あらすじ
美しい全盲のひとり娘烈。巡礼の途中で病死する母賀穂。相つぐ不幸を打ち消すがごとく若い嫁をもらう父意造。烈を育て上げ一途に意造を慕う叔母佐穂。蔵元田乃内家をおそう数々の悲運にもめげず、気丈に成長した烈はやがて恋を知り、女ながら蔵元を継ごうと決意する――。家族のそれぞれの愛の成就をうたい上げた感動の終章。
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匿名
上巻と同様、救いのない状況が次々と田の内家にふりかかってくる。
丈一郎は生まれて、健やかに育つが、事故がもとで亡くなってしまう。
希望は烈であり、蔵を引き継ぐ、と意造に決心を話すところから、事態は好転しだす。そして、最後は烈が蔵の男衆の涼太と結婚を決めるところで話は終わる。その後の話として、田の内家は烈の息子の代まで蔵を続け、繁栄していく。最後の最後は明るい終わり方で良かった。
女性目線の物語であり、短編集「楊梅の熟れる頃」より、繋がる話である。
この小説は新聞小説であったようだ。話の区切りがよくわからなく、盛り上げ方が細かい周期である点にその特徴をを見ることができる。
話の筋が家族の苦労話が多い点は、現代の「渡る世間は鬼ばかり」に受け継がれていくものなのであろう。
家族の問題の話は面白いが、救いとなる点が少なすぎて、けっこう読むのに我慢強さが必要だ。丈一郎が生まれて、平和な日がくると思うと、突然亡くなってしまうし、せきが夫とではない子供を身ごもり、どうなってしまうかと思うと、死産となる。筆者のさじ加減ひとつで、話がころころ変わる気がする。
もう少し、安定感のある話の流れにしてほしかった。