【感想・ネタバレ】時間は存在しないのレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年11月16日

タイトル買いでしたが、最先端の物理学の研究が詩的な文脈でロマンチックに語られていて、小説を読んでいるようで期待以上でした。数式を使わずに分かりやすく説明してくれて、科学に明るくない人でも理解しやすい内容が多いのではないかと思います。

どうやら私たちが抱いている「時間」の素朴なイメージはこの世界の基...続きを読む本構造とは異なるらしく、それは私たちの特殊な視点によって生まれているようです。

例えば、私たちにとって時間は一様で普遍的に経過していくように感じるけれど、実際、時間が経過する速度は、自分がどこにいるのか、どんな速さで動いているのかによって変化するのだそう。時間は質量に近い方が、また早く動いた方が遅くなるらしい。この様な話は聞いたことがありましたが、当事者の錯覚ではないかと勝手に思っていたので驚きました。

そして全ての宇宙に共通の「今」という時間は存在せず、世界の基本方程式では過去と未来の違いも存在しないというのも、私たちが知っている時間のイメージからは駆け離れた話でした。空間も時間もなく、ある物理量から他の物理量へ変わっていく過程があるだけで、全ての出来事は私たちが見知っているように順序付けられているわけではないのだそうです。

でも結局私たちのスケールでは状況によって変化する時間の経過速度のズレは小さすぎて認識できないので、今日私たちが抱いている、ある意味特殊な時間のイメージが出来上がったとか。

世界の構造が私たちの直感に反するという事実に反省し、これまでもそうだったように、私たちの直感を上書きできるかもしれないことに高揚感を覚えました。

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Posted by ブクログ 2023年09月05日

私にはループ量子重力理論も関係量子解釈も選択できる能力が無いが、時間に関する結言には深く納得した。新しい人生観を知れて嬉しく思う。

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Posted by ブクログ 2023年03月10日

元々時間論に興味があり、主に哲学系の時間論を読んできたのだが、よく訪れる大型書店で、目立つカバーと書名の本書が目に留まり、物理学系時間論の入門書であることを期待して購入。

本書を読み進めてみてまず驚くのは、その文体である。
訳者の冨永星氏の訳も秀逸であるが、一般向けとはいえ物理学系の書籍であるにも...続きを読む関わらず、詩的・文学的な表現が極めて多く読みやすい。数式も、いわゆる熱力学の第二法則(エントロピー増大の法則)で"時間の矢"を表す「ΔS≧0」の一本しかなく、一見しただけでは物理系書籍とは思えない。

しかしながら本書は、相対性理論や量子力学を勉強したことのない読者に対しても、独特の文体で一般的に浸透している時間概念を次々に打ち破っていく。
時間には向きがなく、「今」には何も意味はなく、したがって普段当たり前のように使用している「過去」「現在」「未来」という言葉でさえ、時間構造を語るには不適切であるとしているのだ。

自分がこれまでに触れてきた時間論においては、時間というものは、古典物理学の立場では座標上に変数tで表されるような絶対的なものであり、相対性理論の立場では場所によって伸びたり縮んだりする相対的なものであり、現象学の立場では記憶(未来予持と過去把持)により表出されるものである、といった漠然とした理解はしていたものの、量子重力理論の立場や熱力学的視点で考えたことなどなかったので、読み進めるほどに知的好奇心をくすぐられた。

本書で述べられている論考は、著者のカルロ・ロヴェッリが研究している「ループ量子重力理論」がベースになってはいるが、本理論について簡単に述べられているものの深く解説することはせず、時間を多角的な視点で捉えつつ本質に迫っているところが、多くの読者を獲得した理由なのではないか。
物理学視点だけでなく、デカルト、カント、ヘーゲル、フッサール、ハイデガー、ベルクソンなどといった近代哲学者の他にも宗教家、神話、詩、文学などから得た言葉や脳科学までにも言及しつつ"時間の非存在性"が熱く述べられているため、本書は理論物理学的時間論というよりも、"学際的時間論"と表現した方が相応しいかもしれない。

とにかく、これまで広く受け入れられてきた時間概念に一石を投じる内容であることは間違いなく、個人的にも久し振りに霧が晴れる読後感であった。
これをきっかけに最新理論物理学にも興味を持てたので、著者の他の作品も読みたくなったとともに、まだ読んだことのない時間論にも触れて更に見識を広めたいと思える作品であった。

時間を探求することは、人間そのものを探求することに繋がると改めて実感した次第である。
やはり、時間は深い。

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Posted by ブクログ 2023年01月03日

とても面白かった。全てを理解したわけではないが理解出来ないのはやはり「時間」という単語が表しているものが場面場面でぶれる事、しかしながらそのブレまで含めて私達は「時間」というものを認識しているのだという事なのだろうと思った。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年12月26日

