あらすじ
1錠飲めば1日分の記憶を飛ばすことができる薬、アイリウム。薬が効きはじめると、他人から見れば意識もあり普段通りの生活をしているように見えて、その間の記憶がまったくなくなってしまう。つまり、嫌な思いをする出来事の前に飲んでおけば、その事を思い出すことなく日常生活が送れるのだ。記憶を薬でコントロールできるようになった時、その人の生はどんな彩りになるのか…。
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Posted by ブクログ
飲んだあと、決まった時間だけの記憶を失うという薬「アイリウム」を巡る短編集。記憶の連続性は個人の自己同一性を支える重要な要素だが、それを意図的に断ち切れるとするならば、人はどんな「人生」を送るのか。人の人生とは何なのか。それを想像力豊かに描いた作品がこの「アイリウム」である。
明日の自分は、本当に今日の自分と同じ自分なのか。思わずそんな問いを自問自答したくなる傑作。
秀逸な設定をしゃぶり尽くす
オムニバス形式でアイリウムという薬で嫌な体験から逃げる人の話を複数展開。一つの話にするのではなく、いろんな登場人物が違う環境でどう振る舞うか描きたくなるくらい、設定が秀逸で無茶苦茶面白い。かまいたちのYouTubeでおすすめされていたので読んでみたが、期待以上に面白くて大満足。
技術と人の関係
記憶をとばせる薬があれば人はどう使うのか,また,期待した結果と違う場合に何が起きるのか? ある意味,SF の王道である,「ある技術が社会に,人間にどう影響するのか」の話で,その部分が面白かった。
数年前,PTSD に対する新薬を開発した科学者の1人が TedTalk で得意気に話をしていたが,その応用が戦争での PTSD であったことに,コメントでは批判があった。そもそもその場合は人為的な病気なのだから,病気を予防する方に力をさくべきではないのかというものである。
後に,戦争で心に傷を追った人を回復させてはまた従軍させた話,薬の開発スポンサーが武器製造会社という話がでてくるにつれ,人の命を金にかえている産業が浮かびあがり,個人的にはなんとも後味の悪いことになった。また,現実問題としてその新薬はアイリウムほど完全ではないため,直せない人も多数いた。あの科学者は本当に PTSD を直したかったかもしれない。しかし,その薬が,直せるんだったらどんどん病人を作ってもいいのでは,という方向に利用されていた。アイリウムの話にもそのような利用法があり,興味深い思考実験だと思う。
面白かった
この作者さんの前作の「サイコろまんちか」が面白かったので、
コチラの作品も読んでみました。
こちらもなかなか考えさせられるストーリーで面白かったです。
Posted by ブクログ
一定期間の記憶を飛ばせる薬物、アイリウム。
様々な人の視点で書かれるアイリウムのある世界。
誰しも嫌な記憶は消したいと思ったことがあると思うが、嫌なことを記憶から消したところで本当に幸せなのか、、、 薬物系SFって結構好きなジャンルなので良かったです
高評価を信じたけれど…
収録作の8割に不満が残る残念な本でした。
『記憶を飛ばす薬』が起す悲喜交交と言うコンセプトは面白かったですが、主役のほとんどが基礎モラルが低いせいで、悪い事が起きても薬による影響ではなく自業自得で『薬関係ないよね?』となります。
その低モラルもストーリの為に用意された『モラルの悪さ』なので不自然さがあり、作者も設定を持て余しているのかな、と…
そもそも、第一話の『審査結果早く知る為に記憶飛ばす』って理屈あいます?
『審査結果に伴う、諸々の嫌な経験の記憶を飛ばす』じゃないんですかね?
主役のモラルが高い作品は凄く良かっただけに、素材を活かしきれなかった消化不良な作品でした。