あらすじ
「君を殺す」――復讐の誓いと訣別から半世紀。政治家となったソリヤは、理想とする〈ゲームの王国〉を実現すべく最高権力を目指す。一方のムイタックは渇望を遂げるため、脳波を用いたゲーム《チャンドゥク》の開発を進めていた。過去の物語に呪縛されながら、光ある未来を乞い願って彷徨うソリヤとムイタックがゲームの終わりに手にしたものとは……。 第38回日本SF大賞&第31回山本周五郎賞受賞作品
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Posted by ブクログ
上巻はたしかにカンボジアの歴史的背景をもとに共産主義の破綻や翻弄される国民を描いていたはずだった。
このテイストで物語が続くのかと思いきや、下巻に入った途端、2023年という現代に突然移り変わる。
そして、何より脳波を使ったゲーム「ブラクション・ゲーム」を基準に人の思い出や社会とゲームの違い、勝利と敗北…色んなところに話を展開する。最終的な場面はゲームの情景を説明しているのかムイタックとソリヤが思い出を懐古してるのかもぐちゃぐちゃなんだが、たしかにSF小説であり、でも読み手を置き去りにしてるような感じで…。
なのに、なんだこの満足感。
Posted by ブクログ
(上下まとめての感想)
とんでもなく面白かった、、すごい作品に出会ってしまった、、、
カンボジアを舞台にした近未来SFといった感じ
そこまでSF要素はなかった
色んな話が並行して進んでいくけど、話の中心人物として大きくスポットを浴びているのが、ムイタックとソリヤ。
最後まで読んでようやくわかったような気がしているけど、この小説は2人の壮大な追いかけっこだったんじゃないかと思った。
人生をかけた壮大なゲーム、素晴らしかった。
1度会ったきりなのに、お互い無意識下で執着してしまう。もっと掛け合いがみたいなとも思いましたが、余韻を残したこの終わり方が1番美しく儚い、素晴らしい終わり方だったと思います。
上はひたすらカンボジアでの共産革命を巡った話で、面白いけれどどういう話なんだろう?どう展開していくんだろう?と全く先の読めない展開でとても楽しめました。
残虐なシーンも多かったけれど、キャラが立っていて、面白いシーンも沢山あり、どこか憎めない愛すべき登場人物がたくさん。カンボジアについてはほとんど知らない状態で読みましたが、描写が非常に細かく、読みやすくてとても想像しやすかったです。
下はガラッと雰囲気が変わり、ゲームにかなり焦点の当てられたストーリーに。
時代はポルポトを一気に通り過ぎており、どういうことが起きたのか少しずつ追体験していくところも大変良かったです。
最後の最後まで展開を読ませない構成力。圧巻でした。
ゲームの王国を実現しようとするソリヤとそれを防ごうとするムイタックという構図が明確で、かなり読み進めやすかったです。
とにかくめちゃくちゃ楽しくてめちゃくちゃ面白かった!
久々にこんなに展開にワクワクさせられました。
素晴らしい。
Posted by ブクログ
クメール・ルージュへの迫害から、そのクメール・ルージュによる大虐殺までが描かれていた上巻は打って変わって、下巻では、2000年ごろから現代にかけてを舞台に、いまだ腐敗が続くカンボジアを救うために権力を求め、首相をめざすかつての少女ソリヤと、ソリヤが権力の中枢に近づいていく過程で、村の仲間や両親を見殺しにされたかつての天才少年ムイタックが(間接的に)戦う話が中心になっている。
ソリヤはカンボジアを救うという大きな正義を実現するため、腐敗した現実という「ゲーム」の中で権力を得ようとする。つまり、現実を操る。
一方、教授となったムイタックは、そんなかつての少女に対抗するヒントを、脳波を用いて仮想現実で戦う「ゲーム」に見出す。その「ゲーム」とは、プレイヤーは勝つために楽しい記憶を呼び起こすことが必要となるゲームで、開発が進むにつれて、人間は記憶を偽造することができると気づいた彼は、ゲームのクリア条件に絡む形で、プレイヤーがソリヤへのマイナスイメージを持つような記憶を偽造するように仕向けることでソリヤの支持率を下げ、彼女に勝とうとする。
最後は、現実と仮想現実それぞれの「ゲーム」で勝利をめざす彼らが互いに、子供時代の1日だけ一緒に「ゲーム」をしたことをかけがえのない思い出にしていることが描かれて、物語は終わる。
