【感想・ネタバレ】日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫るのレビュー

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2020年10月25日

サイエンスと言いますか,工学的な知見で,日本の歴史上の主な三つの出来事について書かれている本です.特に秀吉の大返しについては,本当にそれが現実的に可能であったかを,様々な観点で数値的に見積もり,真偽はともかく,興味深く読める本でした.歴史は,古文書だけを頼りにするのではなく,このような工学的知見での...続きを読む検証も,有用なのかも知れません.

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Posted by ブクログ 2020年10月09日

エンジニアの視点から歴史を読み直す。ブルーバックスの異色のテーマ。日本史とサイエンスのコラボから生まれた傑作。

筆者は艦船設計の技術者。映画「アルキメデスの大戦」では製図監修を担当している。

・蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか。
・秀吉の大返しはなぜ成功したのか。
・戦艦大和は無用の長物だったのか...続きを読む

日本史における謎をエンジニア視点から考え直した一冊。縦割り行政と同じように学問を縦割りでなく横糸から見ると今までと違ったしかも説得力のある理屈が生まれてくる。

元寇についていえば、蒙古軍の船の隻数や建造に必要な材料、人足の数。実際の運用、錨泊位置など専門的な視点から見つめ直し、神風が吹いたからという偶発的な理由ではない撤退の理由を論じている。
中国大返しも同様。秀吉の兵力数、必要な糧食とさらにそれを運ぶ人足、道程と兵の疲労など、具体的な数値を挙げて検証している。

戦艦大和については筆者の正に専門分野。最先端の技術と戦後日本への貢献について、また日本海軍の艦船に共通の設計上の欠点などを述べている。

何より絶品なのがそうまとめの章「歴史は繰り返される」。数字のリアリティの重要性、ものづくりの力。日本人が陥りがちな目的と手段の乖離など、筆者の経験も踏まえて語る。この章だけでも次回の著作を期待したい。

本書を通じて流れる筆者の思想は科学的な視点の重要性。理科の授業や理系教育が次第に減っている日本の現状。単に歴史ファンの作品でなく、歴史を繰り返さないため未来を見た視点が結論の作品。

ブルーバックスとしては異色の作品。今後同様な分野の作品が増えることを期待したい。

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Posted by ブクログ 2020年10月08日

最近歴史の調査が進んでいることもあって、以前にがっこうで習った有名な事件の真相が一般の本でも紹介されるようになってきました。とても興味深く読んでいます、それらを読むと当事者である武将も、私が理解できる考え方や行動をしていたことが徐々にわかってきました。

さて、この本は新聞か何かの広告で見つけて興味...続きを読むを持ったものですが、海上自衛隊で船の設計などに関わった方が、サイエンス(様々な計算など)を通して、歴史上の有名な3つの事件、事柄(3つ目な戦艦大和の存在意義)について述べています。

どれも素晴らしい視点で歴史の事件を捉えていていますが、本人は歴史学者じゃないのでと謙遜していますが、本を読み限り、歴史書もかなり詳細に研究されているようです。特に、第一回目の元寇である文永の役にて、日本の騎馬武士たちも集団戦法を使って戦っている絵(p58)は驚きともに、なんだかホッとした安心感がありました。最初はともかく、最後まで名乗りを上げた戦いをしたなんて、信じたくなかったので。

この本は著者である播田氏の一冊目のようですが、今後も続編を是非出して欲しく思いました。

以下は気になったポイントです。

・高麗は元からの命令(6か月後に軍船建造)を間に合わせるために、伐採・輸送に大人数をかけて期間短縮をし、かつ原木の乾燥を省いて生木のまま加工を始めた、生木を使うと曲がりや歪みが生じて水漏れの原因となるが(p25)

