あらすじ
知識から知恵へ、イノベーションから持続的イノベーションへ。
世界のビジネス界に多大な影響を与えた経営学の世界的名著『知識創造企業』の著者両氏による25年ぶりの続編。
イノベーションを起こし続ける企業の秘訣はどこにあるのか。企業が絶え間なく繰り返し、新しい知識を生み出し、組織全体に知識を広め、知識を行動に変えなくてはならない。そのためには、SECI(セキ)モデルで説き明かした「暗黙知」と「形式知」に加えて、「実践知」が不可欠である。
本書では、その知識を絶えざる実践を通じて知恵(wisdom)にまで高めることの重要性と、その知恵を獲得・活用するための方法を示した。実践を積み重ねていくと、実践知が得られる。なおも繰り返していくと、実践知が豊かになり、次第にスケールが大きくなる。企業の枠を超えて社会までも巻き込んでいく。こうした実践知を備えたリーダーを「ワイズリーダー(賢慮のリーダー)」、ワイズリーダーに率いられた企業を「ワイズカンパニー(賢慮の企業)」と呼んでいる。
本書では、学問を超えた理論と、著者が長年にわたって収集した多くの数多くの企業事例をもとに、イノベーションを起こしていくリーダーや企業を描き出し、デジタル時代の人間の生き方と経営を考える。
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Posted by ブクログ
骨太な一冊。
リーダーの主観や信念に基づき(パーパス的な話)つつ、社会に認められるには共通善を目指すべきという主張は納得性がある。一方で現実的な課題に向き合う必要があるということで、数々の実践すべきアドバイスがまとめられている。
多方面にアドバイスされており、読み手や状況によって響くところが違うと思うので少し間をおいて読むとよいかもしれない。
今の自分は自問自答を繰り返せ(フィードバックループ回す)、木と森を見よ(大局観)、基本に忠実にしつつ変化への適用(両利きの経営)といったところが印象的だった。
最後の一節(さぁ、本を閉じて行動を起こそう)が内容を総括しているとともに、長く分厚い本だからこそ、なおさら響く。
Posted by ブクログ
知識創造企業の続編というか完成版というべき本。
海外の研究者が書く、企業研究・経営系の本より、やはりしっくりくる。取り上げられている企業が、本田やトヨタ、JAL、エーザイなど見知った企業のため、それも理解の助けになる。
ワイズカンパニーになるためには、ワイズリーダーが必要であり、それは必ずしもCEOだけではなく、ミドルマネジメント層も大事だ、というのは実感にあっている。
特に大企業では、経営目標の数値自体は、上から降りてくると思いますが、実際に、アイデアを出すのはミドル層が多いと思います。イノベーションを起こすために、知識に加え、知恵と実践が重要です。
ただし、こうなんというか熱い感じの現場の話は、盛り上がるけど、「不夜城」とブラック企業の境がとてもあいまいな気がする。
広い意味で、成功すればそれが正解なのだろうが、火中の栗を拾うとはいえ、取り返しのつかない失敗により、そのまま消えていった企業やプロジェクトもあると思われ、成功した企業のみの研究だと、生存バイアスがかかっているよなーとも感じた。
繰り返しになるが、プロジェクトX的な、燃える展開は面白いですけどもね。
<気になった点>
・未来の創造では自社が儲かりすればよい、という発想はやめなければならない。公益の追求でなければならない。
・(本田宗一郎)「現場」「現物」「現実」の三現主義。社員は直接的な経験を通じて、問題解決やイノベーションに役立つ有益な知識を得られる。
・前著の要点は、知識創造がイノベーションをもたらす。本書では知識の実践がイノベーションを支える、ということ。
・宗一郎は、身体的な感覚によって得られた暗黙知をすべて統合することで、バイクの状態を見抜いたのである。(→ここ!いっぽ間違えれば詐欺か怪しい宗教団体だが、正解を見つけてしまうと、カリスマになる。うーむ)
・本質を見抜くためには、個別のことの中から普遍的な「真理」をつかみ取ることが求められる。普遍と個別をつなぐには、主観的・客観的な考えを概念化して、みなが分かる言葉にするとともに、意欲を掻き立てる野望やビジョンとして表現する能力が必要になる。
・トップが実現したいと望むことと、現場が実際に直面していることの間に横たわる矛盾、つまり理想と現実のギャップの解消に努めているのが、ミドルマネージャーである。
・①エピテーメー・・・なぜを知る、②テクネー・・・いかに知る、③フロネシス・・・何をすべきかを知る。