あらすじ
惑星ソラリス――この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。彼らにいったい何が? ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく……。人間以外の理性との接触は可能か?――知の巨人が世界に問いかけたSF史上に残る名作。レム研究の第一人者によるポーランド語原典からの完全翻訳版
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Posted by ブクログ
1.理系っぽい解決プロセス
問題に対して観察、分析、先行研究を確認して、解決策を考えるのは理系っぽくて面白かった。自分が正常かどうかを確認するために天体物理学の計算をするなんて考えられない。研究のためにどんな犠牲も厭わない覚悟は素晴らしい。(ただ文献調査パート長すぎ...)
2.ミステリっぽい空気感
なにが起こるのかわからない不穏な空気感がミステリっぽかった。会話シーンもどこか探り合いを行っているようで、衝突しているところもあって、なにか起きそうな緊張感が常に伝わった。先が気になってどんどん読み進めてしまった。
3.未知の存在とのコンタクト
意図があるのかないのかすら読めない未知の存在とのコンタクトにおいては、相手を理解することが可能なのかすらわからない。とは言っても人間とのコンタクトにおいても相手を十分に理解できているだろうか。相手がこちらに対して明確な興味を持っている接してくれるならこちらも理解するために頑張りたい。
4.細かい情景描写
海の様子を描写した場面がかなり多い。登場人物の状態の描写も細かかった。これは主人公が細かく観察しているってことなのだろうか。状況や心理のメタファーとして使っているようにも感じた。
Posted by ブクログ
学者たちがソラリスで暮らしながら毎日研究しているのに、それでもソラリスの生物についてほとんど何ひとつ解明できず、人生を捧げていても徒労に終わっている様子には胸が痛んだ。
地球外の生命体というとヒトに近い姿で想像してしまいがちだけれど、それが液体状で海のように惑星を覆っているというのが怖くて興味深かった。自分たちの理解できる範囲を超えた存在にはやはり恐怖をおぼえる。
脳から取り出された思い出の人物が意思を持っていることが悲劇だったが、ソラリスの海にはなんの意図もなさそうなところが私は良かったと思った。理解し合うにはすべてが違いすぎていて、お互いに一方通行のような実験を繰り返している。続けていればいつかは通じるのかもしれないし、永遠に共有できないのかもしれない。地球ではすべてを支配しているように振る舞う人間の、驕りに気付かされる。
Posted by ブクログ
人間とは異なる理で生きる存在との意思疎通を可能だと考えることの浅ましさを見せつけられた感覚。最後までソレの特徴はあくまで人間側からの視点に過ぎず、積み上げた研究を無視する様にソレが悠然と存在し続ける絶望感
最高
なんとなくメッセージと対極をなす様な感じ
未知との接触
一部ご紹介します。
・「われわれは宇宙に飛び立つとき、どんなことに対しても覚悟ができている。
孤独、戦闘、殉教、死。口に出しては言わないが、内心、自分のことを英雄だ、などと考えることがある。
ところがそれが嘘なのだ。結局、覚悟なんて単なるポーズにすぎなかったことを思い知らされる。
われわれは宇宙を征服したいわけではない。ただ、宇宙の果てまで自分たちの知っている地球を押し広げたいだけなんだ。
われわれは人間的で気高いから、宇宙に住む他の種族を征服しようなどと思わない。
ただ、自分たちが貴重と見なすものを彼らに伝え、その代わりに彼らの遺産を受け継ぎたいだけだ。
人間は自分のことを、聖なる接触(コンタクト)の騎士だと考えている。
ところがこれが、第二の嘘だ。人間は自分たち以外の誰も求めていない。
われわれに他の世界なんて必要ない。われわれに必要なのは自分を写す鏡だけだ。
他の世界なんてどうしたらいいのかわからない。いまある自分たちの世界だけで十分だ。
けれども、その一方で、それだけじゃ息が詰まってしまうとも感じている。
そこで、自分たちの理想化された姿を見つけるか、あるいは過去の似姿を探そうとするのさ。
ところが実際には、われわれの世界の向こう側には、何やら人間が受けいれられないもの、
人間がそれから身を守らねばならないようなものがある。
結局のところ、われわれが地球から運んできたのは、美しいものだけじゃないんだ。
ここに飛んできたわれわれは、実際にあるがままの人間に過ぎないのさ。
そして、宇宙の向こう側から真実が、人間が口に出さず、隠してきた真実が突き付けられたとき、
われわれはどうしても受け入れられないんだ。
これがわれわれが望んでいたもの、つまり異文明とのコンタクトさ。
いまやまさにそのコンタクトを体験しているんだ!
その結果、まるで顕微鏡で見るように拡大されてしまったんだ、俺たち自身の怪物のような醜さが!」
Posted by ブクログ
読み終わりました。
巨大な海が一つの生命体であるという入りやすいベースから、明らかに狂っていく一人称視点はどこかラヴクラフトの小説を彷彿とさせます。
作中で何度も惑星ソラリスに対する著者の解釈が緻密に描かれており、まるで直ぐ近くに海が迫り来ているかのような臨場感がありました。
物語の後半では、超常現象を受け入れた主人公の交流描写が進みます。ソラリスの生み出す数々の現象が果たして人類にとって無意味なものか、その先に何があるのか物語の中では明かされません。
ただひたすらに広大な、人々とコミュニケーションを行っているかのように思える無意味なソラリスの”現象”たちが、読後の虚無感を増幅させました。
Posted by ブクログ
9/16-25難しかった。作り出されたハリーが自我を持って自殺を試みるのが不思議だった。海とは結局なんなのだろう。時間が経ったら読み返したいけど、たぶんもう読まないかも。
Posted by ブクログ
「宇宙人は人間とは違った生き物であるが、人間が理解できるような体の構造や意思をもっている。」と私たちは知らぬ間に思い込みがちだけど、それって絶対おかしいよなと思ったことがある人にとっては、ある意味とても納得感のあるファーストコンタクトものだと思う。
私自身の感想としては、この物語は「極限状態でのラブロマンス」と言うよりは「欠陥のある神の無邪気な遊びに翻弄される人間たち」というイメージが近かった。
森見登美彦先生の『ペンギン・ハイウェイ』が本当に大好きで、『ソラリス』から影響を受けていると知って読もうと思ったのはいいけど、ハードすぎて読み終わるまでに半年ぐらいかかってしまった。
途中までは、気持ち悪さとこの後どうなるのだろうというハラハラ感ですいすい読み進められたけど、後半は「ソラリス学」の解説がかなり重たくて失速してしまった。でもこの重厚な「ソラリス学」の記述が、よりソラリスの人知を超えた気持ち悪さを演出している部分でもあるので、一概に悪い評価を付けられないとも思う。