなくてはいけないと分かっていて、月白の家でもずっと余所者として縮こまっていた。
妹は絵師に懐きながらも、秘密を抱えていた。
青年は様々な女性と仲良くしながらも、ずっと従姉のことを引きずっていた。
そして若き絵師は、亡き師匠との約束をまだ果たせずにいた。
そんな彼らが美味しいご飯を囲み、規則正しい生活をし、大の大人がこぞって妹を可愛がり(可愛がる気持ちは非常によく分かるが)姉にびしびし怒られている。
何と微笑ましい家族だろうかと。
決して彼らの周囲は優しい世界ではないけれど、笑える場所が安心できる場所があるということは、きっとこれから先の彼らの支えになる。
その結果、若き絵師は亡き師匠の課題にようやく筆を載せることができた。
その道はまだまだ長いものになりそう。
彼が描き出したその絵に、またどんどん色が仲間が増えていってほしいと思う。
それはきっと叶わない願いではないだろうから。
今の彼なら。
Posted by ブクログ
京都ってことはあまり関係ないけどこういう話が結構好きな私。望月麻衣さんの話もそうだけど、この手の女子高生がイラつくんだけど、放っておけない爺さんです(私のこと)。結構テンポよく進んだね
Posted by ブクログ
月白邸での生活も徐々に慣れた頃、屋敷の元主人・月白の愛用の酒器が見つかり金継ぎの依頼をしに行く事になり、以前月白邸に住んでいた陶芸家の元を訪ねる。
元主人・月白の器の大きさ、そして青藍にとっての拠り所だった人。色々な芸術家を住まわせて居たが、月白が亡くなった事で皆それぞれの道を歩み始めた。だが、青藍だけは踏み出す事ができずにいて…
青藍も茜も大切な人を失い自暴気味になっていたけど、本当の家族になろうと歩み寄っていくのが前巻よりも進めた気がします。
茜が16にしてあれだけの料理と気配りが出来るのが凄すぎる。大切に育てられたからこそ、真っ直ぐに成長したんだと思います。
個人的にすみれにベタ甘なおじいちゃんみたいな青藍と陽時がお気に入りです。