【感想・ネタバレ】カント 純粋理性批判 シリーズ世界の思想のレビュー

あらすじ

刊行から二百余年、今なお多くの人を惹きつけ、そして挫折させてきた『純粋理性批判』。その晦渋な文章に込められた意味を、一文一文抜粋し丁寧に解きほぐす、入門書の決定版。日本カント協会会長による渾身の一冊!

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Posted by ブクログ

『純粋理性批判』の内容を解説している本です。

著者はすでに『カント哲学の核心―『プロレゴーメナ』から読み解く』(2018年、NHKブックス)を刊行しており、そこでカントの理論哲学を概観していますが、本書はカントの主著である『純粋理性批判』を、その構成にしたがって詳細に読み解いています。「ですます」調で書かれていますが、700ページを超える大著であり、また著者自身が「〈カント哲学ってこうだよね〉とか、もっとひどい場合には〈カント的にはこうだよね〉という決めつけをするのでなく、つまり、目の前の引用文を離れて解説するのでなく、あくまで引用文に即した解説を試みました」と語っているように、『純粋理性批判』を自分自身で読もうとする読者にとっての手引きとなるような解説書だと感じました。その意味では、カント理論哲学の解説書として定評のある高峯一愚の『カント純粋理性批判入門』(1979年、論創社)と似た内容の本だといえるように思います。

ただ、こうした本書の性格を把握していない読者にとっては、議論の先行きが見通しづらく、難解に感じられるのではないかと危惧します。たとえば、カテゴリーの演繹について解説しているところで、著者は客観的統一を「目がける」という表現を用いていますが、カント自身の文章から離れてしまうことをきらってなのか、その説明がじゅうぶんになされているとはいいがたいように感じます。こうしたところでは、思いきって著者自身のことばに翻案して説明を試みてもよかったのではないかという気がします。

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2021年05月31日

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