【感想・ネタバレ】柔らかな頬 下のレビュー

あらすじ

私は子供を捨ててもいいと思ったことがある――。
衝撃のラストが議論を呼んだ直木賞受賞作。

野心家の元刑事・内海も、苦しみの渦中にあった。
ガンで余命半年と宣告されたのだ。

内海とカスミは、事件の関係者を訪ね歩く。
残された時間のない内海は、真相とも妄想とも夢を見始める。
そして二人は、カスミの故郷に辿り着いた。

真実という名のゴールを追い続ける人間の強さと輝きを描き切った最高傑作!

解説・福田和也

※この電子書籍は1999年4月に講談社より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

全く予備知識なしに読みました。失踪した娘をどう探すかというわかりやすいカタルシスをイメージしていたので、読み終わった直後は「え?」となりました。解説を読みこの本のテーマを初めて認識し腑に落ちました。この本のテーマは「人は取り返しのつかない喪失をどう抱えて生きるか」ということで、カスミや内海や石山などの登場人物がどうしようもない現実に対してどう生きるかを読者は突きつけられます。現実にはどうにもならないこともあると思います。この本はこれを読んだ読者にとても深い示唆を与えてくれる素晴らしい作品だと思います。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

失踪した娘の行方は解明されない。幾つかの可能性が示唆されるに留まる。発生した事件によって起きなければ変わらなかっただろうそれまでの人生が大きく変わっていく人々の姿を描いた小説。上下併せて1日で読み終えるくらい面白かった。新興宗教教祖の章と石山の漂泊の章はあんなに分量割かなくてもよかったような気もするが。

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2022年12月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

解説にもあったけれど、結局何が起こったのかわからないところが、容赦なくてカタルシスがない。
個人的には、最後の、有香のモノローグだけ本当のことだったのかなと思った。
(誰が犯人でも、成立するし)
カスミと内海の、奇妙だけれど嘘がない関係が不思議だった。

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2025年04月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ


登場する人物が全員自分のことしか考えていない
その心理描写がすごい
生々しくて魅力的でどんどん読んでしまいます
最後まで救いはありませんでしたが
だからこそ色々な解釈ができる

