あらすじ
◆介護離職、非正規スパイラル、引きこもり、ワーキングプア……他人ごとではない中年のリアルな危機!
◆巻頭対談:雨宮処凛氏×萱野稔人氏
『「生きづらさ」について』から8年、「生きづらさ」はどう変わったか
◆「ロスジェネ世代」はどこに行ったのか?
団塊ジュニア世代(71年~74年生まれを中心に前後数年の間に生まれた世代)は、
就職氷河期と重なり、「ロスジェネ」と呼ばれたが、彼らは今や40歳を超える中年となった。
「中年フリーター:氷河期の非正社員ら、歯止めかからず273万人に」というニュースが流れたが、
まさに彼らが非正規労働を続けざるを得ず、新たな問題となっている。
◆人は、どのようにして社会のレールから転落するのか。
また、這い上がるためのスキルとは、どのようなものなのか
◆いまは社会に関わりを持てている“働き盛りの”中年世代であっても、
突然、転落するかもしれないリスクは誰もが持っている。
それどころか、真面目で、他人の痛みを理解できる優しい人ほど“社会のレール”から外れやすく、
抜けられなくなることが多い。
1日に10時間以上働いても、月に10万円余りにしかならない実態にあえいでいる働き盛りの世代も多い。
職場で苦しみ孤立する人がいても、かつての会社が家族のように守ってくれた終身雇用の時代と違い、
激しい商品開発競争の中で、上司も同僚も自分のノルマに追われる。
職場で我慢していても支援などの相談窓口へ行っても、気合論や精神論ばかり説かれて、
「しんどい」などと弱音を見せると、精神科への受診を勧められる。
若年者や高齢者と違って、働き盛りとみなされる中高年世代には、
セーフティーネットがほとんど用意されていないことも、
こうした“地獄”からいつまでも抜けられなくなる要因にもなっている。
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Posted by ブクログ
最近よく目にする「下流」。いまや老人ではなく中年も入る。
私はいわゆる就職氷河期世代なのだが、当時は友達もなんだかんだと就職していて(地方の公立大学、文系)、実感としてそんなに氷河期だった覚えはないのだが、当時就職した人たちはだいたい5年の間に職を変えている。派遣で就職してうから試験受けて公務員に移行した子もいた。みんな留学したりと方向性を変えて、25年経った今、みんなそれなりに生活はしているが、50歳ともなると子供がいたら学費、独り身なら仕事できなくなったらどうしようなどという不安が重くのしかかってくるのである。自分の子供たちが成功できるように地ならしをしてあげるような余力は私にあるんだろうか・・・と思うが、実際、ないです。
そんな不安を抱きつつ、こんな本を読んだら、正直、深刻すぎて気が塞ぐ。「転落」なんて、たとえば事業に失敗するとか薬に手を出して依存症になるとか大事故に合うとか、ドラマで使うことばじゃないか。それがいまや普通に生きてる普通の人に適用される「転落」。真面目に生きてればなんとかなる、ということはない。
筆者ひとりの文筆家赤木さんは、人生を川の流れに例えて、そこには水の取り入れ口があるという。時代によって水の取り入れ口が広くなる時と狭くなる時があり、60年代の高度成長期は就職が容易だった時、つまり取り入れ口が広かった時、就職氷河期は狭くなった時だった、という指摘をしており、全くその通りだなと思った。取り入れ口は歴史的・経済的な状況によって決定されるので、私たちには選択権なんてない。努力しても取り入れ口に吸い込まれないことがある。そして、流れてしまったらもう戻ることができない。あとになってから、「自己責任だよね」と言うのは残酷なことである。
最近は人手不足なので仕事自体はできるのであろうが、AIの登場などで労働環境が激変する可能性もあり、仕事があってもそれがいつまで続くかわからないという不安は大きいと思う。
世界的にも社会の不安定さが増しており、日本では日本人ファーストを掲げる政党が躍進したりして、少ないパイを取られたくない、という気持ちがとくに中流階級に広がっているようだ(ヨーロッパも同じ)。みんな下流には落ちたくないのだ。これが排他主義の源泉になると思う。そして、排他主義が跋扈するといいことはない。