あらすじ
伊里野と一緒に逃げ出した浅羽。 二人の前にはかすかな幸せとその幸せを圧倒する様々な困難が待ち受ける。 次第に破壊されていく伊里野を連れ、疲弊した浅羽が最後にたどり着いた場所は……! 逃避行の顛末を描いた『夏休みふたたび前・後編』と『最後の道』。 榎本によって明かされる様々な謎。 伊里野は浅羽の目の前から姿を消し、そしてその償いのように平穏な日々が戻ってきた……かに見えた。 だが……! 最終話『南の島』。 そして文庫書き下ろしのエピローグを加えて、ついに伊里野と浅羽の夏が終わる……。
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Posted by ブクログ
うまく感想を言語化できない。
逃避行中に浅羽から投げかけられた言葉により伊里野が壊れてしまってから苦しかった。
あの大変な経験は彼らだけで、他は日常(日常でもないが………)というアンバランスな感じが苦しさを増長させていた気がする。
夏に読めてよかった。私はこれから夏を経験するたびにこの本を思い出して、伊里野と浅羽の逃避行に思いを馳せるのだろう
Posted by ブクログ
最後まで読ませてくれる作品。最後の方は涙すること間違いなしな展開で非常に良かった。
本巻は特に最初の方は、イリヤと浅羽の逃避行話。残念だったのは、部長が捕まった後の話や、イリヤvsエイリアンの戦いがどうなのか、榎本が描いたシナリオが何なのか、等を書いてほしかったところ。部長にせよ、晶穂にせよ、最後の方空気になってしまっているので。
Posted by ブクログ
長文です。
「夏休みふたたび」前後編、「最後の道」「南の島」「エピローグ」を収録。
その3を読み終わり、わたしはとても興奮していた。イリヤのことばかり考えていた。
冒頭で二人がほのぼの楽しそうにしているのを見て違和感。気楽過ぎやしないか。しかし浅羽の方は実のところ(一人になる御手洗いのシーンで)疲弊した顔を見せる。ああ…早くも嫌な予感がする。
忍び込んだ小学校で浅羽と伊里野は吉野に出逢う。吉野は大人だ。善も悪も両方持っている。榎本も、椎名もそうなのと同じように。善で浅羽を認め、二人に歴史の授業をする。悪で物を盗み壊し逃げ、伊里野を犯そうとする(または、犯した)。
浅羽は大人になりかけているのに、子供のままでありたがっているように感じた。髭剃りを恥ずかしいことだと思う、自慰に罪悪感を覚える、大人のように善悪両方なんて持ちたくない、と考えているのでは。
大人のような諦めも妥協もしないと無理やり自分を押さえ込んでいたが、とうとう我慢が出来なくなり、最後の道で伊里野にすべてをぶちまけてしまう。逃避行の終わりが見えていた。
浅羽は祖父母の家に電話し(会話を傍受されることを判っていただろう)、祖父母の自宅で榎本に再会する。伊里野を手放す。そして、榎本から本当のことを聞かされる。三日後の最終決戦に負けたら人類は滅亡する。
ところが三日後、戦争は終わったと報道される。学校に行くが伊里野はいない。校内放送で呼び出され、浅羽はヘリに乗り込み南の島へと向かう。
「最期」の出撃を拒否する伊里野を説得させるために、浅羽は呼ばれた。伊里野の戦闘服には無責任で切実な願いが呪いのように寄せ書かれている。この部分の文章を読んだとき、言葉で言い表せない気持ちになった。わたしは今後、寄せ書きを頼まれても断ることにする。
浅羽は人類と伊里野を秤にかけ、伊里野を選んだ。伊里野は、自分の命と人類を秤にかけ、浅羽のいる人類を選んだ。浅羽のためだけに死ぬ。こんな悲しい台詞があるか。
エピローグでは、椎名からの手紙が筆者からのメッセージにも思えた。結末は決まっていたのだ。
読み終わり、判ってはいたけれど煮え切らず、レビューを読み漁った。冲方丁先生の考察を読み、少し落ち着いた。
間違いなく「イリヤの空、UFOの夏」は名作だと思う。これ以上ないラストだと思う。けれどわたしは、伊里野がずっと生きていて、浅羽の隣で微笑んでいてくれたらと思わずにいられない。
Posted by ブクログ
一人の人間を背負って生きるということ。その重みに押し潰される描写が容赦なくて泣いてしまった。
精一杯決めた覚悟も、裏を返せば空想じみた虚勢でしかなくて。
不甲斐ない自分を受け入れられず自棄を起こした浅羽の態度を契機に、イリヤの中の時間が退行していくところは、本当に展開の妙だと思う。
気ばかり逸っていた浅羽がイリヤの過去の言葉で我に返る浜辺の場面が、良い。
最終的に、イリヤを守り切ることができなかった上、二人の迷いも苦しみも決断も、全てが仕組まれたものだと分かったのに、不思議にバッドエンドには感じなかった。
それは、気持ちよく死んでもらうために餌を与えるという行いの罪深さを自覚しながら、誰よりその行為の正しさを信じてもいた榎本という存在があったからだと思うし、
さらに言えば、生きる意味も戦う意味も見いだせずにいたイリヤが、浅羽という存在に意味を見出し、それを通して初めて世界に触れられるようになった、その変化に、何か尊さのようなものを感じられたからかもしれない。
残念だったのは、世界観がアバウトすぎて種明かしの部分が軽く感じられてしまったところ。
そこがメインではないとはいえ、「宇宙人の侵略」に対してわずかな対抗力でどうやって応戦していたのかけっこう気になるのである。しかも地球軍は生きる意志に乏しい兵士で構成されているというので余計気になる。
それにしても、終盤がかなり重い展開なだけに、水前寺という濃くて朗らかなキャラがいてくれたのは良かった。どうみても中学生のキャパシティを越えまくって三十路の貫録すら漂っていたけど、彼がどっしり構えてくれているだけで何となく安心できる。浅羽が慕うのも無理ないし、ちょっとへたれて依存気味になりかけるのも分かる気がした。
最後まで元気そうだったのが嬉しい。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
「6月24日は全世界的にUFOの日」新聞部部長・水前寺邦博の発言から浅羽直之の「UFOの夏」は始まった。当然のように夏休みはUFOが出るという裏山での張り込みに消費され、その最後の夜、浅羽はせめてもの想い出に学校のプールに忍び込んだ。驚いたことにプールには先客がいて、手首に金属の球体を埋め込んだその少女は「伊里野可奈」と名乗った…。おかしくて切なくて、どこか懐かしい…。ちょっと“変”な現代を舞台に、鬼才・秋山瑞人が描くボーイ・ミーツ・ガールストーリー、登場。
いわゆるセカイ系のラノベです。
舞台設定が山梨、名作と聞くため読んでみました。文体からオタク臭い痛さのあるラノベという感じがして得意ではなかったですが、話としてはなかなか面白かったです。中学とかで読んでたらはまってたと思いますが今の歳で読むとリアリティに欠けるかなあと思いました。(逃避行のところとか)
逆に水前寺部長は突き抜けていて中途半端なリアリティから少し遠いところに居るキャラだったのでとても良かったのでもっと掘り下げて欲しかったです。
奪われる為に生きた子が救いを得るまでの話という風に見るとスパイラルと共通点があるなあと思いました。