カルロ・ロヴェリ氏の書籍3冊目だが、この本が一番難解だった。いやはや、事実の説明を淡々と述べるのではなく、形而上的な論点まで舞い上がってついていくのがやっと。ですが、時間は存在しないという衝撃が脳内を刺激して、心もとない浮遊感に誘われます。理解もそこそこに、一つの物語として感性に訴えるものがあります...続きを読む

物理学の面は何度目かのループ量子重力理論ではあるが、どうも自分の実感からの乖離がすさまじくて腹落ちがどうしてもできず頭が追い付かない。その反面、著者の文学的が文章の卓抜さは胸いっぱいに受け止めることを務めた。氏は古代戯曲や詩歌に精通しており、哲学や生物進化学といったところまでカバーしていてまさに博識強記といったところ。そういった洗練された表現を心に留めておこう。

P119 第八章 関係としての力学
だが、不在だから悲しいのではない。愛着があり、愛しているから悲しいのだ。・・・だからこそ、不在がもたらす痛みですら、結局は善いもの、美しいものなのだ。なぜならそれは、人生に意味を与えるものを糧として育つのだから。

P173 第十二章 マドレーヌの香り
「考える ゆえに、 我あり」はデカルトによる認識の再構築の第一歩ではなく、第二歩なのだ。第一歩は、「疑う、ゆえに、考える」であって、デカルトは、主体としての存在の経験と直結した先験的な仮定を再構築の出発点としたわけではない。これはむしろ、一つ前のデカルトが疑うに至った過程の、経験的で合理的な反映なのだ。・・・自分自身を主題とする思考は、その人の一次的な経験ではなく、ほかのさまざまな考えにもとづいておこなわれる複雑で文化的な推論である。・・・わたしたちは、自分自身の同類から受け取った「己」という概念の反映なのである。

最新作もでているので、理解を深めるためチャレンジしてみようかな。

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Posted by ブクログ 2022年08月29日

「すごい物理学講義」でカルロ・ロベッリにハマりすぐさま「時間は存在しない」読みました。ほとんど数式の登場しない物理学の本です。唯一の例外はエントロピー増大の法則「ΔS≧0」のみ。この式は人間が時間を捉える感覚のベースになるものであり、カルノーからのクラウジウス、からのボルツマン、は前著ではあまり触れ...続きを読むられなかった軸です。数式の登場しない物理学の本は、人間が何を感じて何を考えて来たかという歴史になり、それは哲学であり、また著者はそれを非常に詩的に表現しています。第11章でアウグスティヌス、カント、フッサール、ハイデガーを辿り、プルーストの『失われた時を求めて』にたどり着くのはこの本の領域の広さの証明です。広範、というだけでなく著者のバックボーンである「ループ量子力学」まで断絶なく繋がっているので最先端であるのです。結果的に「宇宙」と「人間」についての物語なので、本書では使われていませんが「人間性原理」に近いところにあるのでは、という読後感でした。ここらへんが微妙にモヤモヤも残っているので、もう一度読みたい気もしますが、いや、次の『世界は「関係」で出来ている』もすぐ読みたい!どっちだ?

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Posted by ブクログ 2022年06月03日

一体この人の頭の中では何が起こっているのか。
現代最高峰の物理学者でありながら、詩人でもあり哲学者でもある。美学、音楽、文学への造詣も深く、重層的な教養のなせるわざなのか。ただただ圧倒されてしまう。
とはいえ、ご本人からしたら、目玉の裏にある襞の間の出来事、と嘯くのでしょうが。

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Posted by ブクログ 2022年05月12日

難しい本が存在することがわかった
この本の3分の1もしくは4分の1も理解できていない

このような動きの影響を実際に目で見るにはうんと早く動く必要がある
この差が初めて測定されたのは1970年代の事だった
飛行機に正確な時計を乗せたところその時計が地上に置かれた時計より遅れたのだ
速度による時間遅延...続きを読むは今では様々な物理実験によって直接観察することができる

記憶と呼ばれるこの広がりと私たちの連続的な予測の過程が組み合わさったとき私たちは時間を時間と感じ自分を自分と感じる

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Posted by ブクログ 2024年02月10日

時間は物理として存在しなくて、出来事の移り変わりから認識した概念でしかない、という理解をしたけれど、エントロピーやら熱時間やら、わからない概念が多いのと、小説っぽい情緒的な文章が、何を言ってるのかわからない状態に拍車をかけて、一度読んだだけでは、腑に落ちるとこまで理解できなかった。量子力学で議論され...続きを読むていることが、一般人の私たちが認識している世界と全く異なるんだな、ということを知れたのは目から鱗だし、面白かった。

