【感想・ネタバレ】淡島百景 5のレビュー

舞台女優を夢見る少女たちが集う歌劇学校合宿所を舞台に、
少女たちと、そしてかつて少女だった女たちの
ヒリヒリするような感情のもつれが
あくまで静かな筆致で描かれます。
美しい歌声も華麗な衣装も作中にはあまり登場しません。
登場人物はみな、完ぺきとは程遠く、
無邪気に他人を傷つけてしまいますが、
その姿はとてもリアルです。
分かりやすいキャラ設定ではなく、
その無邪気さに細やかな変化をつけることで
読者はそれぞれの登場人物を認識していきます。
誰かを傷つけた取り返しのつかない過去と向き合い、
自分なりに償う方法を現在進行形で考え続ける先生の姿には
特に圧倒されます。
名作『青い花』とのリンクも楽しめますので、
気になった方は『青い花』もお手に取ってみてくださいね。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

それでも淡島に未来を思いたかった。この言葉がとても重い。

誰かが選ばれて、誰かは選ばれない世界で、憎しみを持たずに、それを表現せずにいられる人なんていないだろう。誰だって後ろめたいところがある。でも勝手に後ろ指をさし、気持ちをお察しして語る。淡島じゃなくてもこの感情を誰もが知っている。多かれ少なかれ、誰かを恨み、憎み、排除しようとしたことはあるだろう。新約聖書に、誰も罪を犯したことのない者が石を投げなさい、とイエス様が言ったら、誰も石を投げなかった、という話がある。だから語られる物語にセンセーショナルな意味を見出そうとしたり、語ろうとしたりする。石を投げようとしてしまう。例の件でもそうであるように。

「それでも」なのだ。きれいなことだけの世界じゃないことを知っていて、絶対に許せないことがあったとしても、それを内包してなお美しさを見せようとする世界を観ている。そんな自分も傍観者で共犯者であり、「それでも」そこに光を見ようとしている。きっと何度も読み返すし、ずっと考え続ける。噛みしめたい作品である。

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2024年05月19日

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