【感想・ネタバレ】ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書)のレビュー

あらすじ

児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。

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講義で教われないこと

教員をしています。この本で書かれていることを知らずに過ごすことで、どれほどたくさんの子どもたちのSOSを見逃してきたのかと思うと、より学んでいかなければならないと身に染みました。

1
2020年08月07日

購入済み

多く教育者に読んでもらいたい

困っている子どもは見つかる。
本人は何に困っているかわからない。
でもその困り感を取り除いてあげることで楽に生きることができるだろう。
最後に書いてあったように、まずそれを担うのは間違いなく学校。
非行を犯し、少年院で反省する前にできることがある。
教育や学習の力を信じたくなりました。

1
2020年01月08日

Posted by ブクログ

生育環境や学校等の支援を受けられてきたか、ほんの少しの差で犯罪を犯してしまう可能性のある少年はたくさんいるのだと思う。川崎の少年事件に取材した、『43回の殺意』と続けて読んだので、事件を起こした少年が特別だったではないと感じている。境界知能や自閉症スペクトラムの子どもは多く、その人たちを救えないことは教育の敗北であり、そこに働きかけないのは社会にとって大きな損失を生むと強く感じている。

0
2026年03月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

知的障害や境界知能では、みる力、きく力、想像力がとても弱い。被害者の手記が読めない。読めても理解できない。相手の気持ちを想像できない。そのため内省に至らない。殺人を犯しても自己評価に乖離があり、自分は優しいと思っている人もいる。

できていることを褒める教育は根本的な解決にならない。認知機能を向上させないことは、本人の可能性を潰し、障害者を作ることになる。

時間の概念が弱い子は、昨日、今日、明日の世界を生きている。見通しが持てないため、計画や目標を立てることができず、我慢や努力ができない。
努力できないと成功体験が積めないために自己肯定感が育たない。
努力できないと他者の努力が理解、想像できないため、他者の大切なものを平気で盗む。

子どもの心に扉があるとすれば、その取っ手は心の内側にしかついていない。
叱られることではなく、自己への気づきと、自己評価の向上が自分が変わる動機づけになる。

0
2026年03月25日

Posted by ブクログ

これから教員になろうとしている人、実際教育に携わる人、保護者、保護者になろうとしている人、そして職場にいる人に困っている社会人に読んで欲しい1冊だった。
筆者は精神科病院や医療少年院に勤務した経験を持つ、教授である。勤務経験から、日本の教育の問題点や困り感を抱えた生徒たちにどのようにアプローチしていくと良いかが本書にて書かれていた。
私も教員の経験はあるが、まさしく筆者の言う「効果のないアプローチ」をしていたのかもしれないと思った。当時この本を読めていれば、何か変えられたかもしれないと思い、後悔した。
本書には困り感を抱えた子どもたちへの支援方法も少し紹介されている。詳細は他書を参照しなければならないが、本書に書かれた内容でも充分、朝の会や帰りの会や普段の教育に活用できるので、必読の1冊と思う。
そして子どもの発育に携わらない方々に対しては、社会構造、障がい者が抱える困り感、犯罪と障がい、脳の認知機能の関係など、(もしかしてあの人ってこうかも?)と思える内容になっている。
実際この本を読んでいて、私は自身の叔父を思い浮かべた。軽度障がいほぼ当てはまるように感じる。叔父と姪の関係上、私が直接どうこうできる訳では無いが、毎度私の父や母に怒られている姿を見ているので、父や母へのアプローチを考えてみたい。頭ごなしに怒るのではなく、認めて理解して支援する姿勢が必要だと思ったからだ。

この1冊が、困り感を抱える全ての人への支援に繋がりますように。

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2026年03月20日

Posted by ブクログ

犯罪者と一括りにされてしまう人々の中にもこういった少年たちもいるのだと知見が広がった。
彼らの思考や見ている世界は驚くものだが、本当にそのような世界を見ているのなら、いかにこの世の中が生きづらいものなのか、想像すると苦しくなる。
境界知能という気づかれざる知的障害の存在を知ることができてよかった。

0
2026年02月28日

Posted by ブクログ

知的にハンデのある青少年たちが、その特性ゆえに被害を受け、やがてあらたな被害者を作り出してしまう悲しい現状をわかりやすく教えてくれる作品
軽度知的障害、境界知能と言われている人たちこそじゅうぶんな支援が必要、「できることを褒める」「じっくり話を聞いてあげる」は根本的解決にならない、など、現在の学校教育の課題が浮き彫りになり、対策は急務である
教育関係者だけでなく、生きずらそうな人と関わるすべての人に読んで欲しい本でした

