あらすじ
退役した海軍司令官、ホーカン・フォン=エンケは、自宅であるストックホルムのアパートメントから散歩にでかけ、そのまま戻らなかった。ヴァランダーは娘リンダのため、そして初孫クラーラのために、ホーカン失踪の謎を調べ始める。海軍時代の経歴になんらかの秘密が隠されているのか? 海軍時代のホーカンの知り合いに話を聞くが、彼の行方は杳として知れない。そんな中、今度は妻のルイースまでもが姿を消してしまったのだ。ときおり襲う奇妙な記憶の欠落に悩まされながら、ヴァランダーは捜査を進めるが……。刑事ヴァランダー最後の事件。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
スウェーデンの歴史をなぞるようにこの物語は過去から2000年代まで進んでくる。
潜水艦の艦長だった失踪した男の闇の部分が見え隠れする。スウェーデンの実際にあった事件、1986年のパルメ首相暗殺事件が深く影を落とす。それに並行してスパイの存在や過去の潜水艦の攻撃・作戦がいつまでもその、苦悩する男を精神的に追い詰めてゆく。そしてその妻をも。
ヴァランダー自身もかつての事件時携わった人物や土地や苦い思い出に次々と追われヴァランダーシリーズの総決算大サービスセールのよう。
実際、警察官として捜査した事件ではなかったので、あのケジメのつけ方は少し疑問が残るけれど、リンダの父親、クラーラの祖父としてはよかったのでは・・・
年老いて自分の父親と似てきたと感じているヴァランダーの思いには納得して、苦笑い。
ほかの著作「流砂」や「イタリアンシューズ」を彷彿とさせるシーンもあって、ヘニング・マンケルファンとしては実際泣けてくる。
「私の秋が終わったら誰かの春が始まる」のセリフにはマンケル氏の思いが充分込められている。
訳者のあとがきからすると、もう一冊著作があるらしい。これで最後と思っていたけれど、やっとひとつ私ももう少し頑張って待ってみようと思う(忍び寄る老いに恐れをなして・・・のスタンスがうつってしまった)