あらすじ
「あの人たちが野球少年を殺してる!」少女アブラは超能力を介し、陰惨な殺人事件を「目撃」する。それは、子どもの“かがやき”を食らって生きる〈真結族〉による犯行の現場だった。その魔の手はやがてアブラへと迫る。助けを求められたダンは、彼らとの闘いを決意。そして次なる悪夢へと導かれる……。解説・有栖川有栖
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Posted by ブクログ
ダニーとアブラの出会いと、真結族との戦いが幕を開ける下巻。前作、シャイニングを『エイリアン』とするなら本作はさしずめアクション要素マシマシの『エイリアン2』といった塩梅であり、幽霊屋敷という閉鎖空間での恐怖が売りの前作と違い、本作は超能力バトルものでジャンルが全然違う。
この手の異形のものたちとの戦いにしては珍しく、アブラの両親も巻き込まれる形になったのはかなり斬新で、何の繋がりもない少女と中年の男という取り合わせのまずさは日本ならともかくアメリカではかなり厳しいというのもあってか、そうした見られ方をする危険性は示唆しつつも、そのあたりのことで胃がキリキリするような展開にならなかったことにはホッとしてしまった。両親の合意を取り付けるのは展開的にやや強引だなと思いつつも、そのきっかけの一つとして中盤でルーシーがダニーの腹違いの妹だと発覚したことにはかなり驚かされたし、謎に満ちた「かがやき」の能力が遺伝だったというのに説明がついたのは上手いと思う。無関係に思えた主人公二人が血縁関係にあったというのは一見するとぶっ飛んだ展開に思えつつも、前作の『シャイニング』と同じ「家族」の物語として一貫性が生まれたし、この突飛なアイディアでそうした繋がりを生み出したことに感動してしまった。
真結族は当初のミステリアスな感じに反してかなり弱々しく、麻疹で全滅の危機になっているのは悪役としてはかなり格落ち感があるが、身分証明や不動産登記を済ませて社会にガッチリと食い込んでる完全無欠に近い存在が、つまらない病で死ぬというのはH・G・ウェルズの宇宙戦争めいてて面白いなと思った。アイデンティティが完璧でも、医療からの隔絶が死を招くのは実にアメリカらしいとも思うし、銃を使わないジプシーというのも反アメリカ的な要素もあって興味深い。
主人公の顔の蝿という伏線から、死に瀕した曽祖母を身体に宿して一気に毒ガス散布のように使うぶっ飛んだ解決法も中々で、最後に息子を守って死んだ前作のジャック・トランスのことを思うと、本作のダンも同じようになるんじゃないかという恐怖があり、そういう意味では後半のノンストップ感は素晴らしかったと思う。そうして戦いは幕を下ろし、主人公が抱え続けた「キャンニィ」と言いながらコカインを舐める幼児というあまりにも生々しいイメージ。母子家庭から金を取ってしまったという後悔に苛まれているのを皆の前で告白したのも勇気があってとても良かった。主人公は「善」の人間であるからこそずっと気にするわけだし、ここに決着をつけたのはホッとしてしまった。そしてハッピーエンドから再びドクタースリープは末期の患者を眠りにつかせるという落ち着いた終わり方も非常に良い。名作の続編は色々とハードルは高かっただろうが、本作はその期待に違わない名作だった。個人的には前作よりも今作のほうが好みである。
Posted by ブクログ
満足度高いです。読んでよかった。先に映画を観ているのでそこで感じたもやもやは結構晴れました。
…どうしてこの方向で映画化しなかったんだろう、という新たなもやもやは生まれたけれど。
ダンとアブラの絆が、〈かがやき〉持ちだけでなく、実は血縁関係があってふたりともジャック・トランスと同じ癇癪持ちなのはかなり重要でした。アブラにとってはダンは導きの人だけれど、ダンにとってのアブラは救いだなぁ。きっと。
キューブリック版シャイニングしか観ていない知人との会話で「オーバールックホテルは焼失している」が食い違ってたのですが、そうかこれ小説版だけの展開だったのかと思いました。この作品では跡地をキャンプ地として利用している。でも、良くない土地は良くないものを引き寄せる、というところはちゃんとありました。
ダン側の陣営が一人も死なないのも好きです。
ローズとのラストバトルでダンを救ってくれたのが誰かわかったときに込み上げるものがありました。悪霊になってなかったんだね……
ドクター・スリープ。永遠の眠りに就くときに最期まで寄り添ってくれるドクター。
AAのあれこれも良かった。
スティーヴン・キング、あとがきで「シャイニング」と「ドクター・スリープ」を書いたのは同じ作家ではない、って書かれていた。「シャイニング」時はジャックやダニーと同じくアルコール依存症だったのかな?