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2026年02月19日

Posted by ブクログ

自分にも当てはまるところもあったりしてドキッとしながら読んだ。
出版されてから5.6年経ってるが、いまはもう少し良くなっているんだろうか?
問題の原因とどう問題かということ、概要ではあるが解決案とその理由どれも簡潔で説得力があった。

0
2026年01月25日

Posted by ブクログ

今までずっと疑問だった、
「なんでどうせ捕まるのにこんなしょうもない犯罪犯すんだろう」
という疑問が解けた。

後先を考える力が弱い人が、安易な非行を行ってしまっているんだということ、それが私にとっての大発見。

目標が立てられないと人は努力しなくなります。
この一文は、自分の身体を貫くような衝撃。まさかこの本から喰らうと思っていなかった一撃。

怒りの背景の一つに、
相手への要求が強い、つまり、相手に期待し過ぎてしまっている(普通の人ならこうしてくれるはず、なのにしてくれなかった)、固定観念が多い(〇〇すべき、〇〇するはず、〇〇しないのはおかしい)
当たり前のことを当たり前と思わないほうがいい、良くも悪くも。

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2026年01月05日

匿名

ネタバレ 購入済み

大切なのは気づくこと

認知機能についてなど知らなかったことが多く、勉強になりました。褒める、話を聞くだけでは子どもは変わらない。根本的な解決が必要だと気づきました。

#タメになる

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2025年12月14日

購入済み

感想ですが

28歳、おそらく境界です。。
辛さの集約でした
これからどうしたらいいんだ…?
こんなに沢山の人が買って
読んでいるのは自分と同じような人たちなのだろうか??

0
2021年07月09日

購入済み

根深い

あまりにも根深くて、地道な導きが必要なんだと思いました。
基本がわからない以前の問題。
まわりにも勧めました。

0
2020年12月11日

Posted by ブクログ

子供を守り育む最前線は、やはり教員。福祉や医療には、限界がある。
障害のある子が、医療少年院に行くのは教育の敗北だ。
反省以前の子供たち。
後先考え計画し、効果的に実行するのが実行機能。
小学校二年生からのサインを見落とすな。
認知機能の弱さ。
では、どういうこと?と、聞き返す
感情フィルターは、認知の前に脳で通る
適切な自己評価大切
発達性協調運動症は、6%
障害には、4次障害までがある
知的障害の8割以上は軽度
軽度は、困った時に柔軟な思考や対応ができない。だから、支援いる。
軽度とは、支援がいらないわけではない。

ウィスクはザル
恋は最も難しい
子供の心に扉があるとすれば、その取手は内側にしかついていない



0
2026年02月21日

A

ネタバレ 購入済み

事実として

自分にはあたりまえのことでも、
人によっては当たり前ではないということ。
ケーキを人数に切り分けるだけのことなんて
特別な訓練をしなくても当たり前にできるようになることだと、
大抵の人は思ってしまうが
現実として、それができないどころか
等分にわけるということも思いつかない人々がいて
そこには、善悪以前の課題があるということを
思い知らされた。

3
2020年01月22日

Posted by ブクログ

映画「プリズン・サークル」を観た後で、背景について考えを深めるために読んだが、時が経ちあまり覚えていない…
境界知能や環境を自身で変えていくことは困難を伴う
故に早期介入、支援、そして処罰感情に囚われないケアの必要性、なんて事を考えてたような
新鮮な着眼点はそれほどなかったが、考えの後押しになったような曖昧な記憶です…

0
2026年03月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

難しい表現もなく読みやすかった。
知的障害について、私自身が当たり前に悪いと思っていることでも、理解できない人がいることを改めて知った。
反省以前の子どもたちをみて、身内が彼らに殺されたりしたらと考えると、しゃーないかとら飲み込める訳がない、絶対に恨む。けど自分が基本的な能力について困っていないのは運みたいなところがあるし、、もっと学校教育や親が知的障害について知っていくことが第1歩なのかなと思った。

