あらすじ
35歳の千穂は不妊治療を始めて10年、夫と義母からの嫌味に耐え続けてきた。ある日、夫が酒に酔った男・透を轢いてしまう。謝罪のため透を探す千穂は彼が算数障害だと気付き手を差し伸べる。だが、二人の関係を怪しみ千穂を追い詰める夫。一方的に疑われ、これまで抑えてきた感情を爆発させた千穂は、家を飛び出し透の元へ逃げるのだった――。
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Posted by ブクログ
夫と義母からのモラハラに耐え続ける千穂。その生活から透をきっかけにして生きるために逃げる。
ディスカリキュリア(算数障害)の透との刹那的な生活に希望を抱く千穂。でもその生活が続かない事は千穂がよく分かっている。そんな生活に希望を見ないといけない千穂の心情が破滅的だ。
出てくる人がみんな幸せではない重い内容だった
Posted by ブクログ
何度もため息をついて本を閉じた。
12年前の殺人事件の真相や高山透の正体のミステリーの謎解きはもちろん、二人の逃亡生活の顛末が気になって先を読み進めたいとはやる気持ちもあるのに。
僅かな自分の大切なものを守るために躊躇も罪悪感も後悔も無く人殺しを重ねる透の心の壊れっぷりが凄まじくて、あまりに不幸な生い立ちに同情しても真っ直ぐに感情移入が出来きず、逃亡劇が順調でもモヤモヤするし悲惨な結末に突き進んでいっても悶々とする。
一筋の希望の光が差す結末ということなのか。この悲痛な物語を読んだ後には直ぐには素直にそうは受け止められない。
Posted by ブクログ
不妊治療を10年続けていても妊娠しない主人公。同居の義母からもひたすら嫌味を言われ、夫は味方になるどろこか一緒に彼女をなじり全てを束縛しようとする。
4回目の流産が判明した日、夫が交通事故を起こすが、同乗中の彼女に責任を負わせる。事故の被害者の若い男性はは他人と関わりを持ちたくなさそうで治療費を受け取ることさえも拒んだが、彼が算数障害であることに主人公が気づき、それがきっかけで算数を教えることになったのだが、夫に浮気の疑いをかけられ、彼と共に逃亡する。
一方で妻をある女に殺された男性は、その事件に関わりのある若い男性を偶然映り込んだテレビ中継で発見したが、その男は子供の頃に死んでいるはずだった。違和感を感じた男性はテレビで見た男を探し、それがやがて逃亡中の男女とも絡み、事の真相が明らかになっていく。
それぞれが闇の部分を抱え、それをどうにか処理しようとして、逃げる者、口を閉ざす者、真相を明らかにしようとする者などが交錯する。善意の悪が引き起こした事件だったり、悪意の悪が引き起こした事件だったり、どうにも救われない感じ。
Posted by ブクログ
夫と義母に苦しめられながらも十年間不妊治療を続けてきた妻。その苦しみがやがて「事件」を引き起こし、彼女はとあるきっかけで出会っていた青年と逃避行に出ることになる、という物語。
最初から最後までどろりどろりとした展開で、主人公も青年も夫も誰もかれもが一癖あり過ぎて、簡単に感情移入を許さない「翳」をまとっている。だから例えば酷い目に遭って逃げている主人公にだって「可哀想」とだけ思うことができない部分があって、どう考えたって未来のない行動をしていくのをただ眺めていくしかできない。その無力感を抱かせる人々の物語を、けれど作者のよどみない筆致で読まされてしまう。苦しいと、楽しいことなどないとわかっている物語を最後まで負わせる力がある。素直に凄い、と感じるばかりでした。
惹かれ合ってその先に地獄しかないとわかっていても、それでもともに歩もうとする二人。妻を自身の所有物として完全に疑わずに行動できる男。善意を振りまいて正義を疑わない女。その正義に怯えてついには自らを罪人にした女。
業が業を呼び、人と人のわかりあえなさが痛烈に描かれていて、つらくてたまらないお話。けれど、おそらく、見たくないと顔を背けている人の一面であることも間違いはないのだろう。だから、興味を持って読んでしまえるのだろう。
そう、真正面から人のいやらしさに挑んだお話だと思いました。
Posted by ブクログ
7月-6。3.0点。
大学教授に嫁いだ主人公。不妊治療10年。
義母の嫌みに堪えながら暮らすが、数字に拒否反応を示す若者と出会う。
ドロドロとした人間模様。こういうの書かせたら上手い作家。
あっという間に読める。
Posted by ブクログ
三ヶ月足らずでこの人の作品を5冊読みました。
こんなに続けて同じ作家の本を読むのはかなり久し振り。
今回もまるで読者を突き放すかのような憂いを持った登場人物たち。
算数障害を持つ透とそろばん講師の千穂。
この二人、お互いの寂しさの埋め方が吉田修一の『悪人』の二人の関係を彷彿とさせる。
今回の遠田作品は他と比べると少し異色な感じがして、
何だか他の作家さんの本を読んでいる様。
遠田節は健在なのですが。
ここまで来たら遠田作品、制覇するしかないな。
Posted by ブクログ
親による虐待や、ろくでなしの男に追われるという要素から「アンチェルの蝶」を連想させられました。ただ、登場人物のほとんどに共感できなかった点で、これまでに読んだ遠田作品に比べると心象が悪く感じます。
確かに、高山徹(=大西麗)や安西千穂の過去には哀れみを感じますが、殺人に対する罪悪感のない徹と彼に尽くす千穂、そして実の娘をないがしろにする賢治の身勝手さに対する苛立ちが、それを上回ってしまうのです。
さらに私が本作を受け入れづらいと感じた決定打があったとすれば、千穂の懐妊を徹が知った時の「あんたの自己満足のために子供を産むな」というセリフ。本作の登場人物のほとんどに嫌悪感を覚える要因はこれかな、と。
悲惨な過去や経歴があるとはいえ、自己満足を優先して他者(特に子供)をないがしろにする登場人物たちのそうした姿と、(これは勘違いかもですが)作品内にうっすらと漂う「彼らにも同情すべき点がある」という空気・雰囲気に、拒絶反応が生じていたのかもしれません。
文章に関しては、冒頭から終章までじっくりと、一文字も漏らさず読みたいと思わせるクオリティの高い作品だと思うのですが……読後感の良くなさが、嫌な感じで後を引いてしまいました。