なぜなのか説明はできないけど
カスミが心の拠り所にしていた
バスの教会のシーンが好きです

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2022年09月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『OUT』の2年後の1999年に刊行され、直木賞を受賞した桐野夏生さんの初期長編である。
 5歳の娘が北海道支笏湖付近で失踪する。見失われた長女を捜し求める母親・カスミと、癌を患い退職し、死期を間近に迎えつつある男性の元刑事・内海との、奇妙なランデブーがストーリー中メインの骨格となっている。この両者は「現実と折り合いを付けることが出来ない」点で共通点を持つとされている。
 一般的な写実的描写に基づく小説ではリアリティが大切であり、描かれゆく人物・心理・光景・出来事などが、いかにあり得るものであるか・ありそうであるか・ありがちであるか、といった尺度で現実解と比較し計測され、総合的に見てリアルな感触が得られない場合は「つまらない小説」ということになってしまうだろう。実は先日中村文則氏の『私の消滅』という小説を読んだがこれが酷いクズで、いかなるレベルのリアリティも皆無であり、ただの理屈に基づいて設計された非-人間的なアイディアを垂れ流すだけであって、文学を自称するのは僭越だろうという程度の駄作であった。これが芥川賞作家なのか、芥川賞って全然たいしたことないじゃん、というのが感想だった。
 初期の桐野夏生さんの小説は、もっと後の時期のものと比べて「普通のリアリティ」がより多くあり、ストーリーはリアルな日常世界の中を突き進む。しかし桐野さんの文学の面白さはそういう「普通のリアリティ」に留まらず、もっと野放図な「想像し、創作することそれ自体」が導き出す自己組織化的な言語ストリームがその余りの自在さと勢い故に、しばしば「普通の小説」の型を食い破ってしまうという事態にある。そしてこの次元では、「言語ストリームそれ自体のリアリティ」が前面に押し出されてくるのだ。
 本作では、元刑事の内海やカスミが目の当たりにする白昼夢や妄想が何度か現れる。この挿入された「夢のテクスト」では、誰が何故どのように少女を誘拐したかという「真相」がその都度語られ、読者のパースペクティヴを書き換えるかのような衝撃を惹起する(これは本格推理小説の「あっと驚く意外な結末」と同等の装置である)。しかし、これら夢のテクストが暴いた真相は真相ではなく、次々と切り捨てられる。
 失踪した少女という文字通りの<不在のシーニュ>は、何故(誰によって)拉致されたか、生きているのかあるいは殺されたのかというミステリ的な「真相」を含んでおり、ミステリと同様に<不在のシーニュ>への欲望がストーリー(言語ストリーム)を押し進めてゆく。そしてこの不在という空白=死が、ガンによる病死が刻々と迫る内海という人物にも表象化されている。主人公カスミはかくして空白=死との不思議なランデブーを辿る。
 そして、この小説では、ついに事件の真相はわからない。娘は最後まで不在であり、真実は不可知であり、圧倒的な空虚さを抱えた主人公の心理描写やモノローグ、ダイアローグが連ねられた末に、結局全ては空白のままだ、しかしそれでも生きていかなければならない、生はまだ延々と続いていくのだ、という展望と共に作品は終わる。
 挿入された「夢のテクスト」は結局どれも「夢」でしかないのであって、ディスクールは反転し、捻転しつつもすべてが中心にある<ゼロ>へと帰着するのである。
 この作品の核心にあるのは、空白=死の周りで苦痛にうめきながら自己生成されてゆく言表の生々しいリアリティと、救いの無い現実界の手触りとを兼ね備えた、未知の能力を秘めた創作-場のエネルギーの猛々しさである。

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2021年01月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

分かったような分からないような?
もやっとするんたけど、読み終わったあとになぜかしっくり来る。この結末に納得してしまう。
真実を追い求めて、現実と妄想のはざまを行ったり来たり。読者も揺さぶられます。
誰にも分からない真実、それが現実。
これをどう受け止めて生きていくのか。
真実のその先を考えさせられる。
深い。面白かった。


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2020年01月05日

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ネタバレ

昔見たドラマの印象だと、カスミが娘を永遠に探し続ける印象だったけど、違ってたのかな?カスミと内海の妄想で何通りもの可能性が描かれ…。有香の行方は本題ではないのかもしれないけどもやもや。

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2019年10月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

同じような絶望感や孤独感を抱えた、失踪した一人娘を探す母親と、末期癌を患った余命幾許もない元刑事の捜索の旅。過酷な現実に向き合えない2人が、旅を通して変化していく心情描写が印象的。

娘が犯人に殺害されるシーンが夢として出てきたりして、現実が曖昧になり、徐々に娘の行方とか犯人探しとかどうでも良くなってくる。なんともスッキリしない雰囲気に包まれた内容だった。

ある意味、失踪した家族を探す行為のリアルはこんな感じなのかもしれない。

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2025年07月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まだかまだか、と読んでいったが
結局最後まで犯人分からず!有香見つからず!!
犯人か?!と思いきや内海やカスミの夢だったり…
でもハラハラ楽しく読めた。
最後は行方不明の有香からの主観。

ずーっと同じこと(捜索)をし続けたカスミ、
でも周りはそれぞれ事件にケリを付けて我が人生を歩んでいく。
そんな簡単にケリなんて付けれない。

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2019年11月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上巻(前半)のリアルさの迫力がすごかっただけに、下巻(後半)の何を描きたかったのか全然わからないところがとにかく残念。
ていうか、スティーヴィー・レイ・ヴォーン。後半は全然出てこないじゃん(笑)