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2026年03月27日

Posted by ブクログ

非行少年や勉強についていけない子供の中には、そもそも勉強をするうえで最低限必要な見る、聞く力が伴っていないことが多い。そんな残酷な真実を教えてくれた一冊であった。学習の基盤となる基本的な能力がないと、現在の授業システムでは置いて行かれてしまうのだ。
そしてそんな子供たちは、社会性を自然と身に着けていくことが出来ない。表面的な問題ではなく、その背後にある原因に目を向け、対話していかないといけない。AIがいくら発達していっても、1人に1人の先生がつかなければ改善できないと思った。
その人間を構成するストーリーを知ってしまったら、誰のことも嫌いになんてなれないと思った。

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2026年03月27日

Posted by ブクログ

もっとゆっくり生きて、ゆとりを持って、
毎日穏やかな気持ちで過ごしたい。

人生はあっという間。何もかもはできないんだから、得意なことだけ頑張ればいい。
勉強しても英語なんぞ話しておらんし。
足し引き算すら、スマホでしてる。
好きなことを好きなだけ。
興味のない授業は実らない修行のようだ。

煉獄さんのお母さんの言葉、思い出したわぁ。

ひとに優しく、ひとから優しくされたいわぁ。

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2026年03月07日

Posted by ブクログ

なぜ彼らは罪を犯してしまったのか。その裏側に潜む「認知機能の低さ」という、教育や社会が見落としてきた決定的な課題を、鮮やかな筆致で描き出しています。
犯罪を個人の資質として片付けるのではなく、彼らが直面している「世界の見え方」を順序立てて解説する構成には、蒙を拓かれる思いでした。現状への批判に終始せず、具体的な支援のあり方を提示している本書は、教育関係者のみならず、現代社会を生きるすべての人にとって必読の「共生のバイブル」です。

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2026年02月23日

Posted by ブクログ

今さらだけど読んでみた。
低知能や発達に問題があること、いじめ被害などによる心の問題など。罪を犯した彼らのことを可哀想とは思えないけど、気の毒な一面があることは認める。
我々大人の役割は、説教や叱責などによって無理やり子どもの心の扉を開けさせようとするのではなく、子ども自身にできるだけ多くの気づきの場を提供すること、という部分に共感した。
むずかしいことだけど。

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2026年02月21日

Posted by ブクログ

子どもと関わる仕事をしているので、とても役に立つためになる本であった。子どもの変化を見逃さず、小さい頃から一人ひとりにあった関わりをすることで少しでも非行少年と言われる子たちが少なくなる社会になればいいと願う。

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2026年02月12日

Posted by ブクログ

今まで考えたことのない視点での話で興味深かった。新たな視点を持つことができたが、偏見にならないように気をつけたい。

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2026年02月06日

Posted by ブクログ

刑務所に入ってる非行少年たちの実態として、反省以前の問題、知的な障害をもっていることに衝撃を覚えた。
それゆえに、反省という考えが出てこなかったり、衝動的な行動による先を考えてない犯罪を犯してしまうなど、常識的には考えられないことに驚いた。
子供の知的な障害についても勉強になり、子どもへの支援や、教育現場での今後の支援の仕方、家庭でもできそうなコグトレについて考えさせられることばかりであった。

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2026年01月24日

Posted by ブクログ

題名だけ聞いたことがあり、偶然見かけたので手に取ってみた。ケーキが切れないってそういう意味か。
非行少年の身体と精神の状態について冷静に分析し、変に肩入れすることなく淡々と解決方法を提案する筆者の姿勢が良かった。
非行少年は見る力・聞く力・想像する力が弱いために認知能力が低く、そのせいで集団生活で失敗して自信を無くし社会からドロップアウトするとの説明、正直言って程度の差こそあれ自分にも似た部分があるので他人事とは思えず、少し緊張しながら読んだ。こうして自己分析できている時点で筆者的には非行少年よりも認知能力はあるという事になるのだろうが...(いつまで維持できるのか)。それはそうと、筆者の言う通り認知能力を鍛える教育が小中学に導入されれば、救われる子はたくさんいるんだろう。

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2026年01月14日

Posted by ブクログ

後先を考える力の弱さが犯罪に繋がっているのだと知って納得した。今まで未成年者に対して法が甘すぎると思っていたけど、適切な学校教育が受けられなかったことで非行に走ってしまう少年が多いのなら、まず教育制度を改めることが必要なのかなとも思った。

