【感想・ネタバレ】世界を動かすイノベーターの条件 非常識に発想し、実現できるのはなぜか?のレビュー

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Posted by ブクログ 2019年05月04日

解説が楠木建だった。面白かった。
考察するために選ばれたのは、マリー・キュリー、トマス・エジソン、アルバート・アインシュタイン、ベンジャミン・フランクリン、スティーブ・ジョブズ、ディーン・ケーメン、イーロン・マスク、ニコラ・テスラ。

…彼らが独創的な思索家になる後押しをしたのは、孤立だった。孤立に...続きを読むよって支配的な考え方や規範から自由でいられたし、たとえそういったものに向き合わなければならなくなっても、どこにも所属していないという感覚のおかげで、それを受け入れない選択をする場合が多かった。

 輝かしい成功を収めた者が退学経験者だと聞くと、教育は成功に無関係であり、むしろ妨げになるのではないかと思う人も多いかもしれないが、もちろんそんなことはない。現に私が研究した優れたイノベーター全員が熱心に独学に取り組んでいる。

 そうした研究結果をまとめると、ブレインストーミングがグループの創造性を低下させるのは、人のアイデアを聞いているあいだに自分のアイデアを忘れてしまったり、斬新なアイデアが浮かんでも人にどう評価されるか心配で発表するのをためらったりするからであることがわかる。このことにずっと以前から気づいていたのが、SFの巨匠でボストン大学の生化学教授、アイザック・アシモフだった。彼は1959年のエッセイで次のように書いている。「創造には孤独が必要であると私は感じている。創造性のある者はとにかく不断に努力するものだ。無意識のときですら、常に頭の中で情報をシャッフルしている。創造とはばつの悪い行為なので、他者の存在はこのプロセスの邪魔になるだけだ。ひとつの優れたアイデアを考え出すまでに、何百、何千ものばかげたアイデアが浮かぶが、そんなものを人に見せる人間はいない」

 ヴァロー・エクイティ・パートナーズ社のCEOで、友人であり、テスラ・モーターズ、スペースX両社への出資者でもあるアントニオ・グレーシャスは、この時期のイーロンの精神力と強固な意志に深く感銘を受けたという。「これまで出会った中で、彼ほど身を粉にして働き、ストレスを耐え抜く力をもつ者はひとりもいなかった。2008年に彼が経験したことは、どんな人間の気力も奪い取ってしまうものだった。彼はそれを生き延びただけではない。働き続け、常に集中力を保っていた。あれほどのプレッシャーにさらされれば、ほとんどの人間はボロボロになってしまう。間違った決断をするようになる。イーロンは極端なまでに論理的な人間だ。長期的な判断も明確に下すことができる。困難であればあるほど、ますます良い判断をする。彼が経験したことを直接目にすれば、ますます尊敬の念を深くするに違いない。あれほどの苦しみに耐えられる力を見たのは初めてだ。」

 並外れて高い自己効力感の持ち主がみな非同調的な思考や行動を選ぶわけではないが、その可能性は極めて高い。自分が一般人より分別があると思えば、一般人の意志に屈するのを潔しとしないだろう。一風変わったアイデアを思いつく人は決して少なくないが、その多くは自信をもてず、批判の気配が生じるやアイデアを放棄してしまう。もし自分のアイデアが優れたものであればそれほど批判されないはずだとか、もしかしたらすでに実行されているのかもしれないと考えがちだ。自分のアイデアが常識を逸脱しているのは、それが良いアイデアではないからだと思ってしまう。ところが自己効力感の高い人は、非常識を否定的なしるしとは考えない。自分にはそのアイデアの価値を評価する能力があると思い、他人の「理解」を求めないからだ。

 経験への開放性が拡散的思考や創造力と関連があることは、多くの研究で証明されている。幅広い興味と幅広い経験をミキサーにかければ、さらに風変わりな連想につながるのは間違いない。さらに、複雑さと曖昧さを寛容に受けとめる性格は異端的思考を促し、高度な抽象化を可能にする。

 …ジョブズは言う。「専念というと、専念すべきことに”イエス”ということだと思われがちだが、そうではない。むしろ、ほかに無数にある良いアイデアに”ノー”と言うことなんだ。だから、選択は慎重に行わなければならない。私はこれまで行ってきたことにも、行ってこなかったことにも満足している。イノベーションとは、1000のアイデアに”ノー”と言うことだ。」

