【感想・ネタバレ】寒橋(さむさばし) 山本周五郎名品館IIIのレビュー

あらすじ

没後50年、いまもなお読み継がれる巨匠の傑作短篇から、沢木耕太郎が選び抜いた名品。
山本周五郎の世界へ誘う格好の入門書であり、その作家的本質と高みを知ることができる傑作短篇集の第3弾!

生涯、膨大な数の短篇を遺した山本周五郎。
その大半がいまだに読み継がれ、多くの読者に愛され、また後進の作家たちに多大な影響を与え続けている。

山本周五郎作品に深く傾倒する沢木耕太郎氏が独自の視点と切り口で4巻36篇を選び、各巻の末尾に斬新かつ詳細な解説エッセイを執筆。
第3巻は「寒橋のまぼろし」。沢木氏の父の出生地であり、「寒橋」の舞台・旧小田原町(築地)に思いを馳せ、「さまざまな情が乱反射する、『情』の万華鏡とも言うべき」収録作の魅力を解き明かす。

本書の収録作は以下の9篇。

「落ち梅記」(武士の、同輩への友情と、許婚への断ち切れない愛情との葛藤)
「寒橋」(女房から亭主への、また父の娘に対する「情」が交錯し意外な結末を迎える)
「なんの花か薫る」(若侍をかくまった岡場所の女。シンデレラストーリーの結末は?)
「人情裏長屋」(不意に託された赤ん坊に対する浪人の人情が愛情に変わっていき……)
「かあちゃん」(裏長屋住まいの聖一家の究極の人情物語)
「あすなろう」(女衒のような女たらしと目明しに追われる凶状持ちの会話の行方は?)
「落葉の隣り」(親友の職人としての腕に惚れ込み、好きな女まで譲ったが……)
「茶摘は八十八夜から始まる」(改易で岡崎藩にお預けとなった殿様の、相伴役を買って出た男)
「釣忍」(恋女房と平穏に暮らすぼて振り定次郎が、じつは大店の勘当された息子だった)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

敗戦から5年後の1950年に発表された作品。

母を愛おしく思い大切にする父。母は病弱で早くに他界するが、父の深い愛に育てられた娘。その純粋な娘が自分を大切にしてくれる良人に恵まれる。とても幸せな日々が続くと思われたが。。。

***************

純粋な娘の心は良人の不貞行為で無残にも裏切られる。良人は即座に謝るも娘の心はずたずたに傷つき、動揺し、発狂寸前まで行ってしまう。

そんな娘を見かねた父は、病床から意外な事実を娘に打ち明ける。

良人の不貞行為は実は父自身の不貞行為であり、父の恥を隠すために良人が罪をかぶってくれていたんだ、と。

だから女中の中のお腹の中の子は、実は良人の子ではなく父自身の子なのだと。

夫婦である以上、良人も浮気ぐらいするかもしれない、そのときは堪忍してやってくれ、夫婦の間の間違いはお互いに堪忍しあい、お互いに労り、助け合っていかなくちゃならない、それが夫婦だよ、と。

そう言い残して他界した。

純粋な娘は泣いて喜ぶ。やっぱり信じてた良人はそんな人じゃなかった。父にも正直に話してくれてありがとう、と泣いて感謝した。父が事実を言ってくれなければ一生苦しむところだった。

娘は良人に言う、全部父から聞いたと、取り乱したりして堪忍して、と。二人は寄りを戻し、普段の生活が戻ることになった。

良人は、娘が寝沈んだあと、静かに義父の仏壇に向かい、お父つぁん、ありがとう、もうこれっ切りです、決してもうあんなことはしません、と言うのであった。

***************

時代背景が異なるが、僕は言いたい。

いつの時代も愛しい妻を裏切ったり苦しめたり悲しませたりしては絶対にいけない。お父つぁんの言う通り、お互いに労り、助け合っていくことが必要だ。

どの夫婦にも思いがけず様々な困難が襲い掛かってくるものだ。うちも思いがけない困難に何度も襲われた。

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「○○君そっくりの、目がぐりぐりしている子が欲しい」と妻は言った(うちは小学校からの幼馴染なので君付けで呼ばれています)。

長く辛い道のりを経てやっとの思いで懐妊したときの二人の喜びは、暗く長く出口の見えないトンネルの向こうに一筋の明かりが見えた気分だった。

その光もつかの間、急転直下、母体を守らなければならず緊急手術へ。。。

病室で麻酔から目が覚めた妻は僕に言う、赤ちゃんは?!返す言葉がなかった。二人で泣いた。

このような悲しい出来事が何度かあり、あるとき二人で話し合った。体の負担も相当なものだから、もうこれで最後にしよう、と。

残念ながらドラマのようには行かなかった。そこで僕たちは色々な選択肢を探ったが、最終的に二人で生きていく道を選んだ。

この他の困難など、他のご夫婦の方々と同様、数えきれないほどある。

でもその度に力を合わせて乗り越えてきた。夫婦とはそうして愛を深めあっていくものだと思う。

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妻思いのお父つぁんの言う通り、夫婦はお互いに労り、助け合っていかなくちゃならないと思う。そこに二人の思いが幸せとして積もり重なり、良い二人の人生へとつながっていくのではと思った。

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2020年02月04日

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