【感想・ネタバレ】草紙屋薬楽堂ふしぎ始末 月下狐の舞のレビュー

あらすじ

「見えないかい? 月明かりの中の妖しく美しい狐の舞が……」
時は文政。ある雨の日、江戸の本屋・草紙屋薬楽堂に持ち込まれたありふれた人情噺の裏には、禍々しくも哀れな狐憑きの噂が――。
推当物を得意とする女戯作者・鉢野金魚と貧乏戯作者・本能寺無念、武家の女・只野真葛、高名な父を持つ女絵師・葛飾応為ことお栄は、切ない出口なしの物語を「一番の結び」に導く大芝居を計画するが……。
江戸の本屋を舞台に戯作者=作家が謎を解く!
謎と人情、嘘と本心、運命に抗う決意と逡巡――
読み心地満点、ますます快調の大人気シリーズ、待望の第四弾!

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Posted by ブクログ

薬楽堂主催の新人賞を軸にした四編の連作短編。
8歳ながら聡すぎて生きづらいおけいちゃんだが、金魚や真葛とともに、起こった怪異の謎を解き、徐々に人の心を慮ることを覚えていくのは、良かったなぁ、と思う。

金魚が無念を憎からず思っていることは、シリーズ当初から無念さん推しのわたしとしては嬉しいです。

只野真葛さん、実在の人だったんですね……!!

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2020年05月21日

Posted by ブクログ

登場人物が少しずつ増えていくのも、シリーズものの楽しみだが、今回は大物の登場。葛飾応為。葛飾北斎の娘で、自身も絵師。金魚の戯作に挿絵を描きたいと押しかけてきた。前作だけの登場かと思ったおけいちゃんも再び登場し、気の強い女性がたくさんで、読んでいて楽しい。

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2019年07月31日

Posted by ブクログ

千両萬両 冥途の道行/戯作修行 加賀屋河童騒動/月下狐之舞 つゆの出立/春吉殺し 薬楽堂天手古舞
金魚さん謎解き沢山してるけど、いったいいつ戯作してるの?スーパーお姉さんですね。無念とはどうなるんだろう?

ちょっと前に読んだ本と登場人物がかぶってたり設定が似てたりすると楽しくなる。

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2018年11月14日

Posted by ブクログ

〔金魚/きんとと〕いつも通りお洒落なお姉さん。
〔けい〕この子が出ると話がおもしろくなる。最近戯作者になる修行を始めた。真葛とも会う。
〔戯作修行〕金魚「そうだよ。戯作者は仕掛者(詐欺師)なのさ」。
〔真葛〕金魚が尊敬する数少ない人物と思われる。呼び名は「婆ぁ」だが。
〔栄/えい〕北斎の娘、葛飾応為。これまでにも名前は出てたが金魚と遭遇。いつか四人の女が同時に活躍してほしい。
〔怪異〕金魚はハナから信じておらず、真葛はとりあえず信じており、けいは自分が見たことがないことは判断せず、栄はあったほうが面白いと思っている。
〔月下狐之舞〕月下に狐憑きの舞う幻想的な映像がキモ。
〔素人戯作試合〕その結果は…

■薬楽堂についての簡単な単語集

【薊/あざみ】貫兵衛のかつての部下でクビにならなかった一人。くノ一。
【為一/いいつ】葛飾北斎のこと。
【いく】伊三郎の妻。まだ若い。
【伊三郎】仕立屋(製本業者)「播磨屋」の主。
【植字/うえじ】活字のこと。木の活字はあったが仕上がりがあんまりよくなかったようで廃れていったらしい。
【上杉幸三郎/うえすぎ・こうざぶろう】駿河国池谷家中で北野勘兵衛の上役だった。
【卯助/うすけ】岡っ引き。島田屋から袖の下をもらっている。
【栄/えい】北斎の娘、葛飾応為。美人画の腕前は父をしのぐ。枕絵も描く。地獄耳らしい。読んだものはすべてスキャンして頭の中に入れておけるタイプ。一字一句諳んじることが可能。レギュラーになるか?
【花魁】公的にはもう花魁という制度はないがいくつかの妓楼ではその習慣を残している。昼三(ちゅうさん)、附廻(つけまわし)、座敷持(ざしきもち)の三つの階級があり、昼三の中でも呼出昼三(よびだしちゅうさん)が最高位。梶ノ鞠はそれに位置する。
【大野千之輔/おおの・せんのすけ】戯作者。二人で合作している。
【推当物/おしあてもの】金魚の造語らしい。今で言うミステリ。
【織田野武長/おだの・たけなが】戯作者。本名は加藤権三郎。尾張藩士で定府の勤番侍。暇潰しで書いている小説がそこそこ売れている。無念と親しい。
【小野三郎助/おの・さぶろうすけ】武士。亡くなった戯作者、小野萬了の孫。

