あらすじ
西暦2030年。失脚していた二条憲政が企てた「まほろば」のクーデターは失敗に終わる。大混乱の中、脱出した狂四郎は必死になって志乃(ユリカ)を探す。志乃も狂四郎に見つけてほしくて飛行場へ。やがて、狂四郎と志乃とバベンスキーを乗せて、機は飛び立った…。
...続きを読む
これほど人に勧めにくい名作があるだろうか。なぜなら、とにかく品がないのだ。セックスシーンが終わったと思ったら下ネタ、下ネタが終わったらセックスシーン、セックスシーン中に下ネタ…という具合に。だが、本作はそんなおふざけもかき消されるほどディストピアな世界観だ。第三次世界大戦が終わり、優生思想に支配された日本では、特権階級以外は男女が隔絶され、奴隷のように働かされていた。そんな世界では、バーチャル上でしかセックスができなかった! 主人公の狂四郎はバーチャルの相手・志乃に本気で惚れてしまう。なんと志乃はバーチャルキャラクターではなく、実在した。それを知った狂四郎は彼女に会おうとするが……。
一見、お下劣SFマンガだと思われてしまうが、優生思想の脆さや権威主義の過ちなど、人間の愚かさに切り込んだ作品だ。特に、12~15巻のアルカディア編は人間集団の残虐さがありありと描かれている。ここまで骨太なストーリーと下ネタを一つにまとめあげるのは、さすが徳弘正也先生としか言いようがない。余談だが、『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生は徳弘先生のもとでアシスタントをしていた。尾田先生のどんな場面でもギャグを繰り出すところは、徳弘先生の影響を感じる。
感情タグBEST3
狂四郎2030
人間の優しさと強かさと汚さを、これでもかという程見せつけられる作品だった。とんでもない傑作だと思う。この本に出会えて良かったです。
名作!感動の巨篇
徳弘正也さんはジャングルの王者ターちゃんから、心温まる優しさを根底にあるギャグとエロとシリアスの絶妙なバランスが素晴らしい漫画家だなと思っていた。
本作もものすごいストーリーテラーで、続きが予測できないハラハラな中にも緩急の見事さで、止まらない。
そしてやはり心優しさが根底にあり、そこが1番好きだ。
ラストがハッピーエンドで本当に良かった!
大団円?
一応はハッピーエンドだが、この作品らしくギリギリまで志乃は酷い目にあいしんどい。あっさり終結してしまった気がするが、最後に作者の後書きを読んで納得はできた。下品さ満載の作品だが、人間の強さや弱さなどの描写に優れた良い作品だった。