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Posted by ブクログ 2024年01月08日

表現は平易なので、書いてあることはわかるのだが、頭に入ってこない。こういう研究分野があるのかと思うだけで、畏れ入る。

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Posted by ブクログ 2023年11月26日

よかったフレーズのメモ

始まったものは、必ず終わる。わたしたちは過去や未来に苦しむのではなく、今この場所で、記憶のなかで、予測のなかで苦しむ。時さえなかったなら、と心から思い、時間の経過に耐える。つまり、時間に苦しめられる。時は悲嘆の種なのだ。

これが時間であり、だからこそわたしたちは時間に魅せ...続きを読むられ、悩む。

中略

時間は、この世界の束の間の構造、この世界の出来事のなかの短命な揺らぎでしかないからこそ、わたしたちをわたしたちとして生み出し得る。わたしたちは時でできている。

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Posted by ブクログ 2023年07月27日

物理学は、物の理(ことわり)の学問。頭の体操にはよい。著者の本は毎回刺激的なのでこの本も一気に読めた。量子力学と一般相対性理論の先には時間は存在しないのだという。エントロピーの理解が進んで良かった。

時間は地球の中心に近い方が遅いのだという。へえと思うことが多く、狐につままれた気分になることも。街...続きを読むで見かけたものもロヴェッリの解釈だとどうなるんだっけ?と考えることができる。まさに物の理。世の中の捉え方が複層的になってよかった。

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Posted by ブクログ 2023年07月31日

おもろかった。。と思う?ていうか、おもろいんだが、やっぱり理論物理学は良ぅわからん。本書、非常にわかりやすい平易な語彙と文章で、書かれた意味はわかるんだが、理解できないっちゅうか。わかりたくないというか(笑)
青く美しい装丁で、読み始めていきなり図にスマーフが、、ほんで青なんかい!とツッコミながら、...続きを読むどうしてもなんでスマーフなんか気になりすぎて序盤内容が入ってこん(笑)。ともかく、アルバート氏の相対性理論も、特殊までは理解できんこともなかったが、一般のほうはお手上げだったので、本書を楽しむためにはそもそもそこらへんからやり直すべきなのかもしれない。でも、嫌じゃ。
 簡単な事実、時間の流れは場所によって違う。低地では遅く、高地では速く流れる。高額な高性能の時計とちょっとその計測の技術を学べば誰でも時間が減速するという事実を確かめることができる。ラボレベルだと、数センチの高さの違いで生まれる時間の減速を検出できるらしい、、らしい、、。時間だけでなく、低いところではあらゆる事柄の進展がゆっくりになる、ちゅうことが序盤で説明される、、しかもスマーフが、スマーフ、、。今は、計器で測れるんだが、そんな精密機械のないころにアルバートは時間が至るところで同じように経過するわけでないことを理解してた、ちゅうことである。なんかもう、Aweしかない。
つうことで、重力。地球と太陽が直接引き合っているのではなく、その中間にあるものに順次作用していると仮定すると、この2つの間には空間と時間しかないので、時間構造の変化が2つの天体の動きに影響を及ぼして、結果2つの天体がお互いにむけて「落ちる」。簡単に言うと、簡単にいうと、物体は周りの時間を減速させるので、地球は巨大な質量があるのでコアに近いほど周りの時間速度が遅くなる。ちゅうことで、山より平地のほうが減速度合いが大きく、よって、山で住むより、平地で住む方がゆっくり歳をとる、ちゅうことになるんだそうだ。ゆうて、誤差程度だろうが、ミリでもミクロンでも長生きしたい人は平地で暮らせということか。なんならマリアナ海峡の底とか(どないすんねん)
ともかく、物が落ちるのは時間の減速のせいなので、惑星間空間では時間が一様に経過するので、物が落ちないんだそうだ。

>もしも「現在」に何の意味もないのなら、宇宙にはいったい何が「存在するのか」。「存在する」ものは、「現在」にあるのではないか。
 じつは、何らかの形態の宇宙が「今」存在していて、時間の経過とともに変化しているという見方自体が破綻しているのだ。

 話は身近な物になるが、コップいっぱいの水、H2Oという水素と酸素が結合したやつで、熱い時(日本語だとお湯やね)はその分子が大騒ぎしている状態、逆にひゃっこい時(氷っちゅう状態)は、スンってしてるんやけど、お湯にしたい時は外から熱を加えて(火にかけて)、凍らしたい時は冷凍庫に入れりゃ、なんも考えんでも、状態がかわるんだが、分子のわちゃわちゃ度で状態が変わることを理解していれば、攪拌したり、振動を加えたら状態が変わるちゅうことでもあるな。身近なところで電子レンジちゅうやつである。これを、人為的に振動させることができたなら、領域展開できるちゅうことになるな、、、と言うようなことを妄想しながら、読んだ。結局何考えとんねん、ってことである。

