あらすじ
新米探偵・愛香は、親友の別荘で発生した殺人事件の現場で「貴族探偵」と遭遇。地道に捜査をする愛香などどこ吹く風で、貴族探偵は執事やメイドら使用人たちに推理を披露させる。愛香は探偵としての誇りをかけて、全てにおいて型破りの貴族探偵に果敢に挑む! 事件を解決できるのは、果たしてどちらか。精緻なトリックとどんでん返しに満ちた5編を収録したディテクティブ・ミステリの傑作。
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Posted by ブクログ
前作に引き続き貴族探偵の傲慢さが、鼻に付く!
けど、高徳さんの純朴に探偵業に向き合う姿が愛くるしくて、主役は完全に高徳さんに絞られているおかげで前作よりストーリー性が増し読みやすかった。
多重解決型ということで、ある意味ミスリードからの使用人たちの鮮やかなどんでん返しっていうテッパンが心地よい。最後の『なほあまひある』で遂に貴族探偵が負けるのかって思うハラハラ感と最後の落ちは、平和的で納得はできるけどもっとエッジの効いた形も期待しちゃったなぁ。
ともあれ、浮世絵離れしたふわふわっとして悲壮感のない世界観は読んでいてノンストレスに謎と向き合える、手に取りやすい素敵な作品です。
Posted by ブクログ
前作も楽しく読ませてもらったが、今作は新たなメンバーを加えて、またまた愉快な思いをさせてもらった。
まずタイトルからして、ふざけてて好きだ。
たとえ使用人に丸投げだろうと、女性と戯れていようと、貴族なんだから仕方がない。
捜査や推理など下賎なことは、使用人に任せておけばよいと、至極真っ当な言い分である。
愛香はその辺りを飲み込めないし、師匠とは対角にいる貴族探偵を認めたくなくて、ひたすらキリキリしてしまうのだろうな。
ラストまで振り回されて、本当にお気の毒だ。
ただ忌々しく思いながらも、師匠亡きあと真面目すぎる愛香には、貴族探偵はほんの少しだけ必要なんじゃないかなとは思った。
前作では、「こうもり」で引っかかったが、今回も「幣もとりあへず」で引っかかってしまった。
なんか納得できず、二度読み返して、やっと理解できた。
文字だからこそのちょっと意地悪な引っかけだと思う。
引き続いてラストもやられた感はあったけど、最後まで貴族を通してくれて、安心の終わり方だったと思う。
2025/02/20 06:26
Posted by ブクログ
前作からオールドスタイルな女探偵、高徳愛香が加わり、貴族探偵に対するツッコミ役を担っている為、前作よりコメディ色が強めな印象でした。
前半3遍は可もなく不可も無くな感じ。愛香の推理が貴族探偵を犯人とするという縛りを設けていたとしても、ツッコミ所満載のガバガバ推理なことを除けば。
4編目の「弊もとりあへず」は前作の「こうもり」を彷彿とさせる作品。 叙述トリックと逆叙述トリックが合わさり、読者、登場人物、実際に発生した事件、3つの認識すべてにズレが生じて物凄くややこしくなっていて、面白かった。ただ、初めて逆叙述トリックというものを味わった「こうもり」のインパクトを超えられなかったのも事実。
最後の「なほあまりある」は今までの短編に起きた出来事が、手がかりとなっているのが、まさに連作短編集の最後の話として相応しいなと思った。
使用人がいない貴族探偵がどうするのかと思っていたけど、実は愛香が知らず知らずのうちにその役割を担っていたというオチはニヤリとさせられた...w
Posted by ブクログ
「貴族探偵」という強烈なキャラクターと、駆け出しの女探偵。
対照的な探偵を登場させることで、前作よりも貴族探偵のキャラクターが際立っているように感じる。
1作目〜3作目は、派手さはないがロジックがしっかりしている。ただ、読んでいてあまり新しさがないのは難点。
4作目『弊もとりあへず』は前作の『こうもり』でも用いられていたトリックが使われている。
もちろん驚いたし面白いが、一度味わっちゃってるからな...