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2026年01月07日

Posted by ブクログ

とても心に残ったのが、『子どもの心に扉があるとすれば、その取手は内側にしかついていない』『発達障害については勉強されているが知的障害については定義すら知らない先生方が多いのが現実』『褒める教育だけでは問題は解決しない』
私は保育士1年目で発達については勉強してきたつもりだが知的はあまり深掘りしていないなと反省した。
なぜそんなことするの?とよくニュースを見て思っていたが、犯罪を犯してしまう子どもたちもなぜ自分が犯罪を起こすのかもわからない、困っている子どもたちがすごく多いのが現実で、その中で知的があるのにも関わらず気付かれないまま大人になり社会に出てしまった人たちも多くそれが犯罪に繋がるのがとてもショックだった。これからの日本で犯罪者を減らすにはまず困っている子どもたちの早期発見、支援が必要だと思う。難しい言葉も何回か出てきたが調べながら読むことで少し知識が増えたように思う。読んで良かった

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2026年01月04日

ネタバレ 購入済み

新しい考え方に出会えた書籍

犯罪自体は良くない事で、判断能力に欠けておりなどニュースで聞くと、そうは言ってももし被害者家族だとしたら、許せるわけが無いと言う考えでした。
基本的には変わりませんが、
この書籍を読んで、自分たちのあたりまえの感覚を
もてない、知能だったり、そうなっている環境、
また、脳との関係、これを知っているかどうかで
自分の価値観が少し変わると思いました。

#深い #タメになる

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2023年03月11日

購入済み

この本を読んでから少年犯罪がニュースで報道されると、何故こんなことをしたのだろう・・という疑問プラスもしかしたらこの本の内容に
書かれている少年少女のような感じなのかもしれないといった考えを持ちながら報道を捉えるようになった。
子供の頃から周囲の大人の気づきや対応次第で差が生まれるのかもしれない。すごくすごく難しい問題。読んで良かった。

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2022年09月13日

Aya

購入済み

子どもを持つ前に読めて良かった

漫画版の第1巻を読んだ後、購入しました。読書が苦手な方に漫画版、とてもおすすめです。
過去を振り返って、知らず知らずに見過ごしてきた発達障害、発達遅延、知的障害の人達もいるのだろうと思いながら読みました。将来自分に子供ができたら、そしてもしその子が何らかの障害があったら、どうやって育てていくべきなのか、考えさせられる書籍でした。
目に見えづらく、目を逸らしがちな、しかし向き合うべき少年達と彼らに関わる人々の苦悩をご自身の経験からわかりやすく説明してくれている筆者の方に感謝いたします。

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2021年05月16日

Posted by ブクログ

タイトルに惹かれまして手に取った一冊。
学生時代のクラスメイトを思い出してそういうことかと納得できた。
何回説明しても理解できない子は理解力が悪いというより他の人が当たり前のようにできている部分、複雑な問題を処理するベースとなる部分ができていないからだ。そこで諦めずに学校の方でこういう生徒向けの塾やワークショップがあったら良いなと思っている。一人でも多く早期から支援をもらえるように。

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2026年04月05日

Posted by ブクログ

教育関係の仕事に身を置く立場として、桁違いに理解が追いつかない学生に対する「もしかして他の人とは見えているものが違うのか」という疑問を確認できる書籍だった。今後の学生指導方法の参考になった。
出来ないのではなく違うのだということが理解され、社会と彼らの間を仲介できる層が適切に設定される将来を切に願う

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2026年03月29日

Posted by ブクログ

​1. 「当たり前」の崩壊と衝撃
​認知の歪みの可視化: 少年たちが描いた歪んだ図形は、彼らが見ている世界の写し鏡である。
​反省の前提条件: 「反省」とは高度な認知能力(客観視・因果関係の理解・他者への共感)が必要であり、その土台がない状態では「反省しろ」という言葉すら届かない。
​見えない境界: 知的障害とは診断されない「境界知能」の方々が、社会の「当たり前」から取り残されている実態。
​2. コミュニケーションへの応用(子育て・対人関係)
​「できない」を「やらない」と混同しない: 相手の不手際を「やる気」や「性格」のせいにせず、「認知のキャパシティ(脳の処理能力)」の問題ではないかと一度立ち止まる。
​相手の世界を想像する技術: 相手が自分と同じように世界を見ているとは限らない、という前提で接する。
​「共通の地図」の確認: 「分かった?」と聞くのではなく、相手がどう受け取ったかを言語化してもらうことで、認識のズレを埋める。
​3. 精神論から「環境とスキルの調整」へ
​責めることや根性論で解決を図るのではなく、相手が理解しやすいように情報を分解したり、トレーニング(コグトレ等)で土台を整えたりするアプローチの重要性。
​結びに:これからの向き合い方
​「相手の見えている世界を理解しようとする」姿勢は、相手への深いリスペクトであり、同時に自分自身のストレス(「なぜ伝わらないのか」という怒り)を軽減する術でもあります。
​この本を読み終えた今、身近な人との対話の中で「この人には今、どんな図形が見えているんだろう?」と一瞬想像してみるだけで、コミュニケーションの質は劇的に変わっていくはずです。

