あらすじ
ビル・ゲイツとウォーレン・バフェットがともに最高のビジネス書と絶賛した知られざる古典。フォード、GE、ゼロックスなどの経営者たち、ウォール街のブローカー、引退後のビジネスマンなどの10の物語を通して、彼らがその人生やビジネスにおいて「どこで間違えたのか(あるいは間違えなかったのか)」を明らかにする。
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Posted by ブクログ
本作は、『タイム』、『ニューヨーカー』でライターをつとめたジョン・ブルックス氏による、米国経済エッセイ集、のようなもの。
いわば戦後米国の経済博物誌、とでも言ったところ。
表紙の帯に『ウォーレン・バフェットからビル・ゲイツに渡され、20年間読み続けられた最高のビジネス書』とありますが、やや誇張である気がします。
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戦後米国1950’s-1960’sの経済ネタが太宗であることから、やや古臭いなあ、というのは第一印象。
その中でも今でも教訓となり得るものもあれば、今では考えられない・あり得ない、というものもあり、一種の昔話、「かってはこんなこともあったそうですよ」という物珍しさと共に読むので丁度良いののかもしれません。
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その中で特に面白く読んだのは、以下の三つです。
「第10章:営業秘密の変遷 ― ダンス・クッキー・宇宙服」
こちらはとある化学メーカーで宇宙服開発に従事していた男が、他社への転職を上司に告げると、営業秘密の持ちだし禁止を言い伝えられ、果ては訴えられるというもの。
書類で営業秘密を持ち出すのは当然アウトです。でも、その会社で得たノウハウ、あるいは転職者が体得したスキル、そうしたものも営業秘密になり得るかもしれない、と思いました。これが国を跨ぐ転職の場合(米→中・ソとかその逆とか)など、結構シャレにならない騒ぎになりかねないのだろうなあと思いました。
もちろん私には秘密になるような技術もノウハウもありませんが、勝手に想像して勝手に震えていた次第。
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「第5章:コミュニケーション不全 ― GEの哲学者たち」
こちらはGEによる談合のお話。
コンプラと営業目標は常にジレンマになるファクターだとは思います。その中で、営業トップが談合をしたことを「遠回しに」マネジメントに報告する。しかし、経営トップはその「遠回しな」方向をある時はダイレクトに、ある時は全く違った意味にとらえるという話。
今ならば経営者も連座して退任することが多そうですが、今回の場合は営業部門が罰され、経営陣は安泰だったという話。タイトルは言わば揶揄。
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「第2章:公正さの基準 ― テキサス・ガルフ・サルファー社インサイダー事件」
これは古きアメリカの資源企業のインサイダー取引の話。
じわじわと関連者が少しずつ株を買っているのが、微妙にコミカルでいじらしい。当時のブルームバーグだかロイターだかの証券ニュースはタイムラグがあったそうで、当該企業が鉱脈発見を記者発表した後に株を買った副社長か何だかが「未公開情報をもとに株を売買した」と嫌疑をかけられたのがちょっと気の毒。
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それ以外にも、大々的に新車開発に失敗した「第1章:伝説的な失敗 ― フォード車エドセルの場合」、或いは、仕手戦に戦いを挑んだスーパーマーケット経営者の記録「第1章:最後の買い占め ― メンフィスの英雄かく戦えり」などは面白かったです。
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ということで20世紀米国の経済事件簿、的なエッセイ集でした。
これを読んでも、企業とは、とか云々は語れませんが、ちょっとウンチクが増えた気にはなれました。
Posted by ブクログ
1960年代のアメリカの企業や証券市場での出来事を通じて人々がどのような行動をとったのかやその心理を書いた一冊。
GEやフォードといった有名企業で起こった経営の失敗や価格談合といった事柄について内容と人々の心理が書かれていて、時代背景が全くわからないところもあり、非常に難しい印象を全体的に感じましたが、フォード社や株主総会の話などは興味深く読みました。
日本企業とは全く異なることを全体的に感じると共に当時の時代背景を伺い知れることもできました。
半世紀以上前の物語ですが、リーマンショックなど今の時代とリンクするものも多くあり、人間の本質は変わらないということを本書を読んで感じました。
また、時間が経ってから読むと印象ががらりと変わるとも感じました。
Posted by ブクログ
1960年代前後のアメリカ経済の転機となるような出来事をまとめたエッセイ集。マーケティングの不祥事、株価大暴落、インサイダー取引等々現在にも繋がるテーマも多く、時代の進化の無さにも驚かされる。加えて、深い取材に基づいた事例をもとに執筆されているため、ドラマ性もありひとつの物語としてとても面白い。
しかしながら、扱うテーマに対する著者の見解や示唆が入っているわけではないのでそれを期待するとがっかりするかも。特にタイトルの邦訳がその誤解を助長していますね。
英題は「Business Adventures」らしいですが、なぜそれが「人と企業はどこで間違えるのか?」といった、あたかもエッセイ集ではないかのような訳になるのか理解に苦しむ。その意味で星をひとつ下げました。
内容自体は良著です。