【感想・ネタバレ】フシノカミ 4 ~辺境から始める文明再生記~のレビュー

あらすじ

『古代文明の伝説にあるような便利で豊かな生活』を今世に取り戻すため、領都イツツに留学したアッシュは二年間の軍子会を修了。新設された部署・領地改革推進室に配属されたアッシュは、生活水準をより良くするために日々励んでいた。
そんな彼のもとに持ち込まれた新たな問題は、『村の救済』。同じ部署に所属する侍女・レンゲの幼馴染みが住まうアジョル村が滅びの危機に瀕しているという。アッシュとマイカが率いる視察遠征隊を待っていたのは、荒れた畑に、痩せ細った村人たち。限界を迎えた村を救済する唯一の方法は、禁忌とされてきた畜糞堆肥による農法で……?
さらに、追い打ちをかけるように凶報が届く。それは、アジョル村を襲うもう一つの脅威、魔物・トレント襲来の知らせだった――。
絶対的な脅威を前に、アッシュたちは村人を救う決意を固める――!
理想の暮らしを手にするため、世界に変革をもたらす少年の軌跡を紡いだ文明復旧譚、第四幕!

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Posted by ブクログ

 滅びゆく村の復興に領地改革推進室が全力で立ち向かうシリーズ4巻である。

 粘り強く生きる辺境にあっても、村によって状況も変われば対策も変わる。
 獣害に遭いながらも適切な対応で村を立て直すアデレ村。
 長らく不作になりながら無為無策のアジョル村。
 この二つが物語の舞台となって、今回の物語は転がっていくことになる。

 主演は推進室所属のレンゲと、アデレ村村長代理のスイレンの二人。
 二人の横顔が描かれる加筆は多く、物語の骨子はこの二人の関係に据えられている印象だ。

 加えて、アデレ村との連絡役を務めることになるグレンも主役に加えていいだろう。
 彼については、ケジメを付けるかのような告白シーンがこの巻の冒頭に置かれていて、彼を陰の主役と思って一巻を眺めることもできる構成になっている。


 加筆部を今少しみると、軍子会同期のケイや、新たな(アッシュらの出身である)ノスキュラ村からの留学生・ルカなども巻の前半に新登場している。
 ただ、彼女らはあくまで顔見世であり、物語の本編には全く絡んでこない。
 彼女らの活躍の場は、おそらく後々に用意されているのだろう。編纂版(書籍版)での活躍に期待したい。

 前述したように、物語としてはやはりレンゲ&スイレンの関係が色濃い。
 表紙、カラーイラスト、挿絵のすべてにおいて二人の登場は目覚ましく、物語における中心線がわかりやすいところだ。
 それゆえに、一巻での物語の充実度も(原典版に比べて)増していて、読み応えがある一巻になっている。

 若干気になるのは、原典版以上にヒロイン度が高まっている感のあるレンゲ。
 彼女の扱いは原典とはまた異なることもあるのだろうか?
 期待を込めつつ、多少気になった箇所ではあった。


 一冊としての充実度、後半におけるド派手な展開、物語の主題、諸々を加味して星五つで評価したい一冊である。
 この巻の主題はおそらく

「善意ある援助者が罪悪感を抱え、支援を受けた者が逆恨みから被害者ぶる」

 という構図にノーを突き付けるものだろう。
 文中でも「被害者ぶっている無自覚の加害者」「弱者という棍棒を振り回す乱暴者」(P.140)といった記述があり、その批判的姿勢は明らかである。

 物語的な整理が為されつつ、この主題を抉ったこの一巻は、物語の面白さだけでない内実も含まれているだろう。
 その意味でも興味深い一巻である。

1
2021年09月01日

ネタバレ 購入済み

早く続きが読みたい

人の善意に寄生するクズな村の改革。
そうだそうだ!と思いながら読みました。
どんどん続きが読みたい

0
2020年12月28日

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