>この世界は、物ではなく出来事でできている。
時間はすでに、一つでもなく、方向もなく、事物と切っても切り離せず、「今」もなく、連続でもないものとなったが、この世界が出来事のネットワークであるという事実に揺らぎはない。時間にさまざまな限定があるいっぽうで、単純な事実が1つある。事物は「存在しない」。事物は「起きる」のだ。

ちゅうことで、時間は存在しているんではなく、時間は起きてるもん、ちゅうようなことなんやろねぇ。屁の理屈的なもやもやを感じる凡人たる私。
まあ、なんちゅうか、理論物理学て哲学とか宗教とかに近しいノリを感じてしまうんだが、実は哲学とか宗教とかが理論物理学に寄せてるんではなかろうか、と本書を読んで感じたのであった。ちゅうことで、人生とは?と考えるのにとっても良い書であった(個人的な感想です)


量子場の複雑な振動っていわれてもなぁ、、

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Posted by ブクログ 2023年02月19日

時間は絶対的な尺度ではなく、相対的である。つまり、時間は空間と一体化した広がりであり、それはゴムのように伸び縮みする。そもそも、時間と空間は過去と未来を区別する方向性もない。では、なぜ我々は過去から未来に至る時間軸をありありと感じているのか?この結論について、残念ながら私は著者の考えを理解するに至っ...続きを読むていない・・・。人間のあまりにも当たり前に感じている感覚から脱却し、科学や論理により真理を追究していこうとする研究者の努力と熱意には大変頭の下がる思いがする。

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Posted by ブクログ 2022年12月27日

難解で全部理解したわけではないが、時間というものに対する考え方が少し変わった。

一生分のエントロピーって言葉を読んだ気がする。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年09月09日

シーラーズのサアディー 国連の本部入り口に刻まれている詩の作者=人間は同じ脊髄から作れらていて、一か所が痛めば他の場所も痛む。人々の苦しみに無頓着な人は、人の名に値しない。

熱は熱いところから冷たいところに移る。この方向にしか動かない=過去と未来を区別できる。ほかの法則は過去と未来を区別益ない。
...続きを読むエントロピー増大の法則=熱力学の第二法則。熱は冷たい物体にしか移動しない。
エネルギーではなくエントロピーが世界を動かす。
低いエントロピーが高いエントロピーになること、が運動の本質。エントロピーが平衡すれば、動けなくなる。
太陽の光子が届くと、その10倍の光子が放出される。その結果、エントロピーが低下する。
物質は、薪でも水素でも低いエントロピーに閉じ込められている。増大すればエネルギーになる。石が落ちると位置エネルギーを失う。そのかわり地球と衝突することで熱に代わる=力学的エネルギーが熱に代わる。=エントロピーが増大する。逆は起こらない。熱の存在がなければ、石は永遠に跳ね続ける。エントロピーが石を地面にとどめている。

アインシュタインの相対性理論=速度があると時間が遅れる。飛行機に時計を載せると、地上にある時計に比べて遅れた。=動いている物体にいると静止している物体にいるより、経験する時間が短い。動いている物体に対しては時間が縮む。

恒星にいる人の今、は地球にいる人の今ではない。地上で観測できるのは数年前の光や電波だから。
光の速度で1/10秒程度=地球程度であれば、現在を定義できる。宇宙全体で同じ瞬間はない。

祖先と子孫の関係=円錐形の半順序。時間的先行性。宇宙の出来事は部分的な順序があるだけ。
ブラックホールに時間ごと吸い込まれると、そこから出るには現在に向かって動く必要がある。宇宙が時間とともに変化しているという見方が間違っている。

ニュートンの方程式には、時間tが役割を持つ独立した変数。
真空は、トリチェリの実験によって裏付けられたが、素粒子などのブル知的実体は残っている。真空はニュートンの理論的概念で、実際には存在しない。

事物は、存在しない。起きる、もの。
量子重力の方程式には時間の変数はない。
ループ量子重力理論の方程式も同じ。
量子論と重力理論の統合のための理論として、超ひも理論とループ量子重力理論がある。
量子論で重力を扱えない理由は、重力に量子論的なゆらぎを仮定すると、揺らぎの影響で重力理論が成り立たなくなる。重力は核力や電磁気力に比べて弱いため、精密実験ができない。

宇宙が始まったときエントロピーが低かったのは、特殊な状態だった。だから熱力学(エントロピーの増大)だけが時間の概念を持つ。マルチバース宇宙論。
理論物理学は数式をいじるだけになり勝ちだが、発送も大事。

