あらすじ
『あれ』と呼んでいる謎の存在と闘い続けてきた拝島時子。『裏返さ』なければ、『裏返され』てしまう。『遠目』『つむじ足』など特殊な能力をもつ常野一族の中でも最強といわれた父は、遠い昔に失踪した。そして今、母が倒れた。ひとり残された時子は、絶縁していた一族と接触する。親切な言葉をかける老婦人は味方なのか? 『洗濯屋』と呼ばれる男の正体は? 緊迫感溢れる常野物語シリーズ第3弾。
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Posted by ブクログ
常野物語の第3作。
常野物語第1作の「オセロゲーム」の拝島親子その後のストーリー。
この拝島家、失踪していた拝島暎子の夫の肇も含めて「あれ」と呼ばれるものと戦い続ける宿命を負わされた一家。
ある時、暎子が倒れて、娘の時子が洗濯屋の火浦に会ってたところから物語が始まる。
常野一族でも最強の力を持っていたはずの拝島肇が失踪した理由、拝島暎子の「裏返す」能力を獲得したいきさつ、肇と暎子が他の一族と隔絶していた理由など、よく分かり驚きでした。特に肇と暎子が出会った所は、えぇ?そんなんアリ?って思いました。
逆に「裏返し」合うのがどんなふうになっていたのか、「あれ」とは常野一族にとってどんな存在なのか、「裏返す」と「洗う」の違いはあるのか、最後のシーンは「洗われた」ままの状態なのか「洗われた」ところから思い出せた状態なのかはよく分かりませんでした。
時子と火浦との間に子どもが生まれたら、また同じことが起こるのではないのか?っていう疑問を持ちつつエンディング。このエンディング、何となくさみしい感じがありながらも、肇の身勝手さを思うとこれで良かったんだな、と思いました。
常野物語は、勝手に3部作と思っていたのですが、あとがきで、「常野物語」まだ続きます。とあるので、続きをお願いします。刊行されてからだいぶ時間が経っていますが・・・。「エンド・ゲーム」のエンディングのシーンも伏線になり得るなぁ、と思いました。
この「エンド・ゲーム」は物語全体が緊迫した雰囲気がずっとあって、ドキドキしながら読みました。ので、ずっと緊張しながら読みましたので若干疲れました(笑)。前2作とは違う雰囲気で、最初はあれれ?と思ったんですが、とても楽しく読めました。
Posted by ブクログ
常野物語の3作目
特殊能力を持つ常野一族の家族の話
その能力ゆえの苦しみや葛藤から逃れるために下した家族の決断。
特殊能力者同士の派閥や対立も絡んで複雑な状況に追い込まれる。
『洗濯屋』に記憶を書き換えられる家族。
能力を消してしまえば、この状況から解放されると奔走した結果、ラストにどんでん返しが。
最後はチョットしっくりきませんでしたが、全編通じて物語に引き込まれ楽しめました。
Posted by ブクログ
面白かったけど、続きが気になる。
後半、残りのページ数と展開から、何も解決しないまま終わるのではと心配しながら読んだ。この作者でそういう話が過去にあったので。一応の着地はみたけど、謎も残っているので、早く続きをお願いしたい。
クールで影のある存在だった火浦が、話が進むうち時子を憎からず思うようになったり、手放したくないと感じるのはまぁ判るけど、いきなり「この娘を愛している」と自覚するのは、いやちょっと、という感じ。
Posted by ブクログ
再読完了。
常野物語シリーズは優しい雰囲気と思ってたら、結構ダークな話でした。
普通の人とは違う能力、というか枷と言ってもいい感覚、力を持った家族が、その宿命に翻弄され絶望しながら抗う様は、ネガティブなものです。もう常野のみんなも許してあげてよ、と同情しながら読み進めると最後、ほえ?って感じのどんでん返し。
そうなるのかあ、と。
ただみんなが最後納得してそれぞれの生活を続けられる結末は、ハッピーといってもいいものですね。
Posted by ブクログ
常野物語シリーズ第3段。
蒲公英草紙のような、ほんわかする読後感はなく、"で、どうなるんだろう?"というモヤモヤ感が残ったが、それが恩田ワールドだなのかもしれない。
常野ゆかりの人たちのなかでも、特に強い力を持っている両親から、その力を受け継いだ(まだその力は開花しきっていないが)時子の前に、洗濯屋の火浦が現れる。
時子も初めは火裏が敵なのか味方なのか計りかねていたが、いつの間にか二人は婚約していた。が、火裏の方は、時子とその両親を洗濯したことのアフターサービスとして結婚を決めたという。
人の真意を探りながら生きるのは、怖いし寂しい。
最後に時子の父が、裏返したり、裏返されたりすることが続いた結果、かなり均一化が進み、もはやそういうことをする必要がなくなってきたと言いながら、火裏と時子の子どもが生まれたら、新たなゲームプレイヤーになるかもしれないと言った台詞も意味深。
Posted by ブクログ
常野物語の三作目。
一作目の『光の帝国』では、
不思議な力を持つ 様々な常野の人々が紹介された。
二作目の『蒲公英草紙』は、記憶を「しまう」春田家の物語。
そして、今回は拝島家の「裏返す」お話。
母親・暎子が会社の慰安旅行に行った先で意識不明に。
娘・時子は、助けを求めて、ある番号に電話をかける。
それは父の失踪後十数年間、冷蔵庫に貼ってあったメモにあったもの。
そうして出会うことになった、黒曜石のような目をした長身の男・火浦。
自分は「洗濯屋」だと名乗る。
「毎日ビクビクして苦しまずにすむよう、あんたたちを解放したい」
そう語るこの青年は、どこか不気味で、不吉な かおりを漂わせる。
この小説は全部で324ページ。(単行本の方)
おどろおどろしい雰囲気に支配されながら、読み進めること320ページ。
最後の4ページで急に景色が変わる。
えっ? なに、これ!?