【怪異】金魚はハナから信じておらず、真葛はとりあえず信じており、けいは自分が見たことがないことは判断せず、栄はあったほうが面白いと思っている。
【書本屋/かきほんや】写本を専門に扱う書店。
【掛香/かけこう】梶ノ鞠の禿の一人。名は邪気を祓うために匂い袋を部屋に掛けたりすること。夏の季語。
【梶ノ鞠/かじのまり】吉原の妓楼、松本屋の花魁。
【北野貫兵衛/きたの・かんべえ】→貫兵衛
【葛飾応為】→栄
【葛飾北斎】すぐれた絵師。
【鼎逸道/かなえ・いつどう】絵師。東雲夕月と同時期に白澤屋に拾われた。
【貫兵衛/かんべえ】北野貫兵衛。元は池谷藩の御庭之者(密偵)。その全体を仕切る総領。今は在野の国学者。後にあるできごとで金魚たちと知り合い読売になった。便利に使われている。
【きく】徳兵衛の妻。
【きさ】短右衛門の妻。夫婦喧嘩が絶えず三河町で子ども(おけい)とともに別居中。本なんてたいしたもんではなく本屋もすぐつぶれると思っている。
【煙管/きせる】この時代は客には茶より先に煙草盆を出すほど喫煙率が高かったらしい。金魚も煙草をたしなみ煙管は何本も持っており季節や状況に合わせているようだ。舞妓さんの簪や着物の柄なんかみたいなもんか。
【金魚/きんとと】鉢野金魚。主人公。本名は「たえ」。元は吉原の大見世「松本屋」の女郎で源氏名は「梶ノ葉」。粋な女。持ち込み原稿を携えて薬楽堂にやって来た。今で言えばミステリを書く。リアルでも謎解きが得意。筆が速い。「お前ぇの戯作、まだ誰も読んじゃいねぇだろう」「あたしが読んでる」第一巻p.35。ふてぶてしいが自分の間違いを認めるのにやぶさかではない。
【けい】短右衛門の娘。七歳。弁が立ち言い出したら引かないめんどくさいタイプ。うーん、金魚に似てるのかも。実際に会うと主人公にできるキャラクタだった。髪を梳るのが面倒になって尼削ぎにした。最近戯作を書き始めた。この娘が出てくれると話がおもしろくなる。《何事も天下一というのはいいことだ》第四巻p.94
【下駄出何歩/げたで・なんぽ】戯作者。日本橋の呉服屋の若旦那。駄作しか書かないがなぜかそれなりに売れている。
【源兵衛】天明堂山野屋の主人。書物問屋の仲間行司の一人。
【香雅堂/こうがどう】書本屋。主は三右衛門。主に平安時代の書物を写した豪華な装丁の本を扱っており、豪商が娘の嫁入り本として誂えることも多かった。
【故山堂】書肆。武家の多い通りにある。古書売買に重点を置いている。

