あらすじ
都市を支配する勢力の抗争に端を発した拷問殺人の背後には、闇の軍属カトル・カールの存在があった。ボイルドらの熾烈な戦いと捜査により保護拘束された娘、ナタリアの証言が明らかにしたのは、労組対立を利用して権力拡大を狙うオクトーバー一族の影だった。ついに牙を剥いた都市システムにより、次々と命を落としていく09メンバーたち。そしてボイルドもまた、大いなる虚無へと加速しつつあった――暗黒と失墜の完結篇
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
P265
「そうでもせんと、お前、全てが終わった後で、自分の頭をその銃で吹っ飛ばしかねん様子だぞ、ボイルド」
フライト刑事とボイルドの関係で、マルドゥック・スクランブルのバロットとベル・ウィングの関係を思い出した。よき理解者であり、先生と生徒であり、友人でもある温かい繋がり。ボイルドが自身を虚無に委ねてしまってからも〝爆心地(グラウンドゼロ)〟へと向かう速度を度々緩めてくれたフライト刑事は、ボイルドの人生にとってウフコックと同様、揺るがない良心であったと思う。
ヴェロシティを通して好きなシーンは沢山あるけれど、『マルドゥック・ヴェロシティ(新装版)(1)』で、ラナがボイルドの胸ぐらをつかんでキスをするシーンと、続く会話もそのひとつ。
この瞬間に恋愛的な要素でときめいた訳では無く(というか、そういった表現は求めていません)、ラナがオードリーのことを想ってした行動の真っ直ぐさに痛みと優しさを同時に感じて、強く印象に残りました。
―ラナはボイルドの胸ぐらをつかんでキスした。相手が受け取るにせよ受け取らないにせよ、とにかく渡しておかなければ気が済まないというようだった。そしてすぐに顔を離して言った。「今のは、オードリーのためにしたんだ。あたしが、どうってんじゃないんだ。オードリーの代わりに、あの子がしたかったことをしたんだ」(P269より)―
(中略)
―そこで初めてラナがこちらを見た―微笑/絶望を乗り越えた者の生命感。「オードリーが言ってくれたんだ。その悪夢は、どうせあんたがその両手で自分の頭を吹っ飛ばすまで続くだろうねって。それであたしは、なんでか知らないけど安心した。気が楽になったんだ。なんでだと思う?」
「オードリーは、お前自身に、お前の中の悪夢を摘出させたんだろう」(P271より)―
ヴェロシティのラストはボイルドが〝重力(フロート)〟を収縮させ、自身を炸裂させることで終結している。ラナがオードリーの言葉で気が楽になったように、ボイルドもまた炸裂によって、自身で自身の悪夢を終わらせた。シザースの役目もあるので偶然と言うべきなのかもしれないが、オードリーの言葉をなぞる結果となったことは、彼女への追悼になったのではないだろうか。
そして、最も好きなシーンはO9メンバーが街に出て来て間もない頃の、チンピラに絡まれても動じずにやり過ごすシーン。ほんの数行のシーンだけれど、第一級の忍耐を見せてくれたクルツとオセロットの渋さに痺れた。この一人と一匹にはずっとずっと相棒で居て欲しかったなあ(:_;)
ヴェロシティ(新装版)(3)のカトル・カール戦、P45〜P48にかけてのレイニーとワイズの動きもめちゃくちゃcoolで印象に残っています。オセロットがいるように見せかけ、ワオーンと鳴きまねをしながらニヤリと笑うワイズの行を読んだとき思わず自分もニヤッとしちゃいました笑
ワイズは容姿について特に記述が無かったと思うので頭の中でシーンを再現するのが少々難しかったですが、良いポジションのキャラクターだったなあ!と思います。
マルドゥックを初めてシリーズで読み進めたとき、ヴェロシティがボイルドの物語だと分かった瞬間とてもはしゃいだ気持ちになったのを覚えています。再読する度にもやはり、冲方氏がこのシリーズにおいてボイルドという男とO9のことを深く知るためのプロセスを設けてくれたことに嬉しくなりますし、なにより何度読んでもおもしろい!!大好きな作品です。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった…!
最後まで読み切り、登場人物ほぼ全員が死んでしまったことを思い、ちょっと笑ってしまった。読んでいる最中は悲しいのだけどね…
ボイルドがいかにしてあんな怖い男(スクランブルのボイルドは本当に圧倒的だった)に至ったのかを、知れた気がする物語。
魅力的な主人公だった。壮絶。おまはん、1人で全てを背負いすぎや。私はこのシリーズで、ディムズデイル=ボイルド大好き人間に生まれ変わりました。
最後までウフコックのことを考えていた描写が切ない。ドクターにも「ウフコックの側にいてやってくれ」と言っていたんだね…
次作ではシザース、ボイルドの娘がキーになるのかしら。頭おかエリート一族・オクトーバーの血筋は完全に死に絶えたのか?ワクワクが止まりません。
Posted by ブクログ
面白すぎてページを捲る手が止まらず寝不足。
O9はボイルド以外みんな死んじゃうんだろうなと思ってたけど想像よりも色々壮絶だった。
これはボイルドじゃなくても虚無に走りたくなるわ……
ナタリアが酷い死に方しそうで怖かったけど思ったよりずっと穏やかな最期で泣いた。
ウフコックへのボイルドの思いでまた泣けて。
まさか大勢シザースがいたとは……
でもシザースになったおかげでボイルドはナタリアと再開出来たんだろうし、娘ちゃんともコンタクト取れるだろうしちゃんと復讐も果たしたしでハッピーエンドと言えなくもないのかな。
フリント結構好きだったのにたいして掘り下げもなく死んじゃったのが残念だった。
凄惨な描写が多くて読んでて辛かったけどすごく人間をちゃんと書いてるというか、テーマがしっかりしている感じがした。
あとがきの作者の執筆時の状況がまた壮絶。
Posted by ブクログ
09法案をめぐる都市での対立。ボイルドが虚無に落ちるまでを描く。ナタリアの証言により明らかとなったオクトーバー一族の陰。そして、そのために次々と命を落としていく09メンバー。
都市によって殺されたと言える最愛の女性と仲間たち。それに抗うことができずに虚無へと落ちていったボイルド。ウフコックを眠らせることなく一緒にいたならば、またちがう展開もあり得たのではないか。と悲しくなってしまう終わり方だった。
マルドゥックスクランブルでは、イースターが最期の事件を簡潔にバロットに聴かせていた(事件関係者を片っ端から殺していった、と。)が、やはり、見方を変えればボイルドの行動も致し方ないところがあったのかな、とも思えた。
ボイルドがどんどん追い詰められていく過程が辛い。オクトーバー一族という歪で巨大な得体の知れない怪物に振り回された物語であったと感じた。
スクランブルと比べてスケールが大きかったけど、あくまでもボイルドの物語として終わったのがよかった。
一回で理解するのは中々にムズい
スクランブルで詳しく語られなかったボイルドの過去。想像していた何倍も過酷でしたが、最後まで事件を諦めなかったボイルドの姿に感動した。またマルドゥックスクランブルを読みたくなった。