実は,前著とセットでメルカリで購入した。とてもきれいな本だったけど,わたしが一度読むと,赤線だらけになるんだよなあ。
さて今回も,著者の専門分野である「船」が絡んだ歴史的な事件を取り上げている。「邪馬台国は何処に在ったのか」「秀吉の朝鮮出兵」「日露戦争時の日本海海戦」について,科学的に考えてみる
...続きを読むと,どんなふうな世界が見えてくるのか,とても信じられる仮説として,歴史の見方が変わってくると思う。
ここでは,その一例として強敵ロシアのバルチック艦隊を破った日本海海戦について少しだけ紹介しよう。あの海戦は,東郷平八郎が考えた作戦(T字戦法)で勝利したことになっているのだが,本当にそうだろうか。
そもそも,バルチック艦隊は,7ヶ月もかけて地球を一周するくらいの航海をしてきている。日本は,ロシアの艦船たちがウラジオストクに寄る前に,日本海でたたくことを計画したという。むしろ,バルチック艦隊に勝てたのは,こちらの理由なのではないか。
7ヶ月も航海を続けてきた乗組員たちは,その間,戦闘の練習などができたのだろうか。食糧の調達に加え,当時の燃料である石炭はどれくらい積んでいたのだろうか。やっとたどり着いた日本海で待ち受けていたのは,戦闘練習をくり返し,海の特性を十分知っている日本の海軍だった…というわけだ。
著者はいう。
結局,日本海海戦の勝利は奇跡ではなく,日本は勝つべくして勝ったのす。「神話」として祀り上げず,なぜ勝てたのかをより理性的に分析していれば,三十余年後,中国などを怖れるに足らずと泥沼の戦争に突き進んでいった歴史は,少しはちがうものになっていたかもしれません。(本書,214ぺ)
歴史を科学の目で料理し直す。好奇心を刺激してくれます。