【しげ】松吉の母。兄弟や父と一緒になって松吉をいじめるが本当はいじめたくない。
【仕事】《仕事は気がついた奴がさっさとやっちまうのがいいんだよ》第三巻p.19
【慈念坊英俊/じねんぼうえいしゅん】修験者(すげんざ)。無念の家族の弔いをしてくれる。
【東雲夕月/しののめ・ゆうげつ】→夕月
【島田屋】薬楽堂の二軒隣の呉服屋。主人の惣右衛門が薬楽堂の土地を欲しがっている。
【島本市兵衛/しまもといちべえ】御家人。妻の佐江が真葛の友人でこの館に身を寄せている。
【白坂屋/しらさかや】地本屋。千両萬両の戯作を出版している。
【白澤屋天下堂/しらさわやてんかどう】地本屋。「華之吉原 傾城揃踏/はなのよしわらけいせいそろいぶみ」という摺物を吉原とタイアップして花魁たちの、いわばブロマイドを比較的安価に発行した。
【素人戯作試合】長右衛門発案の、今で言えば新人賞。第一回の最終候補作は、舟野親玉『江戸怪談 輪廻の契』無念が推す。千野鼠窮『異説皿屋敷』短右衛門が推す。磐野鐵三郎『手習修行』長右衛門が推す。尾久野浪人『蝦夷判官』清之助が推す。薬楽小金魚『窮鼠の蔵』栄が推す。色川春風『吉原 華の経巡(へめぐり)』金魚が推す。
【次郎兵衛】松吉の兄。次男。
【慎三郎】帳屋の益屋大五郎の息子。
【清之助/せいのすけ】薬楽堂の若き番頭。優男。ヤットウを学んでいて木刀を持つと人が変わるとよく言われる。ふだんは真面目だがおもしろそうなことには食いつく。
【千吉】浅草の紙屑買い。
【千両萬両】白坂屋から出版している戯作者。正体は隠しているが、浅草の紙屑買いの千吉の仮の姿(どちらが本業かは不明)。死んだ戯作者小野萬了(小野篁の子孫で冥府を行き来できその見聞を書いたという設定)と、フグに当たって行きかけた冥府で出会って聞いた話を書いているという設定。金魚が書こうとしていた話が千両萬両の作品と設定が被ってしまいお蔵入りにするしかなくなり不機嫌になった。

【竹吉】薬楽堂の小僧。本名は「勘次郎」。しっかりしていて気が利く。実家は万屋だったが夜逃げして行方不明。
【出し看板】店の前に置く看板でごみ箱兼用。放り込まれた紙ごみは再生して使う。
【只野真葛/ただの・まくず】おそらく実在の人物(自分で調べたわけでないので断定はしない)。随筆「独考(ひとりかんがえ)」を薬楽堂に持ち込んだ女性。本名は綾子。長右衛門の幼馴染み。滝沢馬琴も認めているがお上への批判満載で本にできない。
【辰五郎】仲御徒町で武家の家を回ってご用を聞く御用聞き。
【巽屋短右衛門/たつみや・たんえもん】薬楽堂の主人。妻のきさ。息子のの徳次郎、娘のけいとともに三河町で別居中。
【巽屋長右衛門】薬楽堂の主人の父親。隠居はしてるが元気。「巽屋」と呼ばれたら怒る。薬楽堂という名前がお気に入りのようだ。ご隠居と呼ばれたら怒る。「大旦那」と呼んでもらいたいらしい。さっぱりした性格のようだ。おもしろそうなこと大好き爺い。
【太郎兵衛】松吉の兄。長兄。
【短右衛門/たんえもん】→巽屋短右衛門
【長右衛門/ちょうえもん】→巽屋長右衛門
【天神堂北田屋】主は小平(こへい)。露骨な挿絵の艶本や残酷描写の読本を売りさばいている店。
【天明堂山野屋】漢籍や古典を扱う書肆。物之本屋。主人は源兵衛。
【藤吉】播磨屋の職人。
【徳次郎】短右衛門の息子。十三歳。次男だが長男が死んでいるので薬楽堂の跡継ぎになる予定。母はどっかの大店に婿入りさせて養ってもらおうと考えているようだ。
【徳兵衛】金魚と善右衛門の家で世話係だった。
【常世/とこよ】元常世大夫。松本屋にいた。今はお歯黒溝の女郎。金魚の推当の師匠みたいなもの。
【虎次郎】陸奥屋の二代目。先代の虎次郎は色つけの名人だった。

