あらすじ
仁科鳥子と出逢ったのは〈裏側〉で“あれ”を目にして死にかけていたときだった――その日を境に、くたびれた女子大生・紙越空魚の人生は一変する。「くねくね」や「八尺様」など実話怪談として語られる危険な存在が出現する、この現実と隣合わせで謎だらけの裏世界。研究とお金稼ぎ、そして大切な人を探すため、鳥子と空魚は非日常へと足を踏み入れる――気鋭のエンタメSF作家が贈る、女子ふたり怪異探検サバイバル!
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Posted by ブクログ
ネットロアをテーマに据えた、2021年にアニメ化もしている怪異探検物語である。
ネット上で流布される都市伝説をネットロアと言うようだが、この小説が採用しているのはど真ん中でそれだ。
章立てを見れば、わかる人には明らかだろう。
ファイル1 くねくねハンティング
ファイル2 八尺様サバイバル
ファイル3 ステーション・フェブラリー
ファイル4 時間、空間、おっさん
くねくね、八尺様、きさらぎ駅、時空のおっさん。
まさに王道のネットロア。オカルト系に詳しくない自分にも耳馴染みがある題材ばかりである。
これらの題材に、SF的なニュアンスを絡ませて、謎の裏世界を探索するのが本筋の物語である。
ピクニックと言うには、いささか物騒な内容ではあるけれども。
うっかり関わってしまった神越空魚と、裏世界で失踪した友人を探す仁科鳥子が主人公である。
彼女らのガールミーツガールが物語の軸となり、末に二人で幾度も裏世界に足を踏み入れ、怪異を体験していくこととなる。
それも、裏世界で女子大生がバンバン拳銃や機関銃を撃つという非常にフェティッシュな要素も含んでいる。
この辺は女子高生×機関銃のような黄金比的ギャップだろうが、作者の趣味もあるのかもしれない。
物語は王道の怪異物。
一筋縄ではいかず、時には人間同士ですら対立を余儀なくされる、そんな厄介な世界の物語である。
その中で面白いのが、女性作者らしいキャラ造形のドライさだろう。
良い意味で主人公格の3人(研究者の小桜も含めて3人)は非常に自分勝手で、実に人間的だ。
特に鳥子のキャラ造形は、ファイル4で語られた生い立ちも含めてなかなか凝っている。
ライトテイストなSFとして描かれた物語は、楽しく読ませていただけた。
程よい気持ち悪さ、程よい恐怖と、濃厚な人間模様が描かれた良質なホラー小説である。
私的には星五つで評価したい一冊である。次巻以降の読書も楽しみだ。
Posted by ブクログ
自分だけが知っている秘密の世界「裏世界」、神越空魚はそこで死にかけていた所を仁科鳥子に助けてもらった。自分だけの秘密の世界が秘密じゃないことに残念がりながら裏世界で行方不明のなった鳥子の友だちを探す手伝いをすることに。
都市伝説が実在する裏世界、そこは不思議と不気味と奇妙がごちゃ混ぜになっている上につねに死と隣合わせ。読み手もハラハラとドキドキがごちゃ混ぜ状態になるが、空魚の一人称で書かれていて感情移入しやすく読みやすかった。そして、1話の中で都市伝説が2、3個は出てくる。くねくね、異界エレベーター、きさらぎ駅、猿夢、時空のおっさん、チャイムの訪問者を私は知っていた。1巻だけあって都市伝説の代表的なものが多くこういう話が好きな人は楽しめると思う。ただ、読み物として面白いが私は小桜と同じで興味があり、知りたいくせにセロトニントランスポーター遺伝子が短い。2巻を買うべきかどうか悩み所だ。