あらすじ
あわただしい時代のなかで、貧しくても上昇志向でがんばっていた青年マリウスは、ある美少女に恋をした。謎の男性といつも一緒のコゼットだ。彼女への思いをつのらせる彼だったが、革命騒ぎのまっただなかに巻き込まれ、絶体絶命となる。そのとき、コゼットと一緒にいた男、ジャン・ヴァルジャンと再会した! ジャヴェール警部、凶悪犯テナルディエなどもまじえながら、壮大な物語は感動のクライマックスへと向かう――。
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Posted by ブクログ
疲れを感じさせない名作でした。
これだけの長編だと途中でダレたりしてしまいがちなのですが、そんなこともなく読み終えられました。一人ひとりが思わぬところで繋がっていて、ラストには本当に安堵と切なさと、色々な感情が一気に押し寄せました。
ジャンが、最期の時にはコレットに見送られて天へと昇ったのには安心しました。悪いことをしていいわけではないですが、やり直すチャンスはある、見てくれる人はいるのだと思えました。誰かに見て欲しいと思わずにする善行が良い結果に繋がるのですね。
Posted by ブクログ
神神神神神!!!!初めて物語で泣きました!!
この本には宗教歴史哲学道徳ユーモア家族愛恋愛友情社会風刺全てが詰まってる!!
ジャン・ヴァルジャンは産まれ(社会)により生き抜くための罪を犯さざるを得なく、パンを盗んでしまった。それにより投獄されたが、餓死寸前の家族の為に自分が働かなくてはならず、何度も脱獄を謀った結果10数年投獄されてしまった。やっと出てきたが家族の行方は分からず、犯罪者だと小石を投げられ宿からも迫害される。そんな中質素な生活をする善良な司教に泊めてもらったが、司教の恩を盗みという仇で返してしまい、後の宿敵ジャヴェールに捕まってしまった。が、司教がそんなジャン・ヴァルジャンを庇ってくれた。仇で返したのに善良に依然として対応してくれた司教はジャン・ヴァルジャンの思考の範囲外で理解が出来なかった。そんな善良さに困惑している時に「この銀食器や燭台をあなたが正直になるために使うと約束しましたね」とある種の呪いをかける。この
"産まれ(貧乏)によって世間の定義した悪の道へ進まざるを得ない低級家庭にはそこから這い上がるための金銭という余裕を与えなくては解決にならない。無慈悲だ!"
というスタンスで本は進んでいく。
ここから場面はファンテーヌとコゼットへと変わっていく。貧乏なファンテーヌは裕福で母性が強そうに見える母親にコゼットを預けるが、その見立ては誤りで義母は狡猾で薄汚い金の亡者だった。そのためファンテーヌは嘘の大金の取り立てのために最初は職を、次は家具を、その次は自慢の白い歯を、その次は最後の楽しみだった髪を、売るものがなくなって売春婦へ、と全てを無慈悲に搾取された。もう一方でコゼットも人として扱われず道具の様に扱われていた。そこで町を復興させ通行キップ(身分証明書のようなもの)を確認される事ない程慈善活動を行ったジャン・ヴァルジャンはマドレーヌ市長として活動していた。そこで犯罪者を心底軽蔑し、公務員を尊敬する社会正義に忠実な頭の硬いジャヴェールが、中級家庭の男に暴行中の哀れなファンテーヌに会い、警察署へ連行したがそこにマドレーヌ市長が「中級家庭の男から手を出した」とファンテーヌの無実を証明。その後家庭の事情を聞いてコゼットとファンテーヌを普通の生活に戻そうと決意するが、そこでジャン・ヴァルジャン間違われた社会的地位の低い男がジャン・ヴァルジャンの罪を着せられそうになる。ここで「罪を告白して低級家庭の犯罪者の罪を軽くする」か「哀れな母子を救うか」の2択を迫られるが、その間にジャヴェールが優しい嘘を破ってしまいファンテーヌはショックで死んでしまった。その後投獄されたが罪を告白してから逃亡し、大枚を叩きコゼットを救った。そうしてジャヴェールに追い回されながら2人の生活が始まる、その途中でマリウスという青年とコゼットは恋に落ちるが、ジャヴェールから逃げるジャン・ヴァルジャンがコゼットを連れてイギリスに行くことになってしまい、マリウスは自暴自棄になり、内乱に参加する。そのタイミングでジャン・ヴァルジャンはマリウスとコゼットの恋を知ってしまい、コゼットを愛していたジャン・ヴァルジャンはマリウスを恨んだが、コゼットの幸せを何よりも案ずる善良なジャン・ヴァルジャンは戦場へ行きマリウスを救い、捕まっていたジャヴェールを救い、泥水を半分溺れながら渡りマリウスを家まで連れ戻してコゼットと幸せにさせた。その幸せに"無期懲役の逃亡犯"である自分はいらないと、自分の感情よりもコゼットの幸福を優先し、最終的に衰弱死してしまう。が、それまでジャン・ヴァルジャンの「自分は無期懲役犯の盗人だ」
という表層的な告ハクを信じていたマリウスが、テナルディエのジャン・ヴァルジャンの秘密をネタにした商売でジャン・ヴァルジャンの"マドレーヌ市長とジャンヴァルヴァンは同一人物"や、"マリウスの命を救ったのはジャン・ヴァルジャン"や、"ジャン・ヴァルジャンはジャヴェールを殺していない。救った"等の偉業を告ハクされ、コゼットと共に大急ぎでジャン・ヴァルジャンの元へと向かった。が既に手遅れに近くジャン・ヴァルジャンは会話をして亡くなってしまった。
「司教様を呼びましょうか?」
「司教様はいらっしゃるよ」
ここで物語で一切泣いたことのなかった私の涙腺が反応してしまいました!最初の呪いとも言える司教の「正直者の善人」という指標に従い続けていた忠誠心の強い善人ジャン・ヴァルジャンが、本人も言っていたように死でやっと解放されたんだな〜(;;)
この本は
・産まれによる不条理、また罪の大きさの違い。
・中級家庭の卑しさ、低級家庭の慈悲深さ(表層的なもので判断はできないという意図)
↓
資本主義社会により生まれる悲劇。不条理!無慈悲!