【中野勝之慎/なかの・かつのしん】浅草小石川富坂町代地に住まう小普請組の武士。内職は筆工。家の前に女の幽霊が出るというウワサ。

【萩尼/はぎのあま】真葛の妹、拷子(たえこ)。
【鉢野金魚/はちの・きんとと】→金魚
【はな】伊三郎の娘。
【はま】薬楽堂の通いの下女。三十四、五歳。
【播磨屋】表紙仕立屋。今で言う製本業者。主は伊三郎。
【彦次郎/ひこじろう】吉原の四郎兵衛会所に詰めている若い衆。
【筆工】版木用の原稿の文字を書く仕事。内職にしている武士も多い。金魚は文字が上手なのでそのまま印刷に使えるが、場合によっては男文字の方がいいと考え他者に依頼した。
【他人事】「なに言ってんだい。他人事だから面白いんじゃないか――。それに、他人の方が物事の本質がよく見えるもんだよ」第一巻p.105
【一ツ葉/ひとつは】梶ノ鞠の禿の一人。名は羊歯の一種で夏の季語。
【ひょっとこ屋】無念行きつけの居酒屋。
【ふじ】料理屋〈富士本〉の女将。
【舞台】時代は文政。徳川家斉の治世。江戸。
【舟野親玉/ふなの・おやだま】「素人戯作試合」の応募者。滅法面白い怪談噺を書く。言葉遣いや文字の感じから若い武士かと思われる。
【文古堂】日本橋の書店。主は新兵衛。
【北斎】あの葛飾北斎。夕月に絵を見せた。
【本多左門/ほんだ・さもん】北町奉行所の同心。島田屋から袖の下をもらっている。
【本能寺無念/ほんのうじ・むねん】→無念

【又一/またいち】白澤屋の主人。商売は成功しているが人間性は小物っぽい。
【又蔵】貫兵衛のところで働く彫り師。かつては御庭番で貫兵衛の部下だった。
【又兵衛】故山堂主人。屋号は藤田家。
【松吉】薬楽堂の小僧。本名は「捨蔵」。実家は小作人。ちょっとぼんやりしたところがある。最初の話でなんか怖いものを見た。
【万吉】貸本屋。
【三河町】人足ふうの若い衆が多い。
【みね】薬楽堂の通いの下女。十二、三歳。
【みよ】ひょっとこ屋の小女。
【陸奥屋】紙屋。製造から販売まで。
【無念/むねん】本能寺無念。わりと有名な戯作者だがそれでも生活は苦しく薬楽堂に居候しているむさ苦しい男。たぶん長身でルックスは悪くない。しだいに金魚に惹かれていってるようだ。いつも書くのに苦労しているし何かあったら金魚についていってるしいつ作品書いてんのやとは思う。北条氏が鎌倉で執権政治を行っていた時代を舞台にした伝奇小説が得意。幽霊噺を一笑に付すあたりに限界がある。じつは幽霊が怖いようだ。毎年同じ時期に二、三日留守にする。本名は進藤重三郎(しんどう・じゅうざぶろう)。御家人進藤又右衛門の三男で生まれてすぐ油問屋の菱田屋に養子にだされたが後に実子が生まれかつ自分が実子ではないと知り弟を主にするため家を出た。
【村越平左衛門】旗本のご隠居。きさを別居させるための貸家を紹介してくれた。
【茂助】松吉の父。小作人。

【薬楽堂/やくらくどう】草紙屋。江戸では地本屋(じほんや)と呼ぶが差別化のため上方ふうに「草紙屋」を名乗る。まあ、街の本屋で薬楽堂は出版もする。施設はけっこうデカいがそれでも「うちは手狭だからよ」と言う。
【弥次郎】ひょっとこ屋の主人。
【夕月/ゆうげつ】東雲夕月。絵師。梶ノ鞠を描いていて行方不明になった。天狗に拐かされたというウワサも。
【幽霊】松吉は思った。《幽霊はこっちの都合では現れてくれない――。》第三巻p.98

【六兵衛】薬楽堂の隠居した元番頭。清之助の父。「面白いことはみんなで楽しむのがようございます」第一巻p.63。わりとノリノリの爺さんだ。

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2025年08月21日

Posted by ブクログ

シリーズ四巻
戯作をしたため、誰かに読んでもらいたい、という気持ちは今も昔も変わらないのかも

新人戯作者発掘にまつわるお話四篇
今回は恋絡みのお話が多くて、金魚と無念も少し近付いたかな

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2022年09月22日

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