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Posted by ブクログ 2022年08月07日

ループ量子重力理論の研究者だが、一般向け書物多数。理論物理学者が時間を語る書物は面白くて考えさせられるが、意外にも哲学的で叙情的な傾倒もあって驚いた。同理論が万物の理論となりえることを目指しているわけではないとのスタンスだった。一文一文が短くて読みやすいが、ぼやけた視点がエントロピー増大を感じさせる...続きを読む点について疑問が残った。量子の位置と速度の非可換性、この相互作用の順序が量子論を特徴づけるもので時間的な順序の原始形態なのだという。これをアラン・コンヌが数学的に定義したとのことで、もう少しこの点を掘り下げてほしかった。
我々の身の回りはあくまで特殊な系にあって、エントロピーの増大を感じる根源は、自分自身や意識を認識することと時間を感じることが表裏一体になっているポイントにあるとのこと。紹介されている「脳と時間」も非常に気になる書物。

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Posted by ブクログ 2022年07月09日

詩的な表現が印象に残る、筆者の思いが伝わってくる文章だった。
時間は存在せず、エントロピー増大などの出来事の積み重ねでしかない、という趣旨でなるほどではあるのだけれども、やはり感覚としては受け入れ難いものだった。しかし事実は事実。
後半触れられていた、時間がないなら意識って何なの?という部分がものす...続きを読むごく気になるので色々量子力学の本を読んでみたいと思った。

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Posted by ブクログ 2022年06月01日

註にある方程式的なことは皆目わからないけど、ホワイトヘッドが哲学に走るわけだと思った。実体のない関係性の世界というイメージは多分プロセス哲学とほぼ同じなんではないかと。あくまでイメージですが。
超ひも理論とループ理論が争ってるみたいですが、どっちも部分的に正しいみたいな止揚はあるのだろうか?言語では...続きを読む矛盾を含む表現とか詩的なフレーズで近似を指し示すことができても、数式ではそうもいかないのだろうな。多分。

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Posted by ブクログ 2022年05月12日

時間は絶対であるという概念を覆す内容。専門家の知識も交えて書かれているため、理解できる(と思っている)ことは当然全体のほんの一部しかない。

書いてあることの中で印象的だった内容。
自分はなぜ、時間が流れていると感じるのか。それは二つの要素が組み合わさった結果、そう思い込んでいるからである。

ひと...続きを読むつめは、自分の記憶。
ふたつめは、目の前に残っている過去の痕跡。
脳がこのふたつを組み合わせて、過去を認識している。一方、未来には痕跡がないから、未来は定まっていないと感じる。

こんな風に本書の一部を切り抜いても訳がわからない。けれども全文を読んでみると、不思議と「そうなのかもしれない」と思わせる説得力がある。

「テネット」や「メメント」など、クリストファー・ノーランの世界観が好きな人ならワクワクできると思う。

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Posted by ブクログ 2022年01月03日

『時間は存在しない』という煽り気味のタイトルの本書は、最新物理学を解説したもので、とても売れなそうな内容ではないのだが、世界的ベストセラーとの謳い文句や前著『すごい物理学講義』などの影響でこの手の本としては日本でも異例の売上だそうだ。原題は”L'ordine del tempo” イタリア...続きを読む語で「時間の順序」である。この原題は、ギリシアの哲学者であるアナクシマンドロスの言葉から取ったものであり、本の内容にもリンクをしている。その観点では著者の意図を超えていじりすぎの邦題ではあるが、確かに『時間は存在しない』の方がある意味で中身を象徴しているし、もちろん読者の琴線に触れやすく、これはありかと思う。一方で、「時間」「存在」と言えばもうそれはハイデガーの『存在と時間』になるだろう。言ってしまえば、この本は時間とは何かという昔からの哲学の難題を、先端物理学の知見から解明しようというのだから、そこまで言ってしまってもいいのかもしれない。このタイトルを付けた人がどこまで意識をしたのかはわからないが、業界にいる人であれば、そこはあえて付けたと信じたい。

そう、著者は、量子重力理論を扱う物理学者で、ループ量子論と呼ぶいわゆる統一理論の研究を進めている。この理論は、超ひも理論に対抗する理論で、何も証明されていないが、世界について根本的な何かを見つけようとして一線級の頭脳と熱意を注ぎ込んで研究されている領域である。時空の中に多次元の超ひもがあって素粒子や力の性質を説明するというこじつけ感のある超ひもとは異なり、ループと呼ぶものが、シンプルに量子化された時空を生み出す源となるというものである。