話の内容や登場人物の魅力だけでなく、さまざまな視点から作品世界が重層的に語られたり、「ゲーム論」「国家論」のようなものが散りばめられていたり、カンボジアの歴史について、おそらくかなりきちんと取材されたものが描かれていたりと、読むことの快感を味わうことができる作品だった。
上巻の感想にも書いたが、「テスカトリポカ」以来の興奮が得られた読書で、並べるのは両者に失礼かもしれないが、自分の中ではかなりイケてる。
「地図と拳」も気になっていたので、近いうちに読みたい。
※ 何人かの方の感想で「あとがきがよかった」とあるが、自分が読んだのは文庫版ではない。ハードカバーのバーコードが読めなかったので文庫で登録した。
Posted by ブクログ
Audibleで聴いた。
面白かったけど、最後の方、どうやってソリアが殺されたか、もう少し詳しく読みたかった…。
でもこの長編を読み終わってしまって寂しい。もっと読んで(聴いて)いたかった。
Posted by ブクログ
カンボジアを舞台にした混乱、残虐の時代を乗り越え、理想をかかげ時代をつなぐ物語。前半の悲惨な時代はかなり事実に近いのだろうか。ほんの数十年前にこんな悲惨なことが起きていたのかと思うと胸が痛む。ところどころにファンタジーやユーモアがあってよい。後半はまさに今現代でChatGPTとかAIを彷彿とさせるSFあり。章に日付が書いてあるのだが、色んな伏線が散りばめられていて、時系列に並べるとこういうことだったのかと話の構成の素晴らしさに感服させられたが、多分全部は理解できていないと思う。歴史のことのみならず、インテリジェンスにおいても、心のソウルにおいてもとてもよかった。この作者は天才だな。
Posted by ブクログ
上巻から一転、現代に舞台が飛ぶ。
異なる道を歩む2人が、最後に楽しめていたらいいなと思う。
脳波の部分はうまく理解できなかったのが悔しい。
神話的な要素もある、不思議な読後感。
後の作品に繋がるような記述もあって、それも楽しかった。
Posted by ブクログ
おもしろかったし中々すごかった。
が、期待しすぎた(俺の悪い癖だ)。
舞台はカンボジア。史実に基づくが、あくまでも小説なのでフィクションが大いに混じる。とはいえ自分がカンボジアの歴史に疎いためよくわからないが。
かなりざっくり言うと、上巻はポルポトが政権を取り国民を虐殺するまでを描く。下巻は国を変えるために動く女性ソリヤと、ソリヤを止めたい天才ムイタック教授が中心のお話。上巻は1950年代で、下巻は2020年代のお話になる。
上巻。
基本的にはソリヤとムイタックまわりのお話。どんな村でどんな風に生きてきたか。
ソリヤは赤ん坊の頃、ポルポトの隠し子かもしれないがよくわからず、まったく関係ない市民のもとに預けられる。成長するなかで育ての親が殺され逃げ、また別の人の元で育つ。人の嘘を見抜ける能力を持つ。
ムイタックは貧しい農村で生まれるが、子どもの頃から天才で、それゆえ誰にも理解されない。革命が起きるその日、ソリヤと出会いいくつかのゲームをし、はじめて自分より賢いと思う人間を知る。だがそれはソリヤから見ても同じ。互いに、初めて負けたが人生で一番楽しかった、という強烈な記憶を残す。
ソリヤ以外にも、特殊能力を持つ人間が何人か現れる。土の声を聞き土に命令できる男、輪ゴムの声を聞き未来を予言できる男、綱引きの天才で綱引きの神に愛されている男、など。
下巻。
現代。ある日本人女性がカンボジアのNPOでソリヤとともに働く話で始まり、ちょっとびっくりする。ソリヤはカンボジアを変えるため、まずはNPOで知見を深め、のちに政治家となる。
ムイタックは大学教授になり、脳波の研究をしている。彼が10代のころ、村の人間はほとんど殺された。その虐殺を容認したのは、軍人と結婚したソリヤである。ソリヤは自分が権力を持ち国を変えるため、ムイタックたちの村が蹂躙されることを必要な犠牲として選択した。ムイタックはソリヤを呪う。
大学教授になったムイタックは、ある学生の私的な研究からヒントを得てネットゲームを開発する。
それが下巻のキーとなる。
そのゲームは脳波によってプレイするもので、特定の脳波を検知すると、それに対応する強い魔法が出せるというもの。脳波を出すためには、基本的に過去を思い返すという行為が必要になる。その過程で、プレイヤーたちは無意識的に過去の記憶を書き換えて思い出すことになる。ゲームを攻略するために、記憶の無意識的な改ざんが、半強制的に求められるのだ。