あらすじ
自ら選んだ人生の結末が目の前に迫ったとき、忘れかけていた生の実感と死の恐怖が、人々を襲う。〈生存制限法〉により、百年目の死に向き合うことになった日本人の選択と覚悟の結末は――!?
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Posted by ブクログ
SFのはずなのに身に迫る現実感がすごい。
上巻での後手後手に回りまくる日本の姿とか、存在しない事象を巡る話なのに説得力がありすぎる。
ずっとみんながみんな自分だけの立場から身勝手なことばかり言っていて、まあそれが人間らしいと思ったしその集合体が国であり代表が政府だと思って読んでいたけど最後の最後に人のための決断をした国民たちの流れが希望的で素敵だった。
個人的には牛島大統領と遊佐首相の確かに存在した絆がわかった時すごく胸熱だった。
Posted by ブクログ
不老化の手段を手に入れた日本共和国が滅び、再建するまでの話。
ぶっ飛んだ設定だけど、ディティールがしっかりしていて世界観に入り込めた。
センチュリオンの北沢大佐が大統領司令ゼロ号を発動した時はアツすぎて鳥肌が止まらなかった。
ケンの最後の演説が、現代を生きる自分にグッサグサに刺さって…
安全圏から文句を言うだけの人間でいいのか?と深いところまで問いかけられたようだった。
Posted by ブクログ
⚫︎感想
最後までめちゃくちゃ楽しませてもらいました!
登場人物同士の関係、駆け引き、国民の不安、パニック、生きることへの尊厳、本音と建前、美醜…全てが詰まった人間ドラマ。ラストも好み。綺麗にまとまってカタルシス感あり。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
不老化処置を受けた国民は処置後百年を以て死ななければならない―円滑な世代交代を目論んだ「百年法」を拒否する者が続出。「死の強制」から逃れる者や、不老化処置をあえて受けず、人間らしく人生を全うする人々は、独自のコミュニティを形成し活路を見いだす。しかし、それを焼き払うかのように、政府の追っ手が非情に迫る…世間が救世主を求める中、少しずつ歪み出す世界に、国民が下した日本の未来は!?驚愕の結末!
Posted by ブクログ
不老処置を受けた人間は百年後死ななくてはならない。
命の期限が迫った政治家の策略、翻弄される民間人、生きるために逃れた人々が集う拒否者ムラ…。それぞれにドラマがあり、何気なく消費するだけの日々を送っている私にはとても刺激的な作品でした。
Posted by ブクログ
多くの人が想像したことがあるだろう不老が叶う世界の話
不死ではないというのがミソで、とても面白かった。
人間は終わりがあるからこそ人間らしく生きられるのかもしれない。
私は人が他人を信頼して何かを託すシチュエーションが大好きなので、センチュリオンの指揮権が移るシーンが本当に最高だった。
病気の話もラストで急に出されるんじゃなくて、ちょこちょこ物語に関わってきてたから、予想はできたけど良いラストだと思った。
一度は間違えた国民も、今度は間違えなくてよかったね。
Posted by ブクログ
不老技術が開発され、それを受けたものは100年しか生きられないという百年法が定められた架空の日本の話。「蘭子」「官僚・遊佐」「警察・戸毛」「蘭子の息子・ケン」「ドクター加藤」が主な語り部だけど、実質的主人公は遊佐とケン。ちょっと登場人物多くて途中混乱してしまったけど、随所に謎が散りばめられていて続きが気になってグイグイ読むことが出来た。
著者の小説は初めて読んだけれど、名詞や動詞ぶつ切りの文体が多く、それがかえって淡々とした印象で物語に合っていた。
百年法に対する人々の反応とかは、とてもありそうな感じ(国民投票で反対されるとか、拒否者村ができるとか)だけど、不老技術が開発されたとしてほとんどの人が20代でそれを受けるとか、家族関係が希薄になるとかはちょっと非現実的かなと思う。たぶん、もっと色んな選択をする人が現れるだろうなと感じた。
Posted by ブクログ
ラストは鳥肌ものだった。
面白かったです。
結構信じられない展開が続くけど、いざとなったら人間どうなるかわからんな…と色々考えさせられた。
面白いです。
こういうお話好き。
Posted by ブクログ
やはりというか、その道を選ぶしかないよな。
けれど国民投票で未来ある道を選んでくれて良かった。この百年法が続く限り、何度も何度も同じ議論を繰り返して行くのだろうな。この物語はそれにSMOCで決着をつけたけれど。
上巻の蘭子がHAVIを受けて若い見た目のまま、中身だけは歳を重ね感性は衰えて日々生きていくことだけに費やしているのがすごく身に迫ったというか。
いつか死ぬ、いつかは分からないけれど、それでも死と老いからは逃れられない。そういう限りがある生命だからこそ、生きられるのかもしれない。
もし永遠に生きられるとして、周りもそうなら人間関係を良好なまま維持していくことは相当難しいんじゃないかな。感性が豊かな頃はそれでもやっていけるのだろうけど、感性が衰えてきた頃の変わらない顔ぶれ、変わらない生活、変わらない毎日。永遠に停滞した毎日を過ごすのは地獄のようだな、と。
不老不死(物語上は事故死はあるので不死ではない)は甘い響きだけれども、永遠の監獄でもあるね。
Posted by ブクログ
☆3.8
上下巻合わせた感想
SF小説。
不老化の技術が確立した社会を、政治・人々の営み・医学などの側面から緻密に描いている。
かなりよく考えられており読み応えもある。ただ、緻密で重厚というよりは軽快さが勝る印象。読み進めていくうちに、仁科ケンが独裁者になる展開やガイの正体など予想できてしまったことが原因かも。展開が読めたほかに、個人的には立花恵がひどい扱いを受けた内容を曖昧にせず掘り下げた方が良かった気がした。
ただ、蘭子とケンの別れのシーンは感動した。このときはここまでケンが成長するとは思わなかった。
終章のケンの「共和国民に告ぐ」という声明内容もよかった。国造りの主役は国民1人1人なのだ。不完全な民主主義だが、ただ政治を冷笑的に見て諦めるのではなく、国民がその足で立ち上がる、自ら社会を切り拓く努力をして初めて理想の社会・民主主義は創られるといくことを最後に作者は言いたかったのだろう。
これは現代社会にも言える普遍的なものだ。