「本質だけが残された世界は美しくも不毛で、曇りなくも薄気味悪く輝いている。わたしが取り組んでいる量子重力理論と呼ばれる物理学は、この極端で美しい風景、時間のない世界を理解し、筋の通った意味を与えようとする試みなのだ」

本書は、著者のこの立場を数式を使うことなく一般の読者に伝えようとするものだ。正確に言うと、おそらく伝えることは意図しておらず、感じてもらうことを願ったものだ。
本の構成としては、第一部「時間の崩壊」では現代物理学でわかった事実をもとにわれわれが感じている流れる時間という概念が実は正しいものではないことを示す。そして、続く第二部「時間のない世界」では、その結果時間という概念が成立しない世界とはどういう世界であるかを説明する。最後の第三部「時間の源へ」で、改めてわれわれの慣れ親しんだ「時間」がどのようにして眼前に立ち上るのかを説明する。そういった意味で、『時間は存在しない』というタイトルは正確ではなく、正しくは、失われた時間を再び再発見し取り戻すための物語と言うことができる。

時間については、現代物理学のほぼすべての理論では、ニュートンの力学においても、マックスウェルの電磁気学においても、量子力学においても、過去と未来が区別されないことから、なぜ時間が過去から未来に「流れる」のかの必然性は説明されない。さらに、アインシュタインの相対性理論においては、時間の流れる速度や「今」の同時性も異なる時空では成立しないことが示されている。相対性理論が時間の概念に与えた影響は大きく、もはや一様に流れる唯一無二の時間があるというような素朴な概念は成り立たない。また、量子力学によって明らかになったプランク時間に制限される非連続性をどのように捉えればよいのかも課題として残された。

「時間や空間そのものが、時間や空間のことなど知りもしない量子力学の近似なのだ。存在するのは、出来事と関係だけ。これが、基本的な物理学における時間のない世界なのである」

となれば、われわれにとって流れる時間とはどういうものでありうるのだろうか。そこで、基本的な物理法則の中で、唯一熱力学だけが時間の流れをその中に内包する物理法則であることが意味を持つことになる。熱力学第二法則であるエントロピー増大の法則だけが過去から未来に流れる時間を必要としているのだ。著者自らもっとも難しいという第三部では、エントロピー増大の法則から時間の流れが生み出される様子を描写する。

「時間のない世界にはそれでも何かがあって、わたしたちの慣れ親しんだ時間 - 順序があって、未来が過去と異なり、なめらかに流れる時間 - を生み出しているはずだ。私たちにとっての時間が、何らかの形でわたしたちのまわりに生まれているはずなのだ。少なくともわたしたちのスケールにおいて、わたしたちのために」

著者は、エントロピーの増大により時間の流れが生まれるということから、われわれにとって流れる時間の源はわれわれが世界について不正確な情報しか持っていないことから生じると説明する。われわれにとって世界の像がぼやけているがゆえに、われわれの世界で時間が流れるのである。
「基本的な相対論的物理学では、先験的に時間の役割を演じる変数は皆無で、マクロな状態と時間の進展の関係をひっくり返すことができる。時間の進展が状態を決めるのではなく、状態、つまりぼやけが時間を決めるのだ」

そしてもうひとつ重要なことは、過去にエントロピーが低かったという事実から、「過去と未来の違いにとってきわめて重要で、至る所にある事実 - それは、過去が現在のなかに痕跡を残す」ということが生まれるのだ。

また、時間の順序性の起源として、もうひとつ量子の関係依存性に言及する。
「おそらく相互作用の結果がその順序に左右されるという事実こそが、この世界における時間の順序の一つの根っこなのだろう。コンヌが提唱するこの魅力的な着想によると、基本的な量子遷移における時間の最初の萌芽は、これらの相互作用が(部分的に)自然に順序付けられているという事実のなかに潜んでいる」

著者の結論はこうだ。
「マクロな状態によって定められる時間と、量子の非可換性によって定められる時間は、同じ現象の別の側面なのだ。
思うにこの熱的にして量子的な時間こそが、この現実の宇宙 - 根本的なレベルでは時間変数が存在しない宇宙ー でわたしたちが「時間」と呼ぶ変数なのだ」

「物理学における「時間」は結局のところ、わたしたちがこの世界について無知であることの表れ」だという。そして、こうつなげる「時とは、無知なり」と。

著者は自らの提唱するループ量子重力理論について、「この理論がこの世界を正しく記述しているという確信があるのかと問われると、わたしにも断言できない」という。ただし、量子力学が明らかにした物理変数の粒状性(量子性)と不確定性とすべては他のものとの関係に依存するという量子の性質と両立するような「時空の構造を考え得る首尾一貫した完璧な方法」は今のところこのループ量子重力理論しかないと断言する。時間は、さまざまな近似に由来する多様な性質を持つ、複雑で重層的な概念であり、「ループ量子」という新しい概念から導き出されるものなのだ。われわれの前に立ち上る流れる時間は、われわれが本質的に世界に対して「無知」であるがゆえに生まれるものなのだ。

