あらすじ
二学期を迎えた僕たちPNOは、世間の注目度が上がってマスコミからも付け狙われるように。
そんな中、伽耶が新しくできた友だちといっしょに文化祭に参加したいと言い出す。演目は『竹取物語』を本歌取りしたオリジナル小説の朗読劇。
凛子たちも劇伴の演奏で参加することになり、PNOが演るらしいという噂がネットで流れ始めて文化祭はにわかに不穏な空気となり――
音楽をやっているだけでは済まなくなる人生の大分岐点! 超高純度青春ストーリー、めまぐるしい新展開の第8弾!
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Posted by ブクログ
約1年ぶりの新刊を嬉しく思います。帯に書かれている真琴の「終わり方は、自分で決めないと」という言葉に込められた思いが、今回の主題であったように思います。いつもの真琴とヒロインたちとの軽妙な掛け合いを楽しみつつ、真琴が自身の高校生活を続けるのか、それとも辞めて音楽に集中するのか、という二択にどう決着をつけるのか、ハラハラしながら読み進めることになりました。さて、今回は学園祭の準備と本番を軸に進みますが、伽耶の友人・悠麻が書いた『竹取物語』の本歌取り小説の内容が興味深く感じました。続きを楽しみにしています。
違う形
今までのストーリーとは違った切り口での主人公たちの活躍でした。どちらかというと少しサイドストーリー感があるような気もしました。新鮮味のある読後感です。
Posted by ブクログ
この表紙、前面に居る伽耶に注目してしまうけど、よくよく見たら後ろの真琴ってメイド服姿?女装をメインに扱う作品でもないのに、女装姿の主人公が4度も表紙を飾るって本当にみょうちきりんな話だと思いますよ?
音楽要素をメインにした作品で『竹取物語』なんて今年公開された某作品を想起してしまうけど、本作は『竹取物語』を全く別の切り口から扱って見せたね
現状、PNOはアルバム制作に取り掛かっているけど、制作途中の音作りに現れていたようにPNOの終わりは既に予見されている。いずれ訪れる滅びを緩やかに待っているような状態。それは喩えればかぐや姫が月に戻る自分の運命を知った上で地上での日々を過ごしていたような
そうした喩えを真琴に当て嵌めた時、残る時間を真琴はどう過ごすのか、という点が主題に上がって来たような
それだけに真琴の日々を穢すかのように、PNOへと暴走したファンや記者が群がり、懸念した学校側がPNOの活動に口出ししてくるのは真琴にとって面倒な展開
真琴って途轍もない音楽バカだから音楽にかまけていられればそれで人生満足できそうなタイプ。逆に言えば、音楽以外のストレスが圧し掛かっていると途端に人間力が下がってしまうタイプでもある。そんな彼にとって明確に音楽活動を禁じられているわけではないが、学校関係者がバンド活動に控えめだけれどしつこく注文を付けてくる状況は面倒となるわけだ
作中でも言及されているけど、真琴が高校に通い続ける理由ってかなり希薄になっているんだよね。音楽関係では既に幾つも仕事をしているし、音楽バカだから音楽漬けの毎日となった方がコンディションは上がるだろうし、学校で親しい者なんてそれこそバンドメンバーしか居ない。そして大学へ進学する気は無いから学業に注力する理由がない
彼は早くもモラトリアムに突入している。それも何をすればいいか判らないというモラトリアムではなく、進む道が決まっているのに決断を先送りにするモラトリアム
真琴がそうした状況に陥っている為に、似た状況と言えなくもない伽耶が2学期になってから友達を作る展開は意外性があるね
伽耶って真琴程では無いにしろ、ある程度自分がどのような道を進みたいかはっきりしていて、既に芸能業にも就いている。まあ、芸能業だから学業を続ける利点は真琴よりもあるのだろうけど、学校生活へ必要以上に注力しなくても良い立場かもしれない