・実際に戦ったのは蒙古兵の中の、雇われ高麗兵が多数混じった寄せ集めの歩兵集団で、騎馬兵は指令官クラスで3%程度、いまでも対馬、壱岐には「モッコリ(蒙古)」「コックリ(高麗)」と言うと子供が泣き止むという伝承が残っているといわれる(p38、39)対馬海峡を横断するには海流の2倍の速度(2−3ノット)は必要となる(p45)

・竹崎季長は肥前の御家人・白石勢のおかげで九死に一生を得た、日本の武士団はけして一騎討ちに固執していたわけではなく、むしろ集団騎兵による突撃戦法を多用していた、白石勢の騎馬軍団が蒙古軍を蹴散らしている絵はほとんど知られていない(p59)

・蒙古軍の上陸地点が息の浜でなかったとすると、文永の役の全容も全く異なってくる、宮崎宮は炎上したものの博多の街は燃えなかった可能性がたかい、博多の街は何度も燃えているので発掘からはどの時代のものか判別が難しい(p63)

・近年の研究では鎌倉時代でもじつは一騎討ちなどは稀であり、ほとんどが集団で戦っていることが明らかになっている(p76)

・蒙古軍5000と武士2000人の日本武士団は集団騎馬攻撃で武器効率をあげるランチェスター第一法則に基づいた戦略で戦ったことにより、歩兵5000人の蒙古軍と互角に対抗した。蒙古軍の死者は半数の2500で壊滅状態、日本武士団も半数の1000を失ったが、騎馬は740が残存という結果となる、日本側の文献と数字が合う(p82)

・二重構造の日本刀は振り降ろして相手の剣に当たった時に、硬鋼の部分は圧縮力が加わることで大きな衝撃、軟鋼の峰部分は延びて引っ張り力が働き、衝撃を吸収する、軽量ながらよくしなって曲がらず折れずよく切れる日本刀は接近戦最強の武器となった(p85)

・世界の剣の多くは単層の硬鋼製で、衝撃で折れなくするため、刀身は厚く、重量は重く、おもに突きと、腕力で叩き切るために使うが、湾曲した日本刀は引き切る力が主体で、突きも可能。湾曲している日本刀は馬上から振り降ろしても食い込んで落とすことはない(p86)

・蒙古軍は上陸に時間がかかって全軍が一度に進軍できず、小刻みに兵員を増やすという最悪の逐次投入となって失敗した。博多の戦いで蒙古兵の戦死者を5000とすると、全体の約19%となり軍事セオリーからは撤退しかない(p87)

・蒙古軍が恐れたのは日本軍に援軍がくることと、北西風が吹き始めること、旧暦11月になると吹き始める季節風で、これが吹くと玄界灘は大荒れとなり当時の帆船では渡れなくなる、高麗国王の死により出撃が3か月延びたことが決定的な遅れとなり、これが謎の撤退の直接の理由である(p88)

・戦国時代の部隊は、上級武将を指揮官とする部隊(100名程度)を一つの単位として構成していた。馬上侍10、長槍20、旗指物20、弓10、鉄砲10、小旗1名、小荷駄隊(食料、武器を馬で運搬)20−30、2万の兵隊ならこれが200組(p105)

・英雄と呼ばれる人々には、決してギャンブルに運命を委ねず、リスクを小さくする努力を最後まで怠らない共通点がある、桶狭間の戦い、関ヶ原の戦いも準備は周到極まりなかった(p144)

・砲弾の威力は砲弾の容積で決まり、それは弾径の3乗に比例する、なので41センチと46センチ(18インチ)では、威力は1.41倍となる、パナマ運河を渡る必要から運河の幅を考慮すると、アメリカは41センチ(16インチ)の主砲が最高であった(p159、165)

・戦艦大和の貢献として、1)日本の重工業や機械工業の基盤作り、造船業はあらゆる製造業が集約した総合産業、造船が戦後に興隆したのは、大型ドックとブロック工法による、2)大和の巨大な測距儀は、レンズから機械式計算機を使って距離を計測するもので、カメラ、精密機器の発展に貢献した(p219)

