あらすじ
昭和16年、北森竜太は治安維持法違反の容疑で、7カ月間勾留される。釈放されたものの退職させられ、その上、軍隊に召集される。苛酷な軍隊生活で身も心も衰退した20年8月15日、満州から朝鮮への敗走中に、民兵に銃口を突きつけられた――。純粋な心根の青年教師が戦争に翻弄されていく悲劇。かつて北森家で命を助けられた朝鮮人労働者金俊明の運命。軍旗はためく昭和を背景に戦争と人間の姿を描いた感動の名作。
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Posted by ブクログ
戦中、旭川の質屋の長男として生まれた、主人公。
質屋という商売だったが、人情にあふれる恵まれた環境で育つ。
戦中の理不尽な天皇崇拝の教育で、唯一の小学校の時の担任だった恩師は
納得できる思想・生き方、何が大事か?を教えられ、
主人公は憧れて教師を目指す。
とは言え、主人公は戦時教育に反していたわけではなく、
根本には天皇を崇拝する心は、多くの当時の国民と同じように持っていた。
まっすぐな心そのまま、教師になったが、
思想統制の波にかかり、どん底に落ちていく。
当時の思想統制の怖さと、今の自由さを実感させられ、
本当に今に生まれてよかったと思います。
主人公は当時の数ある事件の一人の話に過ぎず、
同じ境遇の、またそれ以上に不幸な目にあった人が
たくさんいるとなると、本当に暗い時代です。
そんな中でも主人公とその恩師は
差別のない人としての生き方を通していきます。
確かにこんな先生は今の時代でもいないと思います。
人を差別するには理由があり、止むをえないこともあると思います。
しかし、理由のない差別や、理由にならない差別もたくさんあります。
それが横行していた時代。人間の理性とは本当に怖いものです。
後半は軍隊に配属され、その中でもまた、
当時の思想の中でも、たくさんの種類の人間がいたことがわかります。
日本がした酷いこと、された酷いこと。
どっちも鮮明に書かれている部分があります。
とても辛い話なのに、人間はまだ戦争してると思うと、
とても悲しいことです。
思想は制限できない。というのも理解できる内容。
この話は子供と子持ちの親に読んで欲しいと思った。
生き方の本質というか、子供に教えることが、目先のことばかりに
ならないようにしたい、と思えるから。
新年一発目から戦争ものでした。
上下巻で内容もさることながら、ページ数もヘビーです。