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2026年03月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 児童精神科医で、病院や医療少年院といった施設での勤務経験を持ち、非行少年と接する著者が、生育環境によって治療も受けられない、発達障害や知的障害を持つ少年たちが非行を起こしてしまう実態やそのメカニズム、構造上の問題、認知トレーニングによる改善の手立てについて述べた本。
 本の帯には「2020年のベストセラー」となっていて、確かにひと昔前に、ケーキがいびつに「三等分」された図とともに話題になっていたような記憶がある。確かに今の学校でも「スペクトルの中に位置付けられた発達障害や学習障害」を抱える生徒たちに接することは結構あるし、なんだったらその保護者とか、なんだったらおれも、ある意味では発達障害的傾向があるよな、という世の中だから、別にケーキが多少いびつな三等分になっても仕方ないよね、不器用で下手くそだね、というレベルだけど、ここの本に登場する少年たちはもはやそのレベルではない認知の偏りがあって、でもそれは普通に話していると気づきにくく、さらに貧困とか親にきちんと育てられない環境とか、あるいは誤った指導によってますます悪化し、その結果非行、犯罪という形で発露する、という実態について述べられており、援助のためには親や教員や社会の理解が不可欠、ということは分かった。
 ただ、正直に言ってしまえば、学校の教員をやっているおれにとってはとても不愉快な内容で、怒りすら持ってしまった。と感じるのは今のおれには余裕がない証拠で、これは学校批判、教員批判というよりはそれこそ社会や政治の構造上の問題の指摘なのだと思うようにはしたけど、やっぱり結局は教員の理解や努力が足りない、という主張のように思えてしまい、そこで著者が開発した極めて短時間で出来る(と謳う)「コグトレ」と言うものをホームルームで定期的にやれば解決の一助に、みたいな締めくくりだったが、基本的に今の学校現場をなめているのかと思う。その短時間のためであっても、クラスや学年全体に対して、普段の業務に加えて一体誰がその準備や実施や評価や整理や報告やフォローをするのか。だいたい著者の経験談では、自分の指導が通じない少年たち相手に「私はだんだんと指導するのが嫌になり、投げやりになりました。(略)『では替わりにやってくれ』と彼らを前に出させ、私は少年側の席に移りました。彼らに私の苦労を体験させようと思ったのです。」(p.155)という、それくらいの指導しかできない著者になんでそんな努力について提案されるのか、じゃああなたが40人の担任やって成績処理と保護者対応と、加えて担任業務以外の意外と時間と頭を使わされる業務を日々こなす教員をやってみて下さい、と「苦労を体験させようと」思いたくなる。もちろん著者にしてみれば私は教員じゃないので教科や生徒の指導は専門ではありません、と言うのだろうが、だったら「褒めることよりも、忘れ物をしないような注意・集中力をつけさせないと問題は根本的に解決しないのです。こうした問題が発生している場合の『褒める教育』は、問題の先送りにしかなりません。」(p.29)とか、「根本的な解決策は、勉強への直接的な支援によって、勉強ができるようにすること以外では有り得ません。」(pp.123-4)とか、「つまりこの少年の場合、中学校で先生が障害に気づいてくれて、熱心に勉強への指導をしてくれていたら非行化しなかったでしょうし、被害者も生まれなかった」(p.26)とか、「これら社会面は、集団生活を通して自然に身につけられる子どもも多いですが、発達障害や知的障害をもった子どもが自然に身につけるのはなかなか難しく、やはり学校で系統的に学ぶしか方法がない」(p.128)といった厳しい注文や提言やコメントをする前に、学校の教員や多様な生徒の実態とか指導の方法とか、そういうことを十分に知って下さい、という感じだった。「医療現場で超多忙の医師にできるのは、診断と見立て(治療方針)、投薬くらいに限られてしまいます。診察につぐ診察で時間がなく、具体的なトレーニングを実践する機会がなかなかないのです。」(p.131)ということで、医者はそのくらいの理由で時間や労力のかかるトレーニングや指導はできないことが正当化されている。そして学校には色々注文をつけて提言する、という著者の態度が受け入れられない。
