あらすじ
ドラッグストアを退職し、在宅薬剤師としての道を歩み始めた小野塚。しかし、そこはドラッグストアとは違い、患者の「生活」に踏み込まなければならない環境であった。そんな中、以前のドラッグストアに処方箋を持ってきていた青年と出会う小野塚。彼は、ヤングケアラーとして統合失調症の母の介護をしていたのであった…。
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Posted by ブクログ
在宅医療特化薬局に転職した小野塚さんの奮闘を描いた12巻である。
三人の患者と、その家族との関わりを描いた内容はまさにアンサングシンデレラらしい濃厚さ。
特にP.19-20における小さなやり取りから始まる、
「自分では前進できているつもりでいた」
「しかし実際は未知の領域に踏み入り、失敗が許されない環境で未熟な自分が居るだけだった」
といったドラスティックな描き方などはまさにこの作品らしい。
毎度心配になるが、この作品、現場の皆さんは本当にニッコリ読めているのだろうか……?(そもそもニッコリ読むものではないかもしれないけれど)
また、今回は患者の側の描き方も強烈だった。
中心となるのは精神疾患を患う三倉さんと、その息子の暁人さん。
ヤングケアラー、代理受診、服薬の自己判断による中止、精神疾患への偏見、第二の患者問題。
この事例だけで描かれる内容は多く、色濃い。
そして何より、
「真っ当に生きている人間への、そう生きられなかった人間の生々しい感情」
これを臭みなく率直に描いている点で、本当にこの一巻は強烈だった。
そしてそれは、そうした物語にたどり着く前から予見できる描き方がされている。
服装や髪型、態度、その節々に暗示されるものがあるのだ。
本当にアンサングシンデレラは「漫画が上手い漫画」だと思う。
締めくくりにおける後味の良さも含めて、本当に上手い。
いつもはお仕事物を読む感覚で(一種他人事で)見ていたら急に刺された気がしないでもないが。(笑)
今回も素晴らしい内容を楽しませてくれた。
基本、主人公以外の目線の物語は好きではないが、小野塚という人物を十分に深めた上での外伝的ストーリーはシンプルに面白かった。
文句なしに星五つ、枠ぶち抜きで星七つで評価させていただきたい。
結末を見ると、この物語も曲がり角に来たのだろうか?
完結に向かうのかはまだ判然としないが、ゆるりと刊行を楽しみにしていきたい。