【感想・ネタバレ】鏡の国のアリス(広瀬正小説全集4)のレビュー

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Posted by ブクログ 2016年02月05日

 小さな鏡の中を覗き込むと、そこに広い世界が広がっているのが見えるけれど、鏡の中に世界なんかあるわけがないのだ。いったいいつ頃から「鏡の中の世界」についてのお話があったのか知らないが、当然、キャロルの『鏡の国のアリス』を挙げねばなるまい。しかしこれは広瀬正の『鏡の国のアリス』である。
 『ミラーマン...続きを読む』は鏡の国からやってきたのだが、あまり不自由なくこっちの暮らしをしていたようだし、『仮面ライダー龍騎』では、鏡の世界にはいって戦うのだけど、鏡の世界にはいったからといって、左右が違って苦労するということはないようだった。
 本書『鏡の国のアリス』の主人公は本来左利きなのにむりやり右利きに直して苦労していた青年である。今は無理に直したりしないだろうが、昔は直されたのだよ。それが銭湯に浸かっていたら左右が逆になって、男湯にいたはずが女湯にはいっていたというのが、話の始まり。細かいこと言うと、鏡の世界で左右が逆転したからといって、男湯から女湯に入れ違うというのは、何かちょっとおかしいのだけど、それはご愛敬。
 鏡の世界では左利きが右利きとなって、苦労していたこの青年にとってはよいことずくめに思えたが、という小説である。

 『マイナスゼロ』『ツィス』『エロス』と続けざまに直木賞候補となった矢先、あえなく夭折してしまった広瀬正の机には2作の長編が残されていた。『鏡の国のアリス』と『T型フォード殺人事件』である。そのほかにも幾多の長編の計画があったと聞くと、何とも惜しい気がするが、それはさておき。

 『鏡の国のアリス』は長編とはいえ短めで、短編3作とで一冊本になっている。
 テーマは鏡、というか左右対称の問題、量子論でいうパリティの問題である。途中、長々とパリティ論が解説されたり、初期のアイディア小説の流れを汲む面が強く、作品の完成度という点ではいささか落ちることは否めない。もっとも、左右反対の世界に迷い込んでしまった青年のお話を読みながら、楽しく物理学の対称性が学べる小説である。意外なオチも用意されている。
 さて、なぜ鏡に映った自分は左右反対なのでしょうか。答えは本書を読まれたし。

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Posted by ブクログ 2010年08月04日

鏡の向こう側へ入ってしまった青年が主人公。
キャロルの「鏡の国のアリス」のオマージュ作品です。
めちゃめちゃ面白かった!
キャロルことドジソンの逸話が面白い。
それと、「おねえさんはあそこに」がジンと来た。

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Posted by ブクログ 2019年04月13日

良書。
70年代のまさにSF。この頃は、夢があった。出来るか出来ないか判らないことを想像でSFにしていた。今は、出来るか出来ないか予想がつく時代になって、夢が物語が書きにくい時代なのではないだろうか。
今読むと、子供っぽいと感じるところもある。でも、恋愛なんてこれくらいが読んでてドキドキする。
鏡関...続きを読む係は難しい。だいぶ飛ばし読みした。作者の賢さ、こだわりが伝わる。

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Posted by ブクログ 2011年06月22日

こんなところで反物質について学ぶとは。
光学異性体で出来た物を食べたら爆発するの??消化出来ないのかと思ってたけど。
それにしても結局誰の夢だったのだろう。
表題作の他も良かった。遊覧バスは何を見たが特に。

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Posted by ブクログ 2010年05月11日

中・短編集です。

表題作のオチは、「ツィス」と「エロス」を足した様な感じです。

でも、この小説のおもしろさは、鏡に関するウンチクにある気がします。
途中から、さっぱり、理解できなくなるのですが、でも、そういう、ウンチクを聞くのは好きです。

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Posted by ブクログ 2013年02月02日

表題作は、途中のビデオで見せてる部分が私には難しい・・・なんかもう、そんな細かいことにこだわらなくてもいいじゃん!と叫びたくなってしまう感じ。短編の方はその点気楽に読めて良かったな。

