【感想・ネタバレ】グロテスク 下のレビュー

あらすじ

光り輝く、夜のあたしを見てくれ!
女たちの孤独な闘いを描いた最高傑作。

就職先の一流企業でも挫折感を味わった和恵は、夜の女として渋谷の街角に立つようになる。
そこでひたすらに男を求め続けて娼婦に身を落としたユリコと再会する。
「今に怪物を愛でる男が現れる。きっと、そいつはあたしたちを殺すわよ」
“怪物”へと変貌し、輝きを放ちながら破滅へと突き進む、女たちの魂の軌跡。

解説・斎藤美奈子

※この電子書籍は2003年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

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上巻が女子高生の話だと思ったら、下巻前半は中国からの難民の話になり、振り幅に度肝を抜かれた。下巻後半はほぼ円山町の怪談話のような展開で、心を打つ言葉が多々あり、ただただ最高であった。

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2024年10月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

和恵が日記をつけていることが上巻で明かされたときから、和恵の日記は視点として出てくるだろうなと思ってたらやっぱり出てきて、しかしその支離滅裂っぷりがあまりに凄すぎて圧倒されてしまった。自分が何を求めているのか、何が辛いのか、悲しいのか、そういうものがわからなくなって、本人は理論的なつもりなのに世間とは明らかにズレはじめてしまっている、これはギャグなのではないか?と疑うくらいの滑稽さ。既視感あるなと思ったら、闇金ウシジマくんに出てくる女性に似てるんだと気づいた。自分は一生懸命なんの問題もなく振る舞っているのに、周りはドン引きして離れていって、それがどうしてかわからないっていう感じ。読んでて本当に辛かった。

そして、今いったことを次にはすぐに覆しちゃうところが、和恵と「わたし」よく似ているところだなと思った。

しかし、まさか「わたし」まで売春しはじめるENDで終わるとは思わなかったのでラストの展開は予想外すぎた。これは、解放や復讐としてのエンディングとして肯定してよいものなのか?と疑問に思う。
けっきょくユリコに囚われ続けた「わたし」は、今度はユリオに囚われるだけではないのか?とも思えるし。

あと結局、チャンが殺してるのか殺してないのかも最後までわからない。誰が本当のことを言ってるのかも最後までわからない。その辺がちょっと読後感としてはモヤモヤするというか、白黒はっきりつけたい欲が消化不良をおこしているなと感じる。

ハッピーマニアとかもそうだけど、性に奔放であることが女の解放だった時代の小説を、今読むから違和感を感じるのだろうな。たとえ破滅するにしても、推しとか金のために売春するのではない、自分のために売春する女の物語を久々に見た気がする。

登場人物の女たちのような差別や序列や劣等感、プライド、虚栄心をもったことのない女などおそらくこの世にはいないと思う。多かれ少なかれ若い頃はこういうものに支配されて少し頭がおかしくなる。だからこそ、どのキャラたちも全然好きじゃないけど笑い物にはできないなぁと思った。

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2025年10月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

途中までとても面白く読んでいたが、和恵の日記からタイトル通りのグロテスクな世界に引き込まれそうで怖くなった。
メンタルが弱っている時は読まない方がいいかも。
最終的に登場人物が1人に収束していくような。

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2025年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ニクヨさんの推薦書として読んでみた。

和恵のパートで胸が痛い。
鈍感で悪意にも気づかず、
いつも承認欲求に飢えている女。

パートの後半で「優しくして」という言葉が胸に刺さる。自分を商品として売っている街娼なのに「買われたい」以上に「認められたい」「愛されたい」「私をみて大丈夫だって言って」「安心させて」という悲痛な声が読み取れて悲しい気持ち半面、分かるなぁーとも思った。

誰かに承認されて「正常です」と言われたいのに、その言葉を求めるあまり怪物と化していく。。

承認欲求は恐ろしい。
綺麗なもの、美味しいもの、素敵なもの、良い経験を積めば積むほどに未来に出会うものと比較して評価する。
そんなことしてたらいずれ欠乏感に苦しみ、和恵みたいな化け物になってしまうのたど思った。
悲しい。。私にも怪物の片鱗があって苦しくて嫌にもなった。

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2025年09月08日

Posted by ブクログ

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上巻は「わたし」と一緒に和恵をいじめて楽しみ、下巻は和恵に盛大に共感して落ち込んだ。

日本で努力信仰の世界で生きることを許されていた和恵の姿が、自分に被る。老いる身体を受け入れず、鏡の中の幻影に縋り、いつしか怪物になっていく過程を楽しみすらしていた和恵が。
彼女の自己認識のズレが、私の持つ自己認識のズレとオーバーラップする。和恵は上方にズレ、私は下方にズレているという違いはあれど、ほんとうの自分の姿と、ほんとうの周囲の視線や評価を受け入れない限り、ひとに幸福は訪れないんじゃないだろうか。

あと、チャンがシンプルにこわい。人間の作りが違いすぎる。心の底から分かり合えない、関わってはいけない人間は、存在すると思う。

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2025年06月08日

Posted by ブクログ

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ルッキズムに囚われ、憎み、その外に行きたがっていた主人公がずっと妬んでいた美しい妹にそっくりな美しい甥が現れた瞬間、即心奪われてたのが凄すぎた 性別が変わった瞬間にルッキズムで搾取する側になっとる…人間の心情描写すごすぎ!?!?登場人物全員陰鬱で傲慢で切実で…って感じで凄みがずっとあった めちゃくちゃおもしろかった!!!

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2024年07月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

生まれた場所で人の地位や運命が決まる事の残酷さを、チャンの過去を通して理解した。
和恵の悲惨な歩みも怪物のような見た目も衝撃を受けた。
"わたし"は後に盲目の美しいユリコの息子、百合雄と暮らし始めるがお金が底を付き2人で娼婦を始めてすぐに、百合雄ばかりが客を取れるようになる。人からの評価や見え方を気にして頑張ったり身の振り方を考えても、思うように評価されなければ捻じ曲がっていく価値観と存在意義。
グロテスク(上下)を読んで自分を大切に生きていく事の難しさを感じた。
わからなかったのは、なぜチャンはユリコの殺害は認めて、和恵の殺害は認めなかったのか。それとなぜ"わたし"の名前は作中一度も明かされなかったのか。

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2025年09月04日

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