あらすじ
八年のイギリス駐在を経て日本に戻って来た達生(たつお)は、帰国したその足でオフィスに向かい、海外赴任中に入社したり異動してきた社員たちと初めて顔を合わせることに。しかし、達生の存在に気づいていないのか、ひとり黙々と仕事を続ける男がいた。その男――和(なぎ)は、渡英直前に旅先で一夜を共にし、置き去りにしてきた相手だった……。大人のためのビタースウィート・ロマンス
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お仕事BLのジャンルですね。
大手商社の上司と部下。8年前、一度だけ身体の関係があった。再会愛。
仕事内容はなかなか難しい話もあったけど、心情が態度や言葉、小物の使い方などでよく表されていて、さすが一穂先生だと感心した。砂糖、マネークリップ、社内メールに携帯、どれもとても効果的だった。
壮大な勘違いをされていた当て馬?役の仁科さんが何も知らなくて気の毒で笑えた。
Posted by ブクログ
▼あらすじ
八年のイギリス駐在を経て日本に戻って来た達生(たつお)は、帰国したその足でオフィスに向かい、 海外赴任中に入社したり異動してきた社員たちと初めて顔を合わせることに。
しかし、達生の存在に気づいていないのか、ひとり黙々と仕事を続ける男がいた。
その男――和(なぎ)は、渡英直前に旅先で一夜を共にし、置き去りにしてきた相手だった……。
白くて、四角くて――砂糖みたいにとびきり甘いきみ。
大人のためのビタースウィート・ロマンス。
***
途中で何度も目頭が熱くなりました。
BL小説でこんなにも心が揺さぶられ、感動したのは久し振りです。
一度読み始めたら止められなくて、一気にラストまで読んでしまいました。
読み終わった後、口から思わず深い溜め息が。何て素晴らしい作品なんだろう、と。
この方の作品は初めて読んだのですが、最初は、「何だか不思議な文章を書く方だなぁ」と思いました。
不思議といっても悪い意味ではなく、どこか詩的で美しい響きがあるというか。
言葉の選び方だとか表現の仕方が独特で、心にストレートに訴えかけてくるような。
例えば、こんな感じで。
“和は笑った。
ふわりとほどけた口元や頬や目は、いつか飲んだ、湯を注ぐと花のかたちに開く茶を思い出させた。
誰かの中国の土産だった。とても良い香りがした。
解き放たれたように細い葉を広げ、ゆらゆらたゆたう様をいくらでも見ていられるような気がした。”
私はこの美しい表現の仕方に、凄く感動してしまいました。
そして別の場所で「一穂ミチは文学だと思う」と仰ってる方を見て納得しました。
確かにこの方の書く文章には文学に通ずるものがあると思います。
登場人物のリアルで生々しい感情の描写は勿論、とにかく景色の描写が素晴らしい。
まるで自分までもがその場に立って、見て、肌で感じているような。
こんなにも五感を刺激する文章が書ける方はBL界では珍しいかと思います。
キャラクター達も、人間味溢れてて妙にリアルなんですよね。
達生なんて旅先でまだ未成年だった和に手を出してあまつさえ何も言わずに置き去りにしてしまうんですが、酷い人だと思えないのはそれだけ清坂達生というキャラクターが魅力的で、尚且つ心情が理解出来るから。
別れのシーンなんて切なくて本当に泣きそうになりました…。
達生の臆病で卑怯な部分は大人の狡いところでもあり、弱いところでもあり、同じ大人ならば誰もが共感出来る部分なので憎めないんですよね。
それどころか終盤は背中を思いっきり押して応援したくなりました。
ラストが少し駆け足気味だったので、前半のようにもっとページを使って煮詰めてくれると嬉しかったのですが、8年という時を経てようやく想いが通じ合った瞬間はやはり凄く感動しましたし、正直、欠点を上げるのが難しいぐらいかなり面白かったです。
とりあえず、和がラストでちょっと子供っぽいというか、昔みたいな性格に戻ってくれたのが嬉しかったです。
「なして?」って方言といい、彼の可愛さは反則…!(笑)
達生は達生で尻に敷かれそうだし、この続きが読めないのが残念でならない…。
この作品は、まるで一杯の珈琲に角砂糖を一個だけ入れて溶かしたような。
ほろ苦くて、それでいてほろ甘い。そんな素敵なお話です。
Posted by ブクログ
