あらすじ
時間はいつでもどこでも同じように経過するわけではなく、過去から未来へと流れるわけでもない──。“ホーキングの再来”と評される天才物理学者が、「この世界に根源的な時間は存在しない」という大胆な考察を展開しながら、時間の本質を明らかにする。本国イタリアで18万部発行、35か国で刊行予定の世界的ベストセラー!
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Posted by ブクログ
坂本龍一のTIMEを観に行って、『坂本図書』を読んで、取り上げられていたので手に取りました。『世界は関係でできている』も面白そうなので次に読もうと思います。
平易な語り口調であり、文学や音楽への言及もありながら導かれる「時間は存在しない」?ということ。
第一部で基礎的なことを確認しつつ、第二部が一気に面白かったです。
・エネルギーではなくエントロピーがこの世界を動かす
・この世界の成り立ちの歴史、これらすべてがはるか昔の事物の配置が「特殊」だったという事実から生じた結果に過ぎない
・そのうえ「特殊」というのは相対的な単語で、あくまで一つの視点にとって「特殊」なのだ。あるぼやけに関して特殊なのであって、そのぼやけは問題の物理系とこの世界の残り部分との相互作用によって定まる。…(p.166)
「ミリンダ王の問い」この前どこかで出てきた気がするが思い出せない・・
アイデンティティーの構成要素(p.170-)
(1) わたしたち一人一人がこの世界に対する「一つの視点」と同一視されるということ。この世界は、自分たちの生存に欠くことのできない豊かな相互関係の広がりを通じて、各自のなかに反映されている。一人一人がこの世界を反映し、受け取った情報を厳格に統合された形で合成する複雑な過程なのだ
(2)わたしたちはこの世界を反映するなかで、世界を組織して実在にする。つまり、グルー分けして、分節化した世界を思い描くのだ。自分たちがその世界とよりよく相互作用するために、一様で安定した最良の連続的過程としての世界を思い浮かべる。…世界に線引きをして部分的に分け、境界を策定し、細かく分けて似姿を作るのだ。※神経系はこのような形で機能するように作られている※わたしたちは、自分と似た人々と相互作用することによって、「人間」という概念を形作ってきた。思うに、己という概念はそこから生まれたのであって、内省から生まれたわけではない。「人」としての自分を考えるとき、わたしたちは仲間に当てはめるために自ら開発した精神的な回路を自分自身に適用しているのだ。
(3)時間のあちこちに散らばる過程を糊づけし、わたしたちを形作っているのは記憶だ。その意味で、わたしたちは時間のなかに存在する。…脳は過去の記憶を集め、それを使って絶えず未来を予測しようとする仕組みである。…過去の出来事と未来の出来事にまたがって生きていくことが、わたしたちの精神構造の核となっている。これが、わたしたちにとっての「時間」の流れなのだ。…時代や時間が実際には精神のなかにのみ存在する(アウグスティヌスの主張)
↑の章は、そうはいっても時間は過ぎるように感じますという感覚に寄り添ってくれる章だった。
Posted by ブクログ
“するとナーガセーナは勝ち誇ったようにいう。「馬車と同じように、ナーガセーナという名前も関係と出来事の集まりを指しているにすぎない」と。
わたしたちは、時間と空間のなかで構成された有限の過程であり、出来事なのだ。
それにしても、わたしたちが独立した実体でないとすると、何がわたしたちのアイデンティティー、「自分は一つのまとまった存在だ」という感覚の基になっているのか。このわたし、カルロをまとまりあるものとし、その髪や爪や足、さらには怒りや夢をも自分の一部だと感じさせ、悩み考えさまざまなことを感じている今日のカルロが昨日や明日のカルロと同じだと思わせているのは何なのか。”
自分が何者であるのかという問いでもあり、哲学的(宗教的?)、叙述的とも言えるが難しい。
“わたしたちは、時間と空間のなかで構成された有限の過程であり、出来事なのだ。”とあるが、ある意味自分が世界だということかもしれない。
しばらくしてから、また再読したい。