【感想・ネタバレ】新三河物語(下)のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年09月22日

上田攻め、大久保忠世と信康の側近だった平岩親吉、鳥居元忠の対立。酒井忠次の隠棲。家康が心に秘めた信康の死に対する気持ち。大久保忠隣の失脚。大久保彦左衛門の結婚。『三河物語』の執筆。

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Posted by ブクログ 2024年01月25日

非常に大作の本書だが、後半に行くほど内容に引き込まれてくる。
最終巻の本書は小諸城を中心とした真田家との闘いから一気に大坂の陣戦後に至る。関が原や大坂の陣の描写があっさりしているのも特徴的。
なにしろ主人公の平助の人生に武士の清々しさが象徴的に描かれていた。
内容の濃い一書だと感じた。

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Posted by ブクログ 2023年03月05日

天正壬午の乱から描かれる。第一次上田合戦は徳川の失態である。真田昌幸は徳川家康に服従したが、家康は北条氏と勝手に和議を結び、真田が支配している上野国沼田を北条に帰すように取り決めてしまった。昌幸が家康の不誠実を怒ることは当然である。

これに対して、徳川には異なる視点がある。「昌幸に戦略の才があるの...続きを読むであれば、それを自領の保存にだけつかうのではなく、秀吉と戦って負けぬほどの実力をそなえた家康の計略を翼けて、家産を倍増するほうが利巧なのではないか」(74頁)。このような発想は一所懸命の武士を否定して、立身出世の役人根性を蔓延らせる。昌幸に感情移入する。

家康自身は岡崎、浜松、駿府、江戸と本拠を移している。三河武士のイメージと異なり、家康には本拠地へのこだわりは弱かっただろう。小田原征伐後の関東移封も豊臣秀吉の嫌がらせというよりもチャンスと前向きに考えたかもしれない。

第一次上田合戦は徳川が惨敗した。第二次上田合戦と共に家康が陣頭指揮しなかった戦争である。このような場合の徳川の兵は脆い。「家康が観ているところでは必死に戦い、家康の目のとどかないところでは惰傲である」(117頁)。織田信長は明智光秀や羽柴秀吉、柴田勝家ら有力家臣を方面軍司令官とし、自分が直接指揮しなくても戦争が進むようにした。それに比べると家康は個人で持っている。これは徳川家の伝統になった。戊辰戦争で当初兵力に勝った徳川が敗北したことも慶喜が陣頭指揮せずに恭順に徹したことが大きい。

家康は小牧長久手の合戦後も秀吉との再戦を覚悟していた。家康の戦略は縦深防御である。本拠地を上方から離れた駿府に移し、秀吉の軍勢を三河、遠江と侵攻させて疲弊させる。この戦略では岡崎城を守る石川数正が真っ先に秀吉の大軍とぶつかることになる。「岡崎城の石川数正は秀吉軍を停滞させるのが役目で、落城とともにかれは死ぬ」(133頁)。

ところが、数正は出奔して秀吉の臣下になる。人質時代から家康に仕え、重臣中の重臣であった数正の出奔の動機は謎に包まれている。徳川家中の徹底抗戦論を潰すために家康との阿吽の呼吸で動いたとする説があるほどである。しかし、単純に捨て石として切り捨てられることに反発した可能性がある。

数正の出奔によって徳川家中は動揺した。信濃に遠征している徳川家臣は故郷の岡崎の様子が気になり、一刻も早く本国に戻りたい。とはいえ、信濃を放棄する訳にはいかず、誰かに留守を頼みたい。信濃を守ることは上杉景勝や真田昌幸の攻撃に孤立無援で耐えなければならず、貧乏くじを引くことになる。
大久保忠世は「信濃に留まった者には知行をとらせる」と恩賞をちらつかせて、引き受け手を見つけようとした。しかし、引き受け手は出なかった。忠世は弟の彦左衛門に頼むが、拒否された。彦左衛門は以下のやり取りで引き受けることを了解した(149頁)。
「何の望みもなく、いのちを捨てて、ここにとどまってくれまいか」
「そうであれば、心得申した。知行にたずさわるのではあれば、なかなか覚悟におよばなかったが、いのちを捨てよ、と仰せであるのに、いやと申せません」

このやり取りは味がある。これは現代のビジネスにも該当する。貧乏くじを引かせるならば相手を使い潰すだけの覚悟を持って進めるものである。人は役割に基づいて仕事をしている。役割に反する仕事を押し付けられたならば反発する。組織が人にやらせたいことがあるならば、きちんと役割を定義することが筋である。