そういえば、『光の帝国』で語られた拝島家の物語、
タイトルは「オセロ・ゲーム」だった。
Posted by ブクログ
父の失踪後、母娘ふたりで生きてきた時子。ある日、母の瑛子が出張先で倒れたと聞き現地へ駆けつけると、瑛子は病ではなく深い眠りに捕らわれているのだった。母を救うため、時子は父の失踪以来冷蔵庫に貼りっぱなしになっていたメモの番号へ電話をかける。それは、異形の者を見てしまう彼女たち家族の謎を解き明かす旅のはじまりだった。〈常野物語シリーズ〉3作目。
また妄想オチだったので辛くなってきましたね(笑)。妄想が何層にも重なる構造自体が悪夢的なところや、インターネット上のコミュニティのような共同幻想が憩いの場になっているところは「マトリックス」の時代を感じられてよかったけど。3DCGモデルの如き建築的悪夢像というか。
結局、拝島家の敵とはなんだったのか。地球外生命体だとしても、人類が知能を持つに至るきっかけになったかもしれないくらい昔から寄生されてたんだよね?いくら常野が古い日本人なのかもと仄めかしてても、この敵より古いわけじゃないよね。などと考えると、「すでに同化している」と言われてもそうでしょうよとしか。
〈洗濯屋〉の能力はドラマ「SPEC」の左利きみたいだなと思った。というかSPEC全体に常野っぽい。
Posted by ブクログ
常野物語を追い続けて3日で追いついた。それほどに面白くてこの本にも期待をしていた。
現実の世界にいたのに、いつのまにか人の領域ではないどこかへ迷い込んでしまったような感覚。自分で足を踏み入れたことに気づかず、はっとした時には物語はもう終わりに差し掛かっている。
「夜の底は〜」で味わった何かに似たものを再び味わうことになるとは…
「あれ」の存在に限らないけど、恩田さんは詳しく説明しない主義なのかな?それは悪いことじゃないしむしろそのほうがミステリーっぽくて私は好きです。ただ、風呂敷広げ過ぎだなとは思う。
シリーズを通して常野一族は穏やかであることは知っていたが、知らないうちにそのイメージは「争わない」ことに勝手に繋がっていた。
「あれ」からしたらそんなことはないんだよな。敵同士同じことを考えている。というか「あれ」にも一族がいるのだろうか。
「裏返す」ことの意味がやっぱり最後までわからなかった。裏返さなければ裏返される。だけど負けたらどうなる?「あれ」と同化したら何がまずいのか、もう一度読んだらはっきりするだろうか。私は頭が悪いので抜けている部分が山ほどありそうだ…
あと正直申し上げると火浦が登場した時、時子と結婚してくれ!といつもの癖で願ったら叶ったのでとても嬉しい。
「短い会話に、全てが詰まっていた。この瞬間、火浦は、俺はこの娘を愛している、と思った。」
不器用で孤独な男が愛を手に入れるというのは大好きなので…そして詳しいことはやはり時子と火浦にしかわからないことなので、二人の間にしかない絆やら理解やらが丁寧に書かれないことが嬉しい。愛していることを理解したという火浦の心情がたった一行に全て詰まっていたのがとても良かった。
恩田さんのファンタジーはもやもやするし、わからないことが多くて不完全燃焼でしばらく燻ってしまうのだけど、素敵な男女が綴られているから惹かれてしまうのかも。