あらすじ
ベストセラー『奇書の世界史』待望の第2弾がついに書籍化! 前作を超える、驚きの奇書とその歴史を紹介。
『ノストラダムスの大予言』……世界一有名な占い師はどんな未来もお見通しだった!……のか?
『シオン賢者の議定書』……かの独裁者を大量虐殺へ駆り立てた人種差別についての偽書
『疫神の詫び証文』……伝染病の収束を願って創り出した、疫病神からのお便り
『産褥熱の病理』……ウイルス学誕生前に突き止めた「手洗いの重要性」について
『Liber Primus』……諜報機関の採用試験か? ただの愉快犯か? ネットに突如現れた謎解きゲーム
『盂蘭盆経』……儒教と仏教の仲を取り持った「偽経」
『農業生物学』……科学的根拠なしの「“画期的な”農業技術」について
『動物の解放』……食事の未来を変えるかもしれない、動物への道徳的配慮について
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
前作が面白かったので、続刊となる本書を購入。紹介する書籍は減ったものの、1つ1つの内容が濃くなっていました。個人的には「産祷熱の病理」についての解説が面白かったです。まだ医学的な学問が未成熟である時代に、ウイルスに対して手洗いの重要性を説いた医師の論文についてです。
医学が未発達であるがゆえ、原因不明の病気は「瘴気」のせいだと宗教的な観点で見られていたという時代背景の中、その医師は産祷熱を伝染病と捉え、他の医師からの反発や自らの死を経て、今現在我々が当たり前に行っている「手洗い・消毒」に辿り着くエピソードは込み上げてくるものがあります。
先人たちが残した知恵から今の当たり前に繋がっている、時代を超えたロマンを改めて感じました。
Posted by ブクログ
『ノストラダムスの大予言』、『シオン賢者の議定書』など、公式非公式にかかわらず歴史にインパクトを与えたヤバイ文書を紹介してくれるワクワクするような内容。扱う書籍や文書がヤバいので解説も緩いかというとそうではなく、バランス取れた安定感のある内容。個人的に嬉しかったのは、ウンベルト・エーコが『プラハの墓地』でも取り扱っていたシオン賢者の議定書について、分かりやすく解説してくれている点。それと、インターネットで話題になったという『Liber Primus』という、ネットユーザーに暗号を解かせていくというゲームのような騒動の解説が面白かった。日本でのPC遠隔操作事件と捜査攪乱を思い出す。これ以外にも興味深い内容が多数。
上記に挙げていないもので『盂蘭盆経』について。儒教と仏教の仲を取り持った偽経という事だが、これに触れる文書で興味深かった内容を抜粋。
― 仏教本来の教義を考えてみると、少しおかしな点があります。仏教の基本となる死生観は「輪廻転生」。人は死んだあと別のものや人に生まれ変わり続ける定めです。迷いを断って「悟り」の境地へ至ることで、この輪廻を抜け出し「解脱」することができます(宗派によって解脱への道は様々)。死後、別のものへと生まれ変わっているはずの霊がなぜ、お盆に限り戻ってくるのかー。これは、仏教が日本へ伝来した際に神道の祖霊仰と混ざり合った結果、現在のようなお盆の形となったといわれています。しかし仏教には「盂蘭盆会」という、お盆の素地となった催事がすでにありました。仏教とは本来相容れないはずの行事が、伝来時すでに存在したとはどういうことか。
他にも共産主義失敗の一因でもあるルイセンコの存在。時代や社会の〝狂い“、人間の認知を歪めたり、それに挑戦するエピソードはスリリングで面白い。
― 生化学者、海洋学者、地質学者、古生物学者、物理学者、化学者、数学者・・・学間の垣根を越えたのべ297名の連名による、ルイセンコを告発する文替です。そこにはルイセンコがソビエトにもたらした具体的な「被害」が書かれていました。常識的な遺伝学を用いたアメリカで作られた、生産効率の高いトウモロコシなどの例を挙げ、「アメリカはこのトウモロコシだけで、原爆の開発費用を回収した」といった旨とともに、遺伝学分野の改善を訴えました。加えて、アメリカが用いた同様の技術を、ヴァヴィロフが逮捕される1年も前に紹介していた事実。それをルイセンコが握りつぶした事実。この30年の間に起きたことを一気に総括しました。国内外からの激しい批判を受け、完全に風向きが変わったルイセンコは、ついにその地位を追われることとなりました。しかし、ルイセンコの学説を完全に否定することはすなわち、スターリンやフルシチョフの判断を否定することにつながります。そのためなのか、フルシチョフが退陣するまでの間、ロシアの生物学の教科書に「一応」載り続けるのです。ルイセンコは、自身が生んだ被害の深刻さにかかわらず、何ら罪に問われることはなく、78歳でその生涯を終えました。
Posted by ブクログ
ユダヤ人大虐殺を招いた史上最悪の偽書「シオン賢者の議定書」、ロシアや中国の大飢饉を招いた「農業生物学」が世に出てしまった経緯が興味深い。
権力者におもねるために小人物によって偽書は生み出され、多くの犠牲者を出してしまうのがやりきれない。
Posted by ブクログ
前作より専門的な話が増えた印象。
特に『農業生物学』は動画版のときも今回もじっくり噛み砕かないと飲み込みづらかった。
あの語り口だからこそ読める!
個人的には『Liber Primus』のワクワク感が好きでした。
インターネットが普及した時代だからこその暗号もの。
これが自分も生きるリアルの時間軸において一部界隈ながら本当に話題になっていたところに、この上ない興奮を覚えた。
番外編は切り口が変わるので、毎回楽しみにしていて、今回の「今後奇書になるかもしれない」某説の紹介は、また視野の広がる話で勉強になった。
3作目も出るのだろうか。
楽しみだ。
(一方で内容についていけるか心配でもある)
Posted by ブクログ
奇書が生まれた背景や物語を描くのがうまい。
単に知的好奇心を煽る書籍の紹介に留まらず、歴史のレンズを通して現在目の前で起きていることに疑問を抱くきっかけとなる。
Posted by ブクログ
著者の投稿動画「世界の奇書をゆっくり解説」の内容を加筆修正したシリーズの2巻目です。
前著と同様に、書物が持つ影響力を改めて認識させられました。
非常に深く掘り下げた研究と簡潔明瞭な解説により、奇書の面白みが全面に押し出されていると感じます。
特に印象的であったのが『Liber Primus』で、ネット上と現実世界で繰り広げられた暗号解読の濃さに驚愕し、その真意が大変気になりました。
規模としては個人ではなく組織的な活動のようですが…何もかもが謎です。
文字や数字は人類が創造した人工物ですがそこには計り知れない情報量が秘められ、図書には膨大なそれが封じられています。
その絶大な力を感じられた一冊です。