そんな伽耶が今更になって友達作りに成功して、おまけに友達・悠麻子の依頼により文化祭で活躍の場を得られるなんてなかなか無い経験
伽耶に朗読させるというのだから、てっきり悠麻子は伽耶をイメージして作劇したのかと思いきや、むしろ真琴をイメージしたのではないかと思わせるのは面白いね。勿論、真琴の苦悩とかぐや姫の苦悩が奇妙な形でリンクしているからそう見えているだけではあるのだけど
ただ、前半部と後半部を異なるイメージで悠麻子が作った可能性はあるんだよね。悠麻子は前半部を書き上げた後、PNOに見せて反応を求めた。自分の物語がPNOにどう響くかという点を見たかったのだろうけど、反応を貰ってもすぐには後半部を書き上げられなかった
前半部にてかぐや姫が自分の行動目標として提示したのは夫の獲得と水の運搬。後者は兎も角、前者は可能だがそれを得てしまうと『竹取物語』ではなくなってしまう。その意味ではかぐや姫はそもそも手に入らないものを求めていたと言える
後半部になって新たに現れる要素として音楽が挙げられるね。音楽関係者に作品の反応を求めていた悠麻子が後半部を書き上げる為に最も欲したのは何か?といえば、真琴と離れて活動する凛子達の様子だったのではないかと勘繰ってしまう
レコーディングシーンにて言及があるように、いつだって高クオリティな演奏を繰り広げる凛子達だけど、真琴が関わらず、真琴に見て貰える余地が無い局面ではパフォーマンスが落ちるとの事で
今回の朗読劇、本番は真琴に見て貰えるだろうとの期待があるからパフォーマンスは極端には落ちないだろうけど、彼女らの胸に渦巻くのは真琴がバンドや学校から去るのではないかという不安感か。前巻で十二分に示されたようにPNOはいずれ真琴が去る形で終わってしまう。かぐや姫がいずれ月に帰ってしまう物語に曲を付ける行為は彼女らに真琴が去る未来を想像させずには居られない。おまけに近頃の真琴が学校を辞めそうな雰囲気を醸し出しているなら尚の事
そうした感覚はきっと悠麻子が書く後半部に影響したのではないかと思えてしまう
『月の末姫の物語』の後半部、今巻の後半部、それらはどう終わるかと俎上に上がる展開。ラヴェルのエピソードだってそうだし、真琴が高校中退に誘惑され始めたのもそう。でも、そうした悩みにおいて本当の問題と成るのはどう終わるかよりも、どのように終わりの時を迎えるかなのでは無いかと思ってしまう。その点はそれぞれの文化祭の過ごし方に最も現れたような
真琴の姉は文化祭のノリを当時は嫌っていても今は人生に必要だったと述懐した。高校では生徒会を中心として無法ファンへの対処を行った。真琴を朗読劇の会場まで連れってくれた学生達が居た
言ってしまえば文化祭なんてたった1日で終わってしまうイベントだけど、生徒達は佳い終わり方が出来るよう全力で楽しんだ。でも、それは終わらせる為ではなく今を過ごすため。終わりを迎えるというより、終わらせない為の努力であるようにも思えてしまう
『月の末姫の物語』の終わり方は『竹取物語』と大枠で変わらない。かぐや姫は月に帰ってしまう。でも、かぐや姫にとっては帰った瞬間が終わりなのではなく、帰ってからも命尽きるまで戦い果てた後が終わり。彼女にはそれまで出来る何もかもがある
かぐや姫が唯一持ち帰り、最も必要な大切なものと称した竹笛こそが終わる瞬間までを豊かに過ごしつつも終わりに抗う最上の方法だったのかも知れない
だとしたら、文化祭や朗読劇を経て真琴が終わりへの向き合い方を変えたのは同様に今を豊かに過ごしたく成ったからかもしれないね
高校には様々な何もかもが在る。そこには出会いも別れも満ちている。最終的にPNOが崩壊してしまうとしても、その瞬間はきっと佳いものとして迎えられるのではないか?前巻まではPNOの終わりを悲壮に感じていたものだけど、この巻を通して少しだけ明るい終わりとして想像できるのではと思えましたよ