きちんと役割を定義することができない。しかし、誰かにやってもらいたい。それなのに使い潰すだけの覚悟もないという保身第一の役人体質の卑怯な人間は能力のありそうな人に押し付けて、これまでのスキルと能力を活用して頑張れと要求する。これは最低である。それを適材適所と良いことであるように考えるならば、役割(ロール)を理解していない。ロールベースならば適材適所ではなく、適所適材である。

点数稼ぎのヒラメ役人体質ならば押し付けられて喜ぶかもしれないが、役割を考える人間ならば、役割に反することを押し付けられて、その仕事が評価されても「馬鹿にするな」と言いたくなる。役割に反する仕事を押し付けなければならないならば、「仕事ができなくて当然だ」くらい言うものである。「担当外の仕事も果たした」と評価するならば、まるで本来の担当の仕事ができないから担当外の仕事をしているように聞こえられる。それは担当者を貶めるマイナス評価になる。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年09月14日

最終巻。大久保家の没落が描かれるが、その段は割とあっさりしている。上巻のころの、家臣のために身体を張る、さっそうとした家康と、この巻の冷徹な天下人としての家康。その変質は、愚直に忠義を貫き続けた大久保家の視点からみるととりわけ寂しく感じられた。

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Posted by ブクログ 2012年09月08日

大久保彦左衛門の三河物語からの徳川家康の物語。はじめの頃は家康の波瀾万丈と大久保家の活躍がメインであったが、最終巻のここでは既に家康は秀吉と並びNo2までとなっていく。だんだん戦が減ってきて活躍するのは武将である大久保家の人々から本多正信、土井利勝など知謀の人に移っていく。また家康も昔から支えてきた...続きを読む人たちよりこのような知略のものを重視する。ただ彦左衛門忠教の大久保家の家訓の黙って欲を欲せずの姿はすがすがしい。誰かが言ってましたが、やはり下巻からはなんか、第3者目の語り口になっていますね。話の内容が最後のところで、秀忠、家光まで彦左衛門の三河物語を読みに来るところで終わっているがちょっとほのぼの。

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Posted by ブクログ 2012年03月18日

戦国武将の息遣いがリアルに伝わって来る一冊。家康を支えた大久保家の倫理観に共感。戦国時代のストーリーも楽しみながら読めると同時に、人との関わり方も再考出来る。働く人が読んでおくべき一冊だと思った。

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Posted by ブクログ 2011年11月15日

大久保彦左衛門の三河物語完結編
淡々と物語が展開、真田親子との確執
家康の執念深さと老齢による妄執
本多親子の陰険な係わりと、大久保一族へのゆわれ無き処分
結構、面白く読めるが、やはり人物名には閉口した。
やはりもう年か
太助が実在していたとは驚きである

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Posted by ブクログ 2011年05月06日

終盤に差し掛かり、大久保一族には悲劇がおとずれる。
運が悪いとしかいいようがないが、それを大久保彦左衛門が救う。

意外だったのは、平岩親吉と鳥居元忠の評価。
嫡子・信康の死が与えた影響はかくも大きかったのか。

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Posted by ブクログ 2015年11月08日

歴史小説の第一人者が描く徳川家康に仕えた大久保一門の年代記。大久保彦左衛門の「三河物語」を下敷きにしているが、著者の眼差しは遥かに遠く、歴史とは何か、義とは何か、を問いかける。全編を通して透徹した語り口が印象的であった。

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Posted by ブクログ 2012年11月03日

家康は天下人に上り詰めていく。大久保一族と家康配下の武将たちとの争いが描かれている。
家康をずっと支えてきた大久保一族への仕打ちが非常に哀しい。信康を失った悲しみがあるのかもしれないが。

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Posted by ブクログ 2012年07月26日

松平徳川家の覇権への道における柱石であった大久保一門の物語。三河物語とは大久保忠教(平助、彦左衛門)が記した記録。宮城谷昌光氏の作品を始めて読みました。個人の精神世界を語るのは司馬遼太郎が上?時代群像としての風景描写は宮城谷さんか?本多、酒井、井伊、榊原、鳥居、土井 家康から秀忠、家光に渡る徳川家の...続きを読む腹心達の群像描写はリアル。長子信康が信長に切腹を命ぜられる経緯を巡り、酒井、大久保一門を晩年の家康が糾弾する。依田信蕃がかなり好意的に描写されてもいる。

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