と、ここまでは出来としては及第点といった感じだが、5作目でなんと連作短編集のような作りになっていたことがわかる。
1作目〜4作目に散りばめられた伏線を回収し、愛香が学んだ"貴族探偵の習性"を用いて事件を解決。
全体としては、派手さはないもののしっかりしているミステリーといった感じ。第3作、シリーズ初の長編を現在連載中とのことでそちらも楽しみ。
Posted by ブクログ
貴族探偵シリーズの第二弾。今回は新キャラの女探偵、高徳愛香が登場し、多重解決ものとしての様相を呈している。推理は前作よりも複雑化しているが、女探偵の消去法を駆使した推理のほころびを、貴族探偵の使用人が訂正するという分かりやすいテンプレになっており、毎回貴族探偵を犯人だと誤認するという一種のシチュエーションコメディのような趣もある。それがある種の様式美になっており、その点は前作よりも面白い。
本格としての練度も高く、特に「幣(ぬさ)もとりあへず」は誤認トリックの仕掛けが絶妙で、地の文では一切嘘をついていないため、簡単に騙されてしまった。認識の違いがそのまま誤認に繋がり、それが後に訂正され真相が明らかになるというのは、多重解決ものならではの鮮やかな手腕である。三度貴族探偵を疑い、その都度煮え湯を飲まされてきた女探偵だが、最後の短篇「なほあまりある」でようやく女探偵は真相へと辿り着く。探偵としての責任から逃れ続ける貴族探偵が、事件を隠匿する側に立つというのも面白いが、コッタボスがその看破の鍵となるのも良く、隠匿した理由も「女性の部屋に行ったことが知られれば相手の名誉に関わるから」という紳士故の動機というのがキャラクターに合っていて素晴らしい。またこの短篇は最後にふさわしくいくつかの重大なテーマを内包している。一つは「女探偵は汚名返上できるのか?」と、もう一つは「下僕がいない場合に貴族探偵は推理ができるのか」である。前4作のお約束である貴族探偵を疑うという流れを踏襲しつつ、無能で終わるのかどうなのか読者にギリギリまで悟らせなかったのは上手いと思った。ドラマ版は恐らくこれを最終回にするのではないだろうか。そして一見すると女探偵の勝利に見えたかのようでいて、実は女探偵は貴族探偵に依頼されてここまで来ていたという、貴族探偵のひっくり返しは素晴らしいオチだった。探偵は依頼がないと探偵にはなれず、また探偵が唯一の真相を確定できないという命題を盤外から仕掛けることで嘲笑った至高のオチといえるだろう。
本格ミステリとしても面白く、何もしないのに存在感だけはあるという貴族探偵のキャラクターを生み出しただけでも価値のある作品だと思う。特に最後の短篇の出来は単なる殺人事件だけに留まらず、貴族探偵の思惑も絡んでおり、謎も事件も魅力的でオチも最高だったので☆一つプラス。
Posted by ブクログ
貴族探偵シリーズ第二弾となる連作短編集。
ライトに楽しめる一冊。最初の『貴族探偵』のノリが好きだったので、この作品も楽しめた。
女探偵・高徳愛香が行く先々で貴族探偵に遭遇する水戸黄門的展開、ベタだけど好き。使用人が貴族探偵を「御前」と呼ぶのも、ちょっと古めかしいのが新鮮でいい。
話の骨格や文体がしっかりしてるから、チャチにならないんだろう。
愛香の推理がことごとく貴族探偵犯人説にたどり着くの、笑える。愛香がどこまでも真面目なのが、却って笑いを誘うというか…。
多重解決モノでもあり、館モノでもあり、たまに叙述トリックがあったりと、何層にも仕掛けが施されていて読者を飽きさせない。ただ、五話中三話の舞台が誰かの別荘なので、読み終わってから思い出そうとすると混ざる。死体の発見されたシチュエーション(犯人とお茶を飲んでたらしい、とか)、死体発見後の展開(天候不良で警察がすぐに来れない)、動機(痴情のもつれとか)なども似てて、余計に混ざる。
・白きをみれば…愛香の親友の別荘の、伝説の古井戸がある地下室で招待客の一人(学生)が死んでる話。