ループ量子重力理論がどのようなもので、将来的に素粒子の大統一理論のような形で物理学の世界において科学的パラダイムのひとつとして受け入れられるものかはわからない。その可能性はさほど大きくはないようにも思うが、そのことを判断する能力ももちろん資格もない。それでも、ここで語られる時間についての論考はある意味面白い。何か具体的な理論が理解できた、というものではないが、時空の相対性と量子性とそこからおそらくは認識するべきであろう帰結がぼんやりとわかったような気がした。ぼんやりとしたものなので、「時間」の経過によってそれは失われてしまうものかもしれないけれども(笑。

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Posted by ブクログ 2023年06月29日




NHK出版 カルロロヴェッリ 「 時間は存在しない 」


「時間や空間が根源的ではない」と主張する物理学(ループ量子重力理論)の本。エネルギーを扱うと思っていた物理学が 世界の認識を扱うことに驚く


世界の根源にあるのは「時間や空間に先立つネットワーク」であり「時間のない世界」を前提として...続きを読むいる。ただ 時間のない世界でも、過去から未来に向かう「時間の流れ」は 当たり前の事実のように感じられる という、ややこしい論理。さらに「時間の流れ」という感覚を 記憶とエントロピー増大の法則から説明


アインシュタイン の一般相対性理論による時間の描写「この世界は、ただ一人の指揮官が刻むリズムに従って前進する小隊でなく、互いに影響を及ぼしあう出来事のネットワークなのだ」




主な内容
*時間は、一つでなく、空間の各点に異なる時間が存在する
*時間は、方向もなく、事物と切り離せず、今もなく、連続でもない
*時間という特別な変数はなく、過去と未来に差はなく、時空もない
*過去と未来が違うと感じるのは、過去の世界が、私たちのぼやけた目に「特殊」に映るから
*時間が流れるリズムは、重力場によって決まる

量子重力物理学は 時間のない世界を理解し、意味を与えようとする試み
この世界は事物でなく出来事でできている

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Posted by ブクログ 2023年05月06日

イタリアの理論物理学者による本です。数式は全く出てこず、一般読者を対象とした本です。3部構成になっていて、第1部は「時間のない世界」ということで、一般の人々が考える時間の概念を1つずつひっくり返していく作業が科学史をひもときつつ行われます。アリストテレスの時間論に対するニュートンの時間論、そしてアイ...続きを読むンシュタインがこれら2つを統合する形で一般相対性理論を完成させ、我々の時間の概念が正しくないことを示します。ここまでは多少科学の知識がある読者であれば、「そうそう時間は高度や速度によって流れ方が違うんだよね」ということになるかと思いますが、ここからがなかなか難しいパートに入ります。著者は「ループ量子重力理論」というものを推進しているとのことなのですが、それが記述され始める第2部あたりからは正直ついていけませんでした(純粋に私自身の能力不足ではあります)。第3部では「時間の源へ」ということで、時間を議論するというより実は人間とは何かという問いかけに戻ってくるのですが、こちらも哲学者と文学者の引用が多く、個人的には著者が自分の文章に酔っている感じがしてあまり好印象は持てませんでした。最後の章は詩人モードになっていたと思います。本書は一般読者を対象にしているとはいえ、読み込むのはそこまで容易ではない、ということを念頭に置きつつ読まれることをお勧めします。

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Posted by ブクログ 2023年04月19日

著者はループ量子重力理論者
客観的で確実な空間や時間はこの世界に存在しない。
一応物理の本なのだが、哲学的でもあり、数多くの古典からの引用がある。

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Posted by ブクログ 2023年03月12日

面白かったけれど、読み進めるのに苦労した本。物理学の話と哲学の話が混ざっていて、あとは著者自身の考え方も物理学的に証明されていない中で色々と入っているので、どこまでが事実で、どこまでがアイディアなのかを整理するのに苦労した。

いくつか気になったポイント。

相対性理論の方程式には、単一ではなく無数...続きを読むの「時間」がある。二つの出来事の間の持続時間は一つに定まらない。物理学は、事物が「時間のなかで」どのように進展するかではなく、事物が「それらの時間のなかで」どのように進展するか、「時間」同士が互いに対してどのように進展するかを述べている。
→つまり、一様な時間なんぞ存在しないし、私たちが生きている世界の物理学は、結局その一様の時間の中での出来事の解明なのである。

