あらすじ
西暦2030年。第三次世界大戦が終結して5年後の日本だ。核ミサイルによる戦争は、80%に及ぶ地球上の人間を消滅させていた。生き伸びた狂四郎は、空を警護するヘリ巡査になっていた。そんなある日、科学者の脳を移植された言葉を話す犬・バベンスキーと出会う。
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これほど人に勧めにくい名作があるだろうか。なぜなら、とにかく品がないのだ。セックスシーンが終わったと思ったら下ネタ、下ネタが終わったらセックスシーン、セックスシーン中に下ネタ…という具合に。だが、本作はそんなおふざけもかき消されるほどディストピアな世界観だ。第三次世界大戦が終わり、優生思想に支配された日本では、特権階級以外は男女が隔絶され、奴隷のように働かされていた。そんな世界では、バーチャル上でしかセックスができなかった! 主人公の狂四郎はバーチャルの相手・志乃に本気で惚れてしまう。なんと志乃はバーチャルキャラクターではなく、実在した。それを知った狂四郎は彼女に会おうとするが……。
一見、お下劣SFマンガだと思われてしまうが、優生思想の脆さや権威主義の過ちなど、人間の愚かさに切り込んだ作品だ。特に、12~15巻のアルカディア編は人間集団の残虐さがありありと描かれている。ここまで骨太なストーリーと下ネタを一つにまとめあげるのは、さすが徳弘正也先生としか言いようがない。余談だが、『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生は徳弘先生のもとでアシスタントをしていた。尾田先生のどんな場面でもギャグを繰り出すところは、徳弘先生の影響を感じる。
感情タグBEST3
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いい主人公ですね
内容はシリアスで、気持ちのいい展開はあまり無い・・・ですが、ギャグと下ネタで上手いこと緩和され最後まで読めました。
人間の営みが制限された世界で、どんな困難にあっても前に進む主人公とヒロインがとても素敵でした。
キャラの表情と間もこれまた絶妙で、一緒に気まずくなって汗かいたり、テレたり、泣いたり・・・指を上にあげてツッコミを入れたりと、落ち着いては読めない!
ラストはあっけないと至る所で目に入りましたが、これ以上何を求めようか・・・!!彼女の前で、スーパーダーリン爆発させて超気持ちよかったな~!!お友達もヨロシクやっていけてるので、狂四郎ならユリカを幸福にできる!(というか3人?いれば百人力ですね!)と、今までの戦いから断言できるので、何も心配はいらない・・・けど、二人がくっつくのを待ちわびていたので、少し生活を覗きたかったな・・・・・・結局さみしいんかい!
リアルな描写が深い
有名な【カレーのシーン】が気になって購入しました。確かにこれはあまり他人にお勧め出来ませんが、ものすごく深い作品です。
主人公の狂四郎は、決して純粋な正義感から行動を起こしているわけではなく、ただ【愛する人に会いたい】それだけなんです。
彼らを取り巻く環境は常時理不尽、エログロ。思わず目を背けたくなるシーンも多々ありますが、読み進めていく内に徳弘先生の描くリアルな人間描写や心理描写の凄さを痛感しました。
Posted by ブクログ
俺の中で徳弘正也は「シェイプアップ乱」「ジャングルの王者ターちゃん」の作者、というイメージで、ちょっとエッチでギャグ漫画なんだけどたまにほろっとさせられる、そんな作品を描いているというイメージだった。
で、この作品は青年誌に飛び出すことによりエッチの度合いを高めて、バイオレンスの要素を加え、不謹慎さをプラスした逆と、相変わらずたまにほろっと、させられる作品に仕上げた訳だ。
主人公の狂四郎とヒロインのユリカは、近未来の敗退した世界に生きる。バーチャルの世界で夫婦となるけれど現実に出会うことは不可能… しかし主人公は希望を捨てず、現実世界でユリカの元に向かう…
まぁストーリーとしてはシンプルっちゃシンプルだけど、ギャグとシリアスの絶妙な表現がこの人は本当に上手いなぁと思う。久しぶりにマンガを読んで声を出して笑った。中にアイボ入ってんだよてw つかアイボしゃべんねぇしwww
まぁ面白かった。
匿名
それでも純粋なもの
残酷な近代史の狂気がこの作品のベースです。M型遺伝子排除はナチスドイツの優生思想、ホロコースト。集団農場は共産主義下のソビエト、中国そのもの。国民を狂気に扇動する独裁者はヒットラー、スターリンを彷彿とさせます。ちなみにバーチャルセックスは映画マトリックスからでしょう。中身も虐殺とレイプに溢れてとても希望なんてありません。こんな殺伐とした物語も作者お得意の下ネタギャグが不思議と中和してくれます、逆にこのギャグが無ければ悲惨で読めたものでは無いです。こんな殺伐な狂気の中で、それでも純粋な何かを作者は描いてくれました。主人公の狂四郎は正義がいかに無意味かを自問自答し、ただユイカに会いたがため狂気に自ら染まります。山犬の赤ん坊を日本刀で串刺しにして敵を煽るあたりは象徴的なシーンでした。一方、ユイカも全編を通じて上官、権力者の慰みもの、性欲の捌け口されます。兵隊にレイプされた後でも「負けるるものか」と叫び続けます。こんな救いようない状況が全編続き、二人は出会うことのみを目標に生き抜きます。好き嫌いは分かれる作品ですが作者が表現したことは意味がありました。