あらすじ
元FBI特別捜査官で現在は大学で歴史を教えるエリオットの元に、失踪した学生の捜索依頼が持ち込まれた。捜査協力にあたる担当捜査官を前にしたエリオットは動揺を隠せなかった。そこには一番会いたくない、けれど決して忘れられない男、タッカーの姿があった。タッカーはかつてのエリオットの同僚で恋人。17ヵ月前、膝を砕かれ失意の底に沈んでいたエリオットに、冷たく背を向けた男――。シアトルの大学を舞台に繰り広げられる、甘く激しい男たちのミステリー・ロマンス。男たちの熱く狂おしい恋愛を描くモノクローム・ロマンス、第一弾!! 解説:三浦しをん
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エリオットとタッカーが最高
エリオットとタッカーがほんといい、よすぎる。シアトルって雨の多い街というアメリカのドラマからのイメージしかないけれど、シアトルあたりが舞台というのもなんかいい。FBI捜査官だった主人公エリオット(受け)は、事件で負傷し辞職、同僚で恋人のような関係にあったタッカーとはそのせいで別れてしまい、教職につくもタッカーとの日々を忘れられずもんもんとする。ほんとこの二人の関係性、やり取りが好きすぎる。忘れたいけど忘れられない恋の残像、熱、感触、自分が求めているものを本当はわかっているのに、その通りには簡単に動けない。考えたくないのに、ふとしたときに思い出してしまうタッカーの熱さ、大げさな表現はないのにエリオットやタッカーの感情のすべてがありありと目の前に広がる。エリオットとタッカーが久しぶりに再会したときの二人の間の緊張感とか、ほんと好き。別れてもお互い意識しまくっていて、手をのばしたいのにお互い躊躇してる、でも結局その手をつかまずにはおれんのだよ、こういうのホント好き。エリオットとタッカーの恋愛事情にどうしても目がいってしまったが、メインにあるのはサスペンス。サスペンスの中に、うまい具合に二人の恋愛的緊張感がからめられている。そして二人が仕事大好きなとこもほんといい。仕事に生活の全部を注ぎ込んでしまってるような人たちの恋愛話大好き。エロはたくさんはないけれどちゃんとあって過剰にあえがない。キスシーンも熱さと必死さが伝わってきてよかった。全編通して静かな熱情と緊張感がある。緊張感はあるけど暗いわけではない。葛藤するけどうじうじしているのとは違う。愛はあるけど甘すぎない。お互いなくてはならない相手だけど、たぶん別れても、痛い未練を胸のすみっこに抱えながらしっかりきっちり仕事して、なんだかんだ一人でもちゃんと立っていられる二人だと想像させてくれるとこもいい。 なお、知らない食べ物や道具がけっこう出てきて自分の無知を改めて思い知る。勉強になります。日産はニッサンと書きます。 時おり文章であれっと思うところがなきにしもあらずだったし、純粋にサスペンスとしてどこまでおもしろいかと言われると言葉につまるけれど、大好きな二人なので大目にみて★5。
Posted by ブクログ
BLの翻訳物?と思い手に取ったんですが、正直BLに分類するのはもったいないと思いました。
男性同士の恋もありますが、それ以上にミステリーやアクション、そして人間関係等が面白く、いわゆる日本のBL小説以上の読み応えを感じました。
日本のBLのテンプレート化やオープンさ(よく言えばおおらかだけど悪く言うと頭悪いというか。ちょっとは悩めとか思ってしまう事もしばしば)に少々辟易してて最近は離れ気味だったんですが、世界を見回せばBLももっと面白い本があるんだなぁと感心しました。
以前にも翻訳物は1冊読んだ事があるんですが、日本人とはまた違った目線なんですよね。
これをきっかけに翻訳物も増えてくるといいな。
Posted by ブクログ
台湾のBL小説は何度か読んだものの、アメリカのゲイ向け小説は初めて。
絶対犯人はコイツだ!真相はこうに違いない!と読み進めたものの、まんまと外れました。
思わせぶりな伏線が何通りも登場し、そのうちの一つが真相として回収された、という感じ。
(あまりアメリカの小説は読まないんだけど、伏線を全部回収するんじゃなく、
一部が本物の伏線で他はフェイク、みたいなのはよくあることなのだろうか?)
真相がわかったときのカタルシスこそなかったものの、大きな矛盾点や不満もなく、よく練られた、出来た小説だと思った。
翻訳小説の中では読みやすく、けれど原語のウィットに富んだ言い回しも残されている。
フェア・プレイも読破したら原書も読んでみたい気持ちにさせられた。
エリオットが犯人に追い詰められるシーンでは手に汗握る緊張感と不気味さがあって良かった。
また、当たり前のように自分のセクシャリティを公表し、当たり前のようにそれを受け入れる家族や同僚、はたまた激しい差別意識を向けてくる知人や、
人種差別や政治思想についての話も当然のように物語に組み込まれているところは日本のBL小説にはないものだと思った。
(尤も、これはゲイ小説であってBLではないが)
メインとなるエリオットとタッカーだが、エリオットがネガティブに考えすぎているだけでタッカーはエリオットにベタ惚れで、
お前がいいなら俺は何でも、とキスするシーンや最後の台詞はかなり興奮した。
エリオットがタッカーに依存していることは言わずもがな、エリオットが少し素直にさえなれれば、この二人はなんだかんだで上手くやれると思う。