あらすじ
少年のようにスポーツカーをこよなく愛した一方で、戦後いち早く日本の経済的独立を目指し通商産業省創設に奔走。ところが創設後はすっと身を引く。 全てが次郎の「紳士の哲学」であった。エッセイスト白洲正子とともに過ごした彼の人生を膨大な資料を基に解き明かす必読の白洲次郎評伝。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
人間性のかっこよさは晩年に根強く出てくるのだろう。上巻と比べても明らかに魅力的だ。
この人生の流れを観れるのは貴重である。
人に好かれるというか恵まれる生意気さ。かわいさであり貴重なんだろう。良いも悪いもプリミティブな信念は人を納得させる。
ここに"野心のなさ"があるのだからかっこよさしか残らない。推しやすいということだ。
かっこいい。
"「ジャパン!」 とアナウンスが入り、吉田首相以下六人の全権委員が登壇した。吉田は調印の際にサイン用として新品のペンを渡されたが、わざわざ胸ポケットから自分のペンを出してサインした。その光景を見た次郎の両目に涙があふれてきた。(そうだ、じいさん。よくやった!) 独立を回復した日本は、再び自分たちの力で国際社会を生き抜いていかねばならない。吉田が自分のペンを使ったということが、いみじくもその意気込みを表しているように思えて胸を打ったのである。昭和二六年九月八日午前一一時四四分。ついに日本は独立国家に復帰した。"
"この協定の交渉は米国と対等の立場で進めていきたいということを先方にしっかり伝えてくださいよ」 と強く言い聞かせて送り出した。帰国後次郎が、「ちゃんと言った?」 と尋ねると、岡崎は、「向こうから言ってきた」 と答えた。それを聞いた次郎は急にべらんめえ調になり、「なんでこっちから言わねえんだ。こっちから言うことが大事なんだよ」 と荒っぽい言葉をぶつけて怒った。岡崎は大臣だし終連では次郎の上司だったこともあり、おまけに五歳も年上なのだが、こうなるとどっちが偉いのかわからない。"
"「自分よりも目下と思われる人間には親切にしろよ」 とも言っている。運転手にでもキャディにでも必ず「ありがとう」と言った。「すみませんと言うのはダメだ。 Say" Thank you!"」 運転手つきの社用車に乗るとき、次郎は好んで助手席に座った。理由を聞かれると、「後ろでふんぞり返っているやつはみんなバカだ!」 ということらしかった。食事のため店に車で来ると、「天丼でも何でもいいから、先に運転手に食べさせてやってくれ」"
"晩年は正子のエッセイストとしての名が高まり、白洲次郎というと〝白洲正子の夫〟という形で紹介されることが多くなったが、次郎は白洲正子の名が世に出ていくのをたいへんに喜んだ。特別な敬意を抱いていたらしく周囲の人に、「うちのカミサンはえらい」 とよく口にしていたという。ところが正子の作品をほとんど読んでいない。"
"あなたのモットーはと聞かれ、「キリスト教徒が聞いたら怒るかもしれんが」と前置きしながら、「死んだらクサルということだ」 と言い放った。生前、彼が何度も口にしたこの言葉が、〝葬式無用、戒名不用〟という遺言につながったらしかった。「次郎が思う存分生きてくれたことを心底知っていたから、子供たちもカラッとしていた」 そう正子は語っている。"