 私は、イノベーションについて指導したり、起業家やイノベーターに助言したりする仕事を何年も続けるうちに、ある事実に気づいた。起業家やイノベーターが画期的なアイデアを思いついたとしても、周囲の人間がそれを理解してくれない場合が往々にしてあることだ。周囲の人間には、イノベーターのビジョンが見えていない。イノベーターの感じるスリルを感じていない。そのため、彼らのアイデアに深い疑念を抱いてしまうのだ。イノベーターの説明によって周囲の者が納得してくれる場合もあるが、うまく説明できないからといって、それが良いアイデアではないとは限らない。イノベーターが画期的なアイデアを生み出し、それを追い求めることができるのは、周囲の人間には理解できない理由があるからだ。彼らは前提を疑うことができるうえ、自己効力感が人一倍高い。だからこそ、ほかの人にはばかばかしく思えるアイデアを思いつき、その実現に向けて努力できる。ほかの者にいくらばかげていると言われても、嬉々としてアイデアの実現に取り組める。そもそも他人に認めてもらうことなど頭にはないのだ。他人が同意しようがしまいが、自分は正しいと信じている。だから私もいまでは、イノベーターからアイデアを聞いても、その将来性の判断はしないことにしている。その代わりに、周囲の誰もがそれを理解してくれるとは思わないようにとアドバイスしている。また、彼らが実現可能と考えている構想に基づいて適切な判断ができるように、必要なツールを提供するよう心がけている。

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Posted by ブクログ 2020年05月03日

偉大なイノベーターには、次のような共通点がある。
【孤立意識】
・ほとんどのイノベーターが、児童期や青年期に長い時間を1人で過ごし、関心があったものを追求している。
・孤独な時間は、他人からの影響を受けずに、自分の考えを築くことを可能にしてくれる。

【並外れた自信】
・革新的なイノベーターは、高い...続きを読む「自己効力感」を持つ。すなわち、自身の能力や職務に強い自信を持っている。
・自己効力感が高い人は、一風変わったアイデアも自分なら実現できると考える。だからこそ仕事に普段以上の努力を傾け、失敗に直面しても諦めずに取り組み続ける。

【高遠な目的】
・イノベーターの多くが理想主義を追求し、高い目標へと邁進する。そして目標を達成するためなら、報酬や家族との時間を犠牲にしてでも、並外れた努力をする。

【時代がもたらす機会】
・イノベーターは、ちょうどいいタイミングで、ちょうどいい場所に居合わせる。インターネットの出現や石油危機など、大きな変化が起こる時に新しいニーズが生まれる。それに呼応してイノベーションを起こすことが多い。

【リソースへのアクセス】
・様々なイノベーターの生涯を見ると、資本や教育よりも、生育環境や優秀な人々との出会いなど、技術と知性に関するリソースの方が大きな役割を果たしている。

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Posted by ブクログ 2020年02月17日

イノベーターと呼ばれる偉人をケーススタディ的に分析し、イノベーターに必要な資質、我々が参考にすべき点を紹介した一冊。イノベーターになるためには特別な能力、性格などの資質に加え、場所や人などの外的環境を活用する(外的環境に恵まれる)ことが大切だと説く。
実は社会人留学時、著者の授業を受けたことがある。...続きを読むいずれ読まなければと思っていたが、参考になるのか懐疑的で積読状態が続いていた。イノベーターの人選については、現代社会で変革を起こした方々に絞った方がよいと思ったが、幸い、私自身というより息子の育て方にヒントがあった。一見するとマイナスに思える個人の資質が、コインの裏表のようにプラスに転じたケースを本書で紹介されていた。子供の長所を見極め、伸ばす環境を整える大切さを感じた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年07月14日

イノベーションを起こしてきた著名なイノベーターを定性的に紐解き、その条件について分析・考察を行なったもの。
実践的ではないが、ヒントにはなるかな。

<メモ>
・自身は他とは違うという孤立意識を持つ。
・並外れた自信、強い自己効力感を持つことが多い。
・たゆまぬ流れのようにアイデアは湧き上がる。創造...続きを読む的な心を持つ。
・ドーパミンとノルエピネフリンが創造力を高める。運動や音楽の演奏などの活動やコーヒーのような軽度の刺激物が創造的思考を促進する。ドーパミンは潜在抑制を低下させ、作業記憶を強化し、通常考えられない連想を行う助けとなる。
・高遠な目的を持つ。理想主義を追求し、高い目標へとお邁進する気質を持つ。
・仕事に駆り立てられる。
・時代がもたらす機会と障壁、ちょうどいいタイミングでちょうどいい場所に居合わせること。
・リソースへのアクセス。知的・技術的リソースに広くアクセスできるようになることで画期的イノベーションの可能性は高まる。
・内にある可能性を育てる。規範やパラダイムを疑問視する。一人になる時間を作る。自己効力感を高める。壮大な夢を抱く。フローを見つける。知的・技術リソースにアクセスできる機会を増やす。

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