あらすじ
お姫様のような母親と一緒に太陽の前に現れた小さな王様――それが、流星だった。外国の血を引く繊細に整った容貌と、誇り高くまっすぐで、嘘やごまかしのない性格。そのせいで周囲から浮く彼をほうっておけず、いつだって側にいた。けれど、部活の合宿先で偶然会った流星は、太陽が知らない顔をしていて……。闇夜に迷う心を照らす、一等星の恋。 その後の二人を描いた書き下ろし「真夜中の虹」も収録。
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幼なじみの純愛かぁ。
流星にとって太陽は、ものごころがつくかつかないかの頃からずっと一緒で、兄弟でもなく、親友よりも近く、初めて心を許した人という感覚。
先生の作品はただただハッピーでは終わらない、余韻や含みを持たせた作品が多い様に感じる。この作品も同じで。これから先、どんな事になるか全くわからない。安易でベタな恋愛小説だったら、流星はハワイに行かなかっただろうし、太陽も必死で引き留めただろう。そして末長く一緒に‥、チープで単調なハピエンだ。
2人のこれからは2人で決めていくだろう。何度も衝突しながら、何度も泣きながら。人の営みはホントはそういうものだから。
幼馴染の素敵なcpのお話
前半は、太陽の家族の温かさが身に沁みて
、流星も、愛されて育っているのだけど、二人の人格の対比になっています。
いい人しか出てこないので安心して読めます。鍵がいい味出してます。
後半は、場所もハワイに変わり、恋する二人が可愛くて楽しく読めました。家族愛や形もテーマに入っているので、泣けました~。
Posted by ブクログ
一穂さんにはめずらしく、幼馴染みの学生もの。
流星と太陽、まったく違う二人なのに、この二人じゃなきゃだめ、と読み手にも思わせる互いの想いを感じた。
太陽パパの再婚相手が魅力的。
Posted by ブクログ
わりと評価の分かれる作品のようでしたが、私は結構好きでした。
表題の『オールトの雲』というのは、冥王星のずっと先、太陽系の果てにある彗星が生まれるところ。
『空には星がたくさん光っているからきれいだろ。真っ暗じゃないんだよ』
幼い頃、暗いところが怖くて夜が苦手だった流星に、アメリカ人の父親が教えてくれた。
それ以来、夜の星空は流星にとって、とても大切なものになった。
対する太陽は、その名の通り、暖かい家庭で家族の愛をたっぷり受けて成長した真っ直ぐな男の子。
離婚して母ひとり子ひとりで育ち、不器用で周りにうまく溶けこめない流星の孤独を明るく照らして暖めてくれる。
ふたりは流星が近所に越してきた5歳の時から、お互いになくてはならない大切な存在になった。
ずっと傍にいたい、離れたくない、この先の未来もずっと隣にいたい。大好きだから。
そうできると信じていたけれど、流星の母親が癌で亡くなってしまったことで事態が急変する。
アメリカから父親が一緒に暮らそうと流星を迎えに来たからだ。
太陽は、父親の誘いを頑強に拒む流星の背中を押す。
『流星を取り上げないで欲しい。ずっと一緒にいたい』と心底願っているのに。
流星がずっとさびしいのも苦しいのもひとりでずっと我慢してきたのも自分だけはわかっていたから。
結果、流星は父親の元で暮らすことになり、ハワイへと旅立ってしまう。
今まですぐ手の届く場所にいたのに、遠く離ればなれになってしまった。
これから幾度、心細い夜を過ごすだろう。流星を行かせてしまったことを後悔する日もくるかもしれない。
でもどうにもできない。自分だけの力では何も変えられない。『好き』だけじゃどうにもできない。まだ大人にはなれないことの、もどかしさ。
時間はどんどん流れていって、変わらない変わりたくないと願っても、きっと少しずつ形を変えていく。
特別な『その時』は過ぎてしまってからでないとわからない。そのほんとうの値打ちが。どんなに特別で、どんなに幸せだったか。
『何かを選ぶっていうのは、何かを選ばないっていうことなのかな』っていう作中の太陽のセリフに泣かされた。
エンディング、ふたりはお互いを想いあいつつも、まだ遠距離のままだけど、きっといつかまた一緒に、ずっと一緒にいられるって思える。
木下けい子さんのイラストもとても雰囲気があって素晴らしかった。