時間の概念は、確定する際の精度によって決まる。ナノ秒単位で確定する場合の「現在」の範囲は、数メートル。ミリ秒単位なら、数キロメートル。わたしたち人間に識別できるのはかろうじて一〇分の一秒くらいで、これなら地球全体が一つの泡に含まれることになり、そこではみんながある瞬間を共有しているかのように、「現在」について語ることができる
→遠く離れている世界では、時間の概念は全く異なってしまう。私たちの認識できる世界が、地球の規模だと一様でいられるということ。

量子力学の世界において、時間には最小幅が存在する。その値に満たないところでは、時間の概念は存在しない。もっとも基本的な意味での「時」すら存在しない
→ここにはゆらぎがあって、予測不能の世界があり、過去も未来も存在しない

わたしたちはずっと、この世界をある種の基本的な実体の観点から理解しようとしてきたが、調べれば調べるほど、そこに「在る」何かという観点ではこの世界を理解できないように思えてくる。出来事同士の関係にもとづいたほうが、はるかに理解しやすそうなのだ。
→全ては出来事の集合体である

ボルツマンの理論の核心にはこのぼやけがあって、そこから熱やエントロピーの概念が生まれ、さらにそれらの概念が、時間の流れを特徴づける現象に結びつく。
→出来事が起きるのはエントロピーが高いところと低いところがあり、それが流れるから。一様であれば物体は変化しないし、物事は起きない


要約すると
万物に共通で一様な時間というものは存在せず、物事は出来事の集合体。ミクロな世界になれば過去も未来もない状態となり、ゆらぎが発生する。このゆらぎを人々は過去という形で記憶をして生きている。また、出来事があるのは熱力学の法則によるもの、つまりエントロピーの違いがあるから起きる。

みたいなところかな。相対性理論はたまに読んでるので概念を理解していたが、私たちの体の変化もエントロピーの増大によるものか、と思いつつ、結局彼のこの見解から「時間は存在しない」と言い切る(表題)は乱暴に思えた。
超ひも論とかはやや難解で理解しきれなかった。

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Posted by ブクログ 2023年02月12日

時間をどうとらえればいいのか。

冒頭で重量からの距離や動静による時間の進み方が違うのは理解できた。アインシュタインの相対性理論に関する本を読んだことがあるから。

後半の量子の揺らぎやエントロピーの話になるとなかなか難しい。

唯一無二の時間は存在せず、相対的なものなのか。
時間の流れはエントロピ...続きを読むーの大きい方へ向かい量子ネットワーク間をジャンプしている。
過去が特殊なのはエントロピーが低いためそちら方向へジャンプしないから時間は一方方向へ流れていると感じるのか。
すべてはあまりに微細で小さな世界なのでなめらかでシームレスにしか我々は認識できない。
このような理解でいいのかな。

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Posted by ブクログ 2022年08月31日

最初の方はかなり面白いと思ったけど、後半ちょっとしんどくなった感じ。

きちんと並べたトランプを切っていくとグチャグチャになることを、エントロピーの説明によく使うけど、それは私も違和感があり、赤と黒にきっちり分けて、数字順に並んでいるのを秩序立っている、エントロピーが低いとするのは恣意的だと思う。な...続きを読むので、うん、それでそれで?と思ったのだが、話の方向はちょっと違った。

ただ、エントロピーが常に増大する前提から、低い状態と高い状態を比べ、低い方が先にあった、つまり過去と判断してしまう、というのは良くわかる。

そして、熱力学とか相対性理論とか量子とかの話だったのが、最後は哲学的になったり詩的になったりするのは、こういうテーマの本にありがち、かも。

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Posted by ブクログ 2022年07月19日

高所と低所では時間の流れる速度は変わる。
との冒頭で、面白い!!
ってワクワクしたけど、以降物理的な説明はチンプンカンプン
でも気になってた本だし、「三体」でこんなの言ってたなって部分もあって、読めて良かった

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Posted by ブクログ 2022年06月19日

気鋭の物理学者による時間論。アインシュタインの相対性理論によれば、時間に「今」は存在しない。さらに量子論によれば、時間に過去と未来は存在しない。私たちの当たり前は、ちっとも当たり前じゃなかった。

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Posted by ブクログ 2022年05月03日

名著だからといって一般の読書好き程度のサラリーマンが理解できるものではなかった。
Youtubeと並行で読んでやっとつまみつまみ理解ができました。

学べた事
時間は均一に流れているものではないということ。高い所と低い所では時間の流れがちがい、また動的なものと静的なものでも時間の流れが違うという事。...続きを読む
この事実は知らなかった。より多くの時間を得るためには低い所で動き続ければより多くの時間を物理的に手に入れられる(雀の涙ほどだろうが)ということがわかった。

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