読者の「少年があのあとどうなったかご存知ですか?」が書いたきっかけかぁ、素敵。
続編は蛇足に感じるものも多いけれど、この作品は続きを読めてよかったです。
“トランス一家の正史”……キングの怒りは収まりそうにない。
「グリーン・マイル」のジョン・コーフィも〈かがやき〉持ちだったんだなと思いました。
キングの世界は繋がっている。まぁ全てなんだかんだキャッスルロック。
Posted by ブクログ
2020.7.9
やっと読めた〜!!
映画と流れはほぼ同じだけど全くの別物、別作品だなと思った。
映画ではアクションシーンやホテルに戻って闘うシーンが楽しかったけど、原作ではそもそもホテルがもうないからホテル跡地のキャンプ場で闘うんだけど、そこはやっぱちょっと物足りなかったな。
頭の中のマッシー夫人は消滅してるし、解放させたホレスダーウェントも大した活躍を見せず。。
唯一楽しかったのは、映画だと秒で死ぬアブラの父親とビリーと、一瞬しか出てこないジョンドルトン医師がめちゃくちゃ活躍すること。
アブラの父親とジョンドルトン医師とダンの3人で真結族を殺しまくるシーンはめちゃくちゃ楽しかった。
ていうか映画で、なんでダンとアブラが実は血縁者だったっていうとんでもなく重要な設定をなくしてしまったんだろう…
あのジャックトランスの孫なんだぞアブラは……
だからこそダンとアブラの絆は強いのに
まあ思ったのは、映画版のドクタースリープは、うまいこと映画シャイニングと原作ドクタースリープを繋ぎ合わせてる。すごい。原作ファンも映画シャイニングファンも楽しめる仕様になってるなということ。
もう一度映画観たくなったな。色々考察できるし読み応えのある作品でした…( ˘ω˘ )
読み終わるのがすごく勿体なかった。
多分もう一度シャイニングを読んでから、もう一度読みます。
やっぱり映画も原作も、大好きな作品。
Posted by ブクログ
映画を全て見て、原作へ。
誰も死んでない、えっ誰も死んでないんだけど
なんで映画殺したの???キューブリックへのリスペクト???そんなリスペクトはいらない!!!(でもあのダニートランスはホテルを燃やす誘導が出来なかったダニートランスだもんな)
敵の弱さ、見通しの甘さは下巻になっても健在。それでも、物語を読み進めてしまう。実際、ローズにとって自分と同じ力、またはそれ以上の力を持つ者なんて何十年?生きてても出会わなかったわけだし、彼ら全体で言うならローズ以上に何百年も生きて続いてきた人々がいたわけで…今まで無かったのだからこれからも無いって慢心はあることは違和感ないわな…いやでも病気は…どうなんだ?でも最後癌を持ってきたことはドキドキした。
そして異母兄弟ね!!!映画でそんなこと1mmも触れなかったからびっくりしすぎてめっちゃ声出たよ!!!
終わりが良すぎて、映画版なんであんなに死んでしまったの。そしてなんでお母さんなの(キューブリックの続編でもあるから)って気持ちが強いから映画見た人はみんなちゃんと原作読んで…。
ダニートランス、彼の生涯がこの先も幸せでありますように。