2020年10月8日作成

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Posted by ブクログ 2020年10月04日

ブルーバックスのラインナップの中でも異色の一冊になるのではないか。「元寇」「秀吉」「大和」の三題で、歴史上の「通説」を、エンジニアリングの眼で、ロジスティクス、プロジェクトコントロール、ストラテジーなどの観点から、物理法則に則った数値シミュレーションで検証するもの。古今の英雄譚も、人やモノを実際に動...続きを読むかすにあたって必要なカロリーや時間を真剣に評価してみれば、別の解釈が浮かび上がる。人文畑の研究者には一般的でない視点であろうが、教科書や人の話を鵜呑みにせず、自分の頭で可能な限り検証することの大事さを若い世代に伝えるこのうえないテキストだ。
終章を読み終わって、つくづく思い出されたのは、いろいろな危機に際して「できることは何でもやれ!」と安易に吠えることがリーダーだと勘違いしていている人が多いということ。この本に示されたような考え方の基本を身につけていない、勢いだけの人や熱意だけの人では、真の危機は乗り越えることはできないだろう。

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Posted by ブクログ 2020年11月11日

本書は歴史家ではなく船のエンジニアの方が書かれたもの。「蒙古襲来」、「秀吉の中国大返し」、そして「戦艦大和」をテーマにそれぞれの通説を工学的な見地から検証、批判している。蒙古襲来については、文永の役においてなぜ蒙古軍は突然船に引き上げてそこで遭難したのか、大返しについてはは本当に可能だったのか、可能...続きを読むだったとすればそれはなぜか、戦艦大和は無用の長物であり、本当に時代遅れの大艦巨砲主義による失敗だったのか、という疑問である。

謎解きは本書を読んでもらうしかないが、それぞれ非常に説得的であり、面白かった。個人的にはやはり戦艦大和の話で知らない話も多く、タメになった。戦略論的、戦術論的に戦艦大和の意義を認めつつも、それを使いこなせなかった日本軍の問題点にも鋭い指摘がなされている。(海軍は合理的であったという通説も成り立たないように思うが、そこはあまり深掘りはされていないのがちと残念。)

文献には必ずしも寄っていない仮説と科学的な見地からの実証を、歴史家はもっと重視すべきという指摘はごもっとも。そうした観点から一次資料の批判も深められるであろう。

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Posted by ブクログ 2020年10月31日

数字という嘘のつけない根拠を基に、歴史上の伝説とも奇跡とも思える通説に疑問点を投げかける本作。理工系の老舗新書のブルーバックスから、何故日本史の本が?と思ってたが、読んで納得の内容。
鎌倉時代の元寇、戦国時代の秀吉の中国からの大返し、第二次世界大戦の巨大戦艦大和の存在意義についての3本立て。
どれも...続きを読む日本史における大きなポイントではあるが、共通点はなかなか思いつかない。
それは、著者は、長年の造船に関わったエンジニアという経歴によって明かされる。
歴史学者では無いが故、通説と言われた内容でも、実現不可能なものを客観的に疑問に感じての検証となったのだろう。なるほどなあと唸る内容。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年10月04日

<目次>
第1章  蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか
第2章  秀吉の大返しはなぜ成功したのか
第3章  戦艦大和は無用の長物だったのか

<内容>
歴史の専門家ではなく、造船の技術者の本。通常こうした趣味の本は、独りよがりな荒唐無稽なものが多いのだが、さすがに講談社のブルーバックスだけある。きちんと...続きを読むした考証(というか計算)がされている。3つの話ともに、専門の船に関することを組み入れた考証となっている(第2章は、秀吉が武器や荷駄と共に船で船坂峠を越えたという話)。第2章は「面白い」だけで終わりそうだが、第1章はかなり信憑性がある。第3章は、当時の日本軍の勘違いを指摘したもの。最近よく見られる太平洋戦争の敗因を分析した話を、技術的に裏付けている(大和の性能自体はとても良かったとする)。

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