 という、何ら建設的でない文句をひたすら言うのは良くないと思うのだけど、それこそ医療と学校の溝を深めかねない著者の態度はどうしても受け入れられない。急いで付け加えれば、もちろん少年の実態や、まずい指導の方法についての著者の話はよく分かる。特に印象的だったところは、「現在の矯正教育では本人の理解力などあまり考慮しません。ひたすら矯正局から指定された難しい教材を黙々とやらせていることが多いのです。少年たちも『分からない』と答えると叱られるので、分かったふりをしている、という状態なのです。同じことは学校教育にも当てはまります。悪いことをした子がいたとして、反省させる前に、その子にそもそも何が悪かったのかを理解できる力があるのか、これからどうしたらいいのかを考える力があるのか、を確かめなければなりません。もしその力がないなら、反省させるよりも本人の認知力を向上させることの方が先なのです。」(p.57)という部分で、その話はよく分かる。最近も生活指導の案件になった生徒と話をしたり、ノートを読んでいて、たぶん何が悪いのか結局よく分かっていないんだろうなとか、たぶん起こった事象についての認知がちゃんと出来ていないんだろうな、ということが推測されるようなことがあり、これは反省とか向き合うとかそういう話ではないよな、と思った。そして最悪なのは「悪循環を繰り返していると今度は精神科医が呼ばれ、少年の気持ちを抑え教官の指示を聞けるようにするため、精神科薬が投与されます。効果が出なければ次第に薬の投与量も増え、少年院を出る頃には精神科薬なしではやっていけない患者になってしまうこともあるのです。そもそも弱い存在である、障害のある少年に厳しい処遇をするとどうなるか。多くはうつ病のような状態になったり、精神科疾患を発症したりして、精神科薬で対処することになってしまうのです。本来なら必要でない薬を飲ませ、出院後ももともと必要のなかった精神科病院への通院を余儀なくされるなど、われわれ大人が彼らの人生を台無しにしてしまっている」(p.119)という部分で、これは悲劇。ただ思うに、親でも「自分の子供は発達障害」と言って、やたら薬を飲ませて、親の思う通りに子どもが動かなければ薬の種類や量を変えて云々、という人はいる。多少の発達障害はあるのは認めるけど、それはどっちかと言うと思春期上の問題ですよと思うけど、そう言っても「先生は分かってない、こんなに特殊な子どもはいない」の一点張りで一切通じず、本人は薬漬けになっている、みたいなことも昔あった(一方で、明らかに鬱傾向があるのに薬に頼りたくないと言って無理をさせてどんどん悪化させるケースもあるから難しい)。
 あとこれは教員のおれでも活かせるというか参考にできると思った内容は、「人が自分の不適切なところを何とか直したいと考えるときは、『適切な自己評価』がスタートとなります。(略)そして、理想と現実の間で揺れ動きながらも、自分の中に『正しい規範』を作り、それを参照しながら"今度から頑張ろう"と努力し、理想の自分に近づいていくのです。そのためにはやはり、自己を適切に評価できる力、つまり"自分はどんな人間なのか"を理解できることが大前提」(p.150)という話で、そうすると「自覚状態理論」(同)という、要するに理想の自分でない自分が気持ち悪いので直したいと思うようになる、という話らしい。「この理論が正しいなら、学校で先生が子どもに対し、"あなたを見ていますよ"といったサインを送るだけでも効果があります。」(pp.151-2)という、その結論部分は教員の基本だと思うが、とりあえず「適切な自己評価を促す」というのは方法の一つになりうるのだろうと思った。
 ということで、どうしてもおれは教員としてこの本を読むから、もちろんこの本の中で書かれているような、著者の研修に参加する教員は尊敬するし、ここに書かれている実践をやればできる教員はたくさんいるのも事実だと思う。でも例えば研修だったら、教員が参加すべき、あるいは参加したいと思う研修というのはそれこそたくさん職員室には掲示されているわけだし、そういう教員は例えば教科教育や「探究活動」に力を入れたり、保護者対応や学校マネジメントに力を入れたり、という、それぞれ取り組むべき部分に労力を使っているということもある。なのである一つの視点や自分の経験しか参照しないで、現場を知らない(最近の担任経験のない)「専門家」が教育を語り、しかもそれがベストセラー、ということにどうしても寛容になれず、非行少年の実態について分かりやすく知れて考えられる点では良い本だと思うが、結構苦々しい思いを持ちながら読んだ本だった。(26/02)