一穂ミチの文章って綺麗。描写の仕方も好き。
商社マンもので、仕事に関する内容もきちんと描かれていてとても好感がもてた。
昔一度だけ寝た相手と再会するというありきたりな設定ではあるけれど、一気に読み終えるくらい面白かった。
匿名
作者のイエスかノーか半分かにハマってこちらも購入。他の作者よりも文の表現が好きで読みやすい。でも、行きずりで…って男女なら分かるけど、急に寝たのがちょっと雑な感じがした。
匿名
不安寂しさ悲しみ怒り嫉妬友情計算弱さ卑屈さ
そんな渦中に出会った行きずりの相手との再会
もっと深堀してどろどろやってほしかったきもしますが、
良かったとおもいます。
イエスノーから一穂先生の作品を読み進めて、最近はもうだいぶ前の作品を手にしていますが、
新しいもののほうがより好みですね。しかたないけれど
Posted by ブクログ
すっごーーーいツボ♪
おじさんの域に達した主人公が私にはすっごく読みやすかった。
それにしても一穂さんの小物使い、うまいなあ。
マネークリップにはやられたあ。
Posted by ブクログ
商社マン、イギリス帰り課長・清坂達生×異動したての部下・白石和(なぎ)
交わす会話が、独特のリズムで感じがいい。
薀蓄になってしまいそうな砂糖の話が、要所要所で必要なアイテムとなってるのも。
北海道の描写も素敵。
過去と現在が混ざってる構成、多少混乱してしまったが、最初に過去のすべてが書いて無いから、それが明らかになる頁が楽しみって側面もあった。
それにしても、8年は長いと思う。
小椋氏・表紙の達生38歳、老けすぎだよ。40オーバーに見える。
Posted by ブクログ
再会&年の差もの
正直な感想ですが、初っ端がとても読みにくかったです
再会して、ギクシャクするそういう場面の背景がよくわからなくて…
最初の出会いから別れる場面が2つに別れているし
ただ、終盤は全てがわかって、ぐいぐいと引き込まれたので
計算した配分だったのかな?
読後は、良かったな~って思わせるところが一穂先生の実力なんでしょうね
再読すると、また、違った魅力があるんでしょう
なので、★3つとなりました
Posted by ブクログ
これまた読み物としては楽しかったです。
紋別に行ってみたくなりました。
BLとしては相変わらずノンケ同士があれよあれよという間に
という展開ですが、これはもう一穂さんの持ち味なんでしょうね。
連続して一穂さんの本を読んでるので、感覚が麻痺してきて
いるのかもしれませんが、以前のような無理無理感はなかったです。
受さんが健気で一途で必死感があり、非常に可愛いツンデレ
さんなんですが、いかんせん攻様がどうしようもない感じで……。
初めて男と寝たのに、10年近く前の話とはいえすっかり忘れてる
とかあり得ないだろ……それも憎からず思ってた相手を。
なんとなぁく、受さんが不憫に思えるお話でした。
Posted by ブクログ
8年越しの秘めた恋。
8年前、ロンドン赴任直前の休暇で気まぐれに訪れた北海道紋別で、偶然出会って意気投合した大学生和(なぎ)と行きずりの一夜を過ごしてしまう商社マンの清坂。純粋な和に心惹かれながらも、何の言葉も約束もなくそのまま置き去りにしてしまう。その頃の清坂は30歳になり仕事的にも人生のターニングポイントを迎え、嫉妬、責任、様々な葛藤を抱えていた。目の前のことこなすことでいっぱいいっぱいだった清坂はいつしか和のことを忘れてしまう。8年後、日本に帰ってきた清坂は自分の部下として商社で働く和と再会する。昔の純朴さが嘘のように、頑なでつれない態度をとる和。かと思いきや突然誘って来たりと、清坂は混乱する。時折垣間見せる昔と変わらない純粋さやひたむきさに、いつしか和から目が離せなくなる。
実は、意地っ張りな和の態度の裏に隠されていたのは臆病な恋心。
8年前、清坂に恋に落ちた和は清坂が忘れて行った社名入りのマネークリップを頼りに会社を調べ、入社し、ひたすら清坂の帰国を待ちわびていた。追いかけてきたなんて知られたら気持ち悪がられるだろうかと内心怯えながら。それでも会いたくて会いたくて待っていた。
『雪の女王』のゲルダがカイに会いたい会いたいという想いだけで、ひたむきに旅を続けたみたいに。
流氷や冬景色の描写が相変わらず美しい一穂さんの筆致で堪能できます。