あらすじ
黒瀬令児(くろせれいじ)は、家族、教師、幼馴染、アイドル、小説家、そしてこの町。そのすべてに縛られながら“ただ”生きていた。想いは救いと絶望を生み出しながら、それぞれがそれぞれの場所で、気が付き、嘆き、そして沈んでいく――。少年の生きることに希望はあるのか。この先に光はあるのか。“今”を映し出すワールドエンド・ボーイミーツガール、第十四章――。
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田舎の閉鎖的な町で暮らす少年・黒瀬令児。
彼は、家族に縛られ、町から出ることを許されません…。
一体彼の人生は誰のものなのか。
閉塞感やノスタルジーが漂う作品です。
令児には、認知症の祖母とそれを介護する母、引きこもりの兄がいます。
母は現在の状況に疲れ果て、自分が楽になるため、令児に大学進学ではなく地元に就職することを強います。
しかも就職先は、令児をパシりとして使ってくる幼なじみの会社でした。
令児の人生は令児のものであるはずなのに、家族や町に縛られ、自分の人生を生きることがままなりません。
そんなとき出会ったコンビニ店員の女性が、令児が好きなアイドルグループのメンバー・ナギであることに気付きます。
舞い上がる令児ですが、ナギもワケアリのようで…。
「この町からいなくなる人」だからと自分の置かれた状況を話す令児に対し、ナギは「心中しようか」と提案するのです。
戸惑う令児となし崩し的に肉体関係をもつナギですが、なんと彼女には夫がいることが発覚します!!
令児が住む町は「春の棺」という劇中小説に登場する情死ヶ淵伝説の舞台となった町。
情死ヶ淵伝説とは、その小説の中で書かれている江戸時代に起きたとされる心中の話です。
この物語は、その情死ヶ淵伝説をキーに展開していきます。
登場するのはそれぞれワケアリで深い闇を抱えている人たちばかりです。
しかし、描かれている地方特有の閉塞感やしがらみに縛られた状況への諦め、自分の将来への絶望は、物語の中だけではなく、現実に生きる我々にも身近なことではないでしょうか。
それらを『ヒメゴトー十九歳の制服ー』の作者である峰浪りょう先生が圧倒的な描写力で描くため、読んでいるこちらも息が詰まるような閉塞感を感じるのです。
終盤、狭い世界で生きる令児に対しナギは
「全部捨てて町を出ていけば?」
という言葉をかけます。
そこではじめて令児は逃げても良いということに気付くのですが…。
明るい展開は今のところ見えませんが、彼らに今後救いは訪れるのか、複雑に絡み合った人間関係が「心中」というテーマからどう進んでいくのか…。
ハッピーな物語に飽きた方、是非この閉塞感に浸ってみてはいかがでしょうか。
感情タグBEST3
もういい
父と…って嘘?ホント?もうドロドロはお腹いっぱいなのにまだ足すか。ここまで来ると作者さん側が次はどのドロドロにしようかと楽しんでるように感じる。
匿名
面白かった。
みんな一体どこに向かっているんだろう。
どこにも向かっていないんだろうな。終わりのない真っ暗なトンネルを進んでいる気分。
この物語の目的地はどこにあるのか。
Posted by ブクログ
お縄になった玄が一番安定しているように見える地獄。
チャコの壊れっぷりは一番不健康で見ていられないけれど、妙に俗物的な壊れ方というか、壊れた結果エゴを隠せなくなってるところが生々しくて結構好き。
ただ、令児目線だとナギが一番いいよなあ。変なエゴをぶつけてこないから。
Posted by ブクログ
切りかかられて庇うなら兎も角
持っている刃物の刃の部分を掴むのフィクションあるあるだが
普通に手首を掴めば良いのに何故なのか。
母親が生きていたと分かった時の絶望感が重過ぎる。
先生は全く好きになれないし、ナギに文句を言う資格もないと思うが、
「死にたい死にたい気持ち悪い」は同意。
先生にもう令児と会うなと言われて、初めてかもしれない
従わないナギの姿に、会わせてあげたいと思ってしまう。
同級生達が声を掛けてくれるのかと思ったら
結局そんな感じかとがっかりする。
だったら無視される方がマシかもしれない。
チャコは母親がもう少し早く父親に反論してくれていたらな。
そう言う可能性も疑ってはいたが、結局父親は誰なのか。
祖母は自分もさせられていたからと言って
それが嫌だったのなら娘にさせるべきではなかったのに。
どこまで行っても闇ばかりだ。