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Posted by ブクログ 2012年01月22日

相変わらず細かいねぇw。”鏡の国”という設定にこだわり抜いた緻密すぎるほど緻密な思考実験には脱帽させられる。ただオチにはもう一捻り欲しかったかな……。

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Posted by ブクログ 2010年10月23日

これまた広瀬さんのこだわりの詰まった小説全集・・とは言っても広瀬さんが亡くなられてから、この全集は作られたわけですが・・。そう思って読むと、ますます惜しい方を亡くしたと思うのですが、広瀬さんのどこがそんなに凄いのかと言うと、パラドックスにありがちな、『ちょっとした辻褄』も合わないと気がすまない、とい...続きを読むう事なんです。

そのために、ある時は読むのが難しい、難解どころもあるのは事実です。今回も、鏡の国のアリスについて、広瀬さんならではの、『突っ込んでみたいところ』というのが書かれてあったのですが、いかんせ、私のような凡人な頭には到底理解できない事でした。

それでも何とか理解しようと、ビデオの実験の場面は3回読みなおして、ようやく、概要が分かった、気がしました。それでもはっきりと『納得』したわけではないのですが、まあ、3回読んで理解できないものは4回読んでも理解できないだろう・・という事で、概要が分かっただけで満足して読み進みました。

最後は、なんだかまあ、結局、男ってぇ、もんは、と思ったのと、ハン子ちゃんがそれで幸せなら、まあ、良いか、と思いました。

他の作品はちょっと怖いSFっぽいのが2つと、遊覧バスは何をみた、は、昭和の匂いがする、マイナス・ゼロと、作者は違うのですが、北村薫さんのリセットを思い出させる、心温まる作品でした。

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Posted by ブクログ 2014年10月05日

「遊覧バスは何を見た」ヒトとヒトの邂逅、過ぎ去った時間、架空の結末
表題作より、コチラの空気と物語に一票
表題作は、その選択でよかったと思うのだ。(結末ではなく)
あちらさんは言動がなんか気に障ったので。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

2009年3月15日購入。読書期間2009年4月10日〜18日。

表題作のほかに短編を含む。
表題作は面白い。しかし、難しい。
誰もが一度は考えたことのあるだろう鏡の国に迷い込んでしまった主人公の話。
鏡に写る世界とはどういうものなのか、鏡の反射などについて詳しい記述があるため、難しいが理解しやす...続きを読むい。
人は、少しの満足と慣れがあれば、他の事には目をつぶれるのだなと思った。
短編「遊覧バスは何を見た」がなぜか心に残った。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

面白かった。物理のレポートのために借りたのに、肝心の物理については全力で読み飛ばしてしまった(笑)
でもなんか…うーん、よくわかんないけど面白かった。上手く言い表せないなぁー

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

 が,その彼を徹底的に打ちのめしたのは,やがて見えてきた商店街の看板だった。まず酒屋の看板が目に入った。つづいてスーパー・マーケットの切り文字,黒枠のついた葬儀社の看板。ぜんぶ鏡文字だった。酒屋の前に積んであるビールのケースの字もマークも,中にならんでいる日本酒のびんの字も,何もかも,左右反対だった...続きを読む
スーパーの前に,トラックが停まっていた。車の右側を店に寄せて荷降ろしをしているのだが,その左側をライトバンがすれ違って行った。右側通行なのである。
 つまり,いま自分が見ている光景は,左右がぜんぶ入れ違ってしまっている。朝比奈家だけでなく,この世界全体が,左ききの世界なのだ。それでなければ,自分の目の神経が,急に左右反対になってしまったのだろうか……。
(本文p.50)

※ひとこと※
いきなり鏡の国に行ったら,そりゃ驚くでしょうね。でもまあ,昔と違って今は左利きだからといって差別はされないでしょうけど。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

短編集だが、300ページ弱、という短篇としては長い(しかし質的には短篇と言える)『鏡の国のアリス』が大半を占めている。

その『鏡の国のアリス』。
最後の1行によるメタ小説的な仕掛けに膝を打つ。
作者は何よりこれをやりたかったのか?
そのための『鏡の国のアリス』(夢を見たのはアリスか赤の王様か)だっ...続きを読むたのか?
そして、この世界はどちらの世界なのか…?
この1行で知的な満足感と若干の不安感が読後に残る。

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