・色に出でにけり…本書にたびたび登場するワガママお嬢様依子の別荘で、招待した恋人の一人が死体で発見される。真相が依子の家をメチャクチャにするものだったけど、大丈夫だったんだろうか…。
・むべ山風を…大学の研究室で院生が殺される。ていうか、愛香の行く先々でヒト殺されすぎ(笑)。
・幣もとりあえず…民間信仰的な「いづな様」を祀る旅館での殺人。これが叙述トリックになっていて、最初読んだときは理解できずに、誤植だと信じて疑わなかった私…。名前が入れ替わってるネタは『貴族探偵』にもあったね。動機にもなってるネット世界でのトラブルは、愛香の語りで読者は初めて知るので、ちょっと行き当たりばったり感があったな…。
・なほあまりある…依子の遠縁の別荘で二人も殺される。これ二人目が殺されたのって間接的に貴族探偵のせいじゃん? 変なところから部屋に入ってくるから…。
Posted by ブクログ
愛香が、"貴族探偵が犯人だ"と指名し、"やれやれ、真犯人を教えてやってくれ"、と執事やメイドの推理で真相がわかるという流れが3回くらい続き、1回目は面白かったが3回は、さすがにくどいなと思った。
最後の最後に、"今回、愛香に探偵依頼したのは自分であり、この島に着いた段階で君は私の所有物だった訳だ。毎回、私の所有物が推理を果たしている。私は根っからの貴族探偵だろう?"という感じで、してやったり、な良い終わり方だった。
結局、貴族探偵の本名も素性も謎のまま2作目が終わったが、もう少しバラして欲しかったな〜
Posted by ブクログ
短編集 お気に入りは「幣もとりあへず」
女探偵が不憫……!で密かに応援しながら読んだ
解説も好き タイトルにそんなつながりがあったとは
白きを見れば
女探偵の推理に対してメタ推理で犯人が違うということしかわからなかった…
女探偵初登場ということでオーソドックスな殺人事件という感じ
登場人物のギスギスした感じが伝わってきて少し読むのが疲れた
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色に出でにけり
動機が全然読めなくて推理披露のところで思わず感嘆した
依子のキャラクターが好き
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むべ山風を
短編なので途中で出てくる容疑者リストを覚えるのに苦労した
パズルものだけどそっちで考えれないタイプなので1番ありそうな動機から推理してあたってしまった
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幣もとりあへず
人物錯誤と性別誤認にはまんまとしてやられました
舞台設定と雰囲気が好きなんだけどトリックはなほあまりあるのが好み
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なほあまりある
先が気になって気になって… なぜ二番目の殺人が起きたのかの理由も犯人も意外かつ納得
ついに貴族探偵が推理しない話か…!?と思ったらいい意味で期待を裏切られた
Posted by ブクログ
ドラマにもなった原作でもあるが、麻耶作品にしては探偵が薄味のようにも思える。麻耶作品の探偵と言えば、誰を思い出すだろう?まさかトリビュートの九十九十九ではないだろう。そう、メルカトル鮎や木更津悠也と比べると貴族探偵は若干パンチが弱いとも言える。今の麻耶雄嵩はミステリー及び探偵というカテゴリに於いて当時の自身からナイフのような切れ味が無くなったようにも思えてしまう。丸くなり過ぎたとも言える。そこが少々残念だ。
物足りない
『貴族探偵』が面白かったので買ってみたがいつも推理に失敗する女探偵が出てきたことで、解決後の後味が悪い。
また、女探偵の描写が入るためか犯人の心理描写が薄く物足りない章もあるのが残念。
この作者特有の読者をミスリードするような表現は好みが分かれるかもしれない。