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2026年03月19日

Posted by ブクログ

少年院にいる少年たちと発達障害の関連を実例と共に述べた本。
発達障害によって認知が歪み、それが犯罪の原因になっているというのは、改めて言われてみると「そりゃそうだよな」と妙に納得してしまった。
親としは、定型発達であることを前提にせず、少しでも子が何か困ってそうなことや違和感があれば、すぐにサポートできるようにしたいと思った。

一方で、発達障害があっても真っ当に生きている人はもちろんいるし、逆に高IQで超優秀な人でも罪を犯すことがあると思うが、こういう人達の共通因子って何なんだろうか。

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2026年03月13日

Posted by ブクログ

少年院に入るような少年達の中には、犯罪に加担していると気付かず罪を犯しているとは衝撃だった。犯罪をおかしてしまうことを正当化できないが、大多数が知的障害であることや家庭環境に恵まれないなど、社会的弱者であることを世間が知って理解してあげることで彼らが犯罪をおかすことなく生きやすい社会になることを望む

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2026年01月27日

Posted by ブクログ

非行少年の非行行動は、実は認知機能の低さに起因しているとが多い、という著者の見解なるほどと思いました。ケーキを3等分に切る、というのはあくまでも一例であるが、今般、問題視される軽度知的障害や境界知能を持った人の生きにくさ、それゆえに犯罪に至ってしまう現状がよくわかった。本書の良いところは教育現場で何をすべきかを提案しており、ただの解説本になっていないところだと思った。

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2026年01月18日

Posted by ブクログ

見る力、聞く力、想像する力などの認知が歪んでいるから、どんなにしかったり反省させても理解できないことが根本原因

勉強ができない→いじめられる→イライラする→自分が加害者になる

自己評価がズレている

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2026年01月11日

Posted by ブクログ

IQが基準値でも、他の箇所に問題があるかもしれない。そういう子たちは気づかれない。「知能は正常」と判断されるので、反社会的な態度を取ると「怠けている」「性格が悪い」と言われてしまう。そういう子たちにはただ厳しくするのではなく適切な方法で寄り添うのが大切だ。
自分の子供や周りの人がそうだった時、この本はきっと役に立つと思う。

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2026年02月13日

Posted by ブクログ

ケーキの切れない非行少年たち。母親が、教員であり興味本位で手に取る。著者は、精神科に勤めていたが、根本的な解決方法について疑義を持ち、少年院に法務技師として勤務。

重要なことは、発達障害と知的障害は異なり、知的障害も、軽度と境界線知的障害があるということ。定義上は、IQ70未満が知的障害LDとされるが、80〜70の間の少年も苦しんでいる。彼らは、反省以前に、認知能力、感情コントロール、計画スキル(遂行機能、実行機能)、対人スキル、身体的不器用さなどが絡み合い、極端な思考に陥ってしまう。見る力、聞く力、想像する力といった、基礎的な能力が乏しいにもかかわらず、それを飛ばして、計算や漢字の勉強をさせる、社会的なことを教えるなど。本当に、根本的な問題解決になるのか。周囲からの認知度が低い故に、本来は支援を必要とする人に支援が届いていない現実、いじめの被害者が加害者となり、社会的コストが発生している現実。

大人になってから矯正することは難しい。症状、SOSは、小2から出ている。大事なことは、周りがSOSに気づき、適切な支援をすることである。問題を起こす少年たちも、逃げて行き着いた先の自己表現、ストレス発散がそうなのである。

改めて、教育現場の重要性を学ぶとともに、加害者も支援されるべき人々なのではないか、という新しい視点だった。社会としてどう取り組むか。

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2026年01月18日

購入済み

新たな視点を持って

普通の大人になってから非行少年達に接する機会はほとんどありませんが、自分の子供時代を考えて、クラスでも何人か問題行動のある子達がいたな..と考えました。その子達の中には、非行に走った子もいましたが、彼らが知的に障害があった可能性もあることを考えさせられました。彼らの行なった非行に対して、「なぜそんなことを?」と思っていましたが、本書を読んで、ミョーに納得するところがありました。

#タメになる

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2021年05月24日

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