あらすじ
蒙古は上陸に失敗していた! 秀吉には奇想天外な戦略があった! 大和には活躍できない理由があった!
日本史の3大ミステリーに、映画『アルキメデスの大戦』で戦艦の図面をすべて描いた船舶設計のプロが挑む。
リアルな歴史が、「数字」から浮かび上がる!
【謎の一】蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか?
最初の蒙古襲来「文永の役」で日本の武士団は敗北を重ね、博多は陥落寸前となったが、なぜか突然、蒙古軍が船に引き返したのはなぜか?
【謎の二】秀吉はなぜ中国大返しに成功したのか?
本能寺の変のとき備中高松城にいた羽柴秀吉が、変を知るや猛スピードで2万の大軍を率いて京都に戻り明智光秀を破った「中国大返し」はなぜ実現できたのか?
【謎の三】戦艦大和は「無用の長物」だったのか?
国家予算の3%を費やし建造された世界最強戦艦は、なぜ活躍できなかったのか? そこには帝国海軍が冒していたある致命的な設計ミスが影を落としていた――。
小さな「数字」を徹底して読みとり、積み重ねていくと、
大きな「真実」のかたちが見えてくる!
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
正に『新たなる視点』!
2022年5月読了。
以前から積ん読状態だったもので、気には成っていたのですが、中々手が出なかったものです。
「科学的見地から歴史を考える」という発想は非常に斬新。著者は「歴史自体の専門家では無いので…」と謙遜されていますが、これだけの検証が今までされていなかった事自体に、正直驚きました。
既に沢山のレビューが上がっていますので、内容全部には触れませんが、どの考察も得心、感心するばかり…。秀吉の件は、先日NHKでも紹介されていましたね。確かに「海路」と云うのは盲点でした。
但し、この考え方を進めて「秀吉陰謀説」を語る方々には賛同し兼ねますが…。
街道(道路)整備及び兵站の下準備については、「信長への出陣要請を出している」事を考えれば「上様の為に…」と用意周到に手を回していたと考えるのが普通では無いでしょうか?
四国もまだ長宗我部氏と決着が付いていない状態だったのですから、信長が海路を選ぶとは思えません。そして、婚姻まで使って漸く長宗我部氏との話を取り纏めつつあった光秀に、全てを反故にして「四国召し上げ」と手を翻した信長への光秀の怒りを考えれば、この手の「真犯人は?」の問いにも自ずと答えは出るのではと。
戦中派以前の方は「戦艦大和」の存在を、戦後小説が発行されてから知った、と云う事も初めて知りました。ちなみに「大和ホテル」よりも前に戦艦長門が「長門ホテル」と呼ばれており、山本長官もそちらの「ご宿泊」の方が長かったのは有名ですw。
とにかく「目からウロコ」本ですので、文系理系を問わず興味の有る方にはお薦めします。
ただ、読後一番印象に残ったのは、終章に書かれている著者の「日本の未来への不安」です。
ココに、現代日本の問題点が凝縮されている様に感じて読了しました。
Posted by ブクログ
通説に疑問を呈する著者によるシミュレーションがなかなか面白い。文献中心の研究による世の通説に関して、サイエンスの視点による精査が必要であることを痛感する。歴史学も文理を超えた学際的な研究に進まなければならないのではないか?
Posted by ブクログ
鎌倉時代に、900隻の大船団が押し寄せ、すぐさま全軍上陸して、武士団をさんざん打ちのめし、謎の撤退をして日本は救われた・・・そんなわけあるかい!ということから検証した結果、どうなのかは本書に譲るとして、神風、奇跡などは心地がよくロマンはありますが、古書・伝説・伝承の通り実行するならこういう条件が必要なはずだ、その条件は満たせるとは到底思えない、だから本当の歴史は○○と推察される、という姿勢が必要という指摘はその通りだと思います。
著者は、長年、船に関わる仕事をしてきて趣味も古船というオタクであると告白し、船への興味から、蒙古襲来について調べ、海洋関係者の集まりで発表してみた結果、本になったとのことで、船にまつわる話題として、秀吉の中国大返し、と戦艦大和を題材に推理のごとく進んでいきます。
ブルーバックスらしい切り口で興味深かったですが、各話題をもう少し短くして、ネタを増やしてほしかったな、と思いました。他の著者でもいいので新しい歴史の捉え方として、日本史サイエンス”シリーズ”みたいな感じで続巻を期待したいところです。