思うに、下巻(後半)は著者の趣味が出すぎかなぁーとw
特に石山の変容と内海の人物造形は、変な言い方だけど著者丸出しって感じで。
あぁこういう人なんだなーと、正直鼻白んだ。
ミステリー小説的結末はないとわかって読んだので、そこに不満はないし。また、ストーリー的にもよかったと思う。
カスミのお母さんの意外な幸せという、(カスミへの)ちょっとしたしっぺ返し的展開も妙に小気味いい(人生における失敗を耐えることで成功にしてしまうバイタリティは主要登場人物4人の世代と一番違うところなのだろう)。

ただ、それらの良さがあるだけに、逆にミステリー小説の結末的妄想(回答例?)って必要?と思ってしまうんだよなぁー。
そもそも、その一つが本当だったとしても、ミステリー小説として大して面白いわけじゃないじゃん。
もちろん、そこがないと話が展開していくエンジンがなくなってしまうのかもしれないが、熱に浮かされた元刑事の妄想に付き合わされるのも何だよなーと(笑)

確かに、死期が迫って生きがいだった捜査が出来ないのでせめて…と、カスミの娘を捜すことにした元刑事の妄執に付き合わされることで、カスミはやっと“ここ(今)ではないどこかへ”の途を見つけられた(?)というのはあるんだろう。
なら、最後の「これ、怖いでしょ?」的な嫌ったらしい読者サービスはいらないじゃん。
ま、最後のあれで直木賞がぐっと近づいたっていうのはあるんだろうけどさ(笑)

ていうか、5歳の子供って、あんな風に外界を見ているものなんだろうか?
5歳、つまり小学校にあがる前の頃の記憶って、自分にはあまりないので何とも言えないところはある。
でも、子供にしては視野(視界)が広すぎるように思うし。また、見たり感じたりして得た情報を言葉に変換して分析しすぎているように思うのだ。
子供って、見るも感じるももっと直截的なんじゃないかなぁー。
特にわからなかったのが、最後の2行。
5歳の子供が死、それも自分の死ということを理解出来て、なおかつそれを受け入れられるもの?
5歳の子供の視点で描かれている最後の章が他と同じ風に描かれていることを含め、そこはすごく違和感を覚えた。

桐野夏生はずいぶん前に『グロテスク』を読んで、つまんない小説を書く人だなーと思ってずっと敬遠してきた。でも、去年、今更『OUT』を読んでみてガラっと変わったんですよね。
でも、こうしてみるとやっぱり『グロテスク』の人なのかなーと。
ただ、ラストでのカスミと内海の交わりなんか、ドキッとするくらいリアルだったし。
本屋で見て、妙に引っかかる『抱く女』だけは読んでみたい。

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2019年02月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文章は面白く引き込まれ一気に読んでしまいました。
ただ、上巻に比べて下巻の収束の仕方は自分は不満が残りました。

元々、伊坂幸太郎先生の『バイバイ、ブラックバード』のラストを批判する感想を述べていた方が
同じリドル・ストーリーならこれ、と仰っていたのが
この本を手にとったきっかけでした。

途中まで面白く読んでいたのですが、
遂に物語が確信に進むかと思えたのが夢落ちだったところから
少し冷めてしまい、
次の展開でもどうせ夢落ちなのだろうなと思ってしまいましたし
あれだけ上巻で神隠しとしか思えない不思議な消え方
と煽っておきながら、夢落ちにしろラストにしろ
それでなぜ証拠が見つからない完全犯罪になっているのか
疑問な内容だったのが残念でした。

提示されているのは有香が殺された、誘拐された
というものばかりで、事故や家出については触れられていませんし
ああそういうことなら手がかりのひとつも見つからないのは納得
というような要素くらいはなにか提示して欲しかったです。

リドル・ストーリー自体は嫌いではなく、
前述の『バイバイ、ブラックバード』のラストも私は好きなのですが
この作品のラストは好きではありませんでした。
ミステリーではなく、カスミという女性の生き様を描いたものなのだと思います。

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2019年02月01日

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