を終始表していた。上には記入していないが、ジャン・ヴァルジャンのみならずまたそんな低級家庭に産まれ余裕もなく学もなく知恵も金もないはずのエポニーヌの献身さや野性的でユーモアに富んでいたガウローシュにも注目すべき。この2人はこの流れで普通有り得ない空想上にのみ現れる非現実的な存在だが、この2人によって内戦や低級家庭の無慈悲さ不条理さが際立った。法律や社会正義を基盤に道を歩んできたジャルヴェールの自殺。それと、マリウスの祖父と父の関係性で宗教やと政治的価値観の違い、時代的価値観で産まれてしまう家族の隔たりの悲しさ虚しさも実に妙実に描かれてる。きっとこの本は噛めば噛むほど味のするガムなんだろうな!ガムって暗喩もおこがましい!でもコゼット、学がないにしても、作者の主張を表すためにしょうがなかったにしても、マリウスの愛に絆されて父への感謝を一時的にでも忘れるなんて(;;)
Posted by ブクログ
パンを盗み19年間獄中生活を過ごしたジャン・バルジャンは、出獄後に再び盗みを働く
しかし司教の優しさで良心に目覚め、市長となり、過酷な状況で暮らしていた売春婦の娘コゼットを養女として引き取り共に生活を始める
フランス革命下の激動の時代を生きる様々な人の運命が描かれている作品
どの人物にも心の奥に強さと脆さがあって、それがぶつかったり融合する瞬間に感動が生まれるんだよね
この時代を生きる人達のたくましさがひしひしと伝わってくる
特にファンティーヌの行動に胸が締め付けられた
本もとても良いけど、映画、ミュージカルでは音楽がすばらしすぎてこれをもって完成するのではとさえ思う
初めてレミゼの舞台を見たときの衝撃は忘れられない
大人になってもミュージカルが生きがいになるだろうなと思った瞬間だった
お気に入りの曲
❁A Heart Full Of Love(マリウスがコゼットを見つけ出すシーン)
❁Stars(ジャベールが誓うシーン)
Posted by ブクログ
こちらの作品はヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』の原作の本質を残しつつ過剰な部分を取り除き英訳したものを日本語訳したものらしく最後まで読みやすい作品でした。
上巻と同様、登場人物それぞれに味があり読み進めるのがとても楽しい作品でしたが、下巻はフランス革命に巻き込まれる場面や最後の方のジャン・ヴァルジャンとコゼットの心が離れていく場面はドキドキと悲しみを感じました。
最後はマリウスに真実が伝わり良かったなと思いますし、ジャン・ヴァルジャンの物語全体での人柄の素晴らしさとコゼット、マリウスとの別れの場面とで自然と涙が出てしまいました。
Posted by ブクログ
ぃやー、意外だったよね。
レ・ミゼラブル、実はミュージカルも観たことないんだ。
どないにしてロングセラーなのかと思ったら、意外と面白かった。
なぜか?
*まず、思った以上にドラマ性がある。なんというか、盛り上がる場面が随所に出てくるね。
*そして、精神的であると同時に社会的。
主人公その他の内面を描くと同時に、(と言っても、「罪と罰」なみの深いというかダダ漏れのものではなく)社会に対する疑問も呈していて。善とは?法とは?宗教とは?みたいな問いかけもなくもない。
*実はフランス革命期の話だったのか!っていう時代背景すら知らなかったわけだが、そんな歴史性もあったりして。
なかなか興味深かったっす。
ちょっと、これをミュージカルの長さに短縮したらどうなるのか、観てみたくなったかも。
Posted by ブクログ
この角川文庫がだしている『レ・ミゼラブル』は、ハーバード大学の教授がユゴー作の原作にある過剰なほどの背景説明を省き、編集しなおしたものを和訳し出版したものである。なので原作ではまず間違いなく途中で挫折していただろうが、まったく苦に感じることなく楽しめて読めた。
個人からの視点で社会の無情さを痛感させられ、それがフランス革命の大きな時代の波へと展開していくさまはとにかく壮大で、スポットの当たることの少ない社会の溝や矛盾での無情さを浮き彫りにさせてくれている。200年も前の作品なのに現代のわたしたちでも考えさせられる内容だった。
また、終わり方が自分好みで、読み終わった後はしばらく何もせずに余韻に浸ってしまった。さすがは200年たった今でも名作といわれる作品。これは誰かにお勧めしたい本。
他のレビュアーも指摘していたが、かの有名な銀の燭台の話の原作がこれだったとは驚きだった。
Posted by ブクログ
「わたしは生きるために、パンを一斤盗んだ。いまは、生きるために名前を盗んでいる」
ジャン・ヴァルジャンはコゼッタと幸せな生活を送っていた。そこに現れたマリウス。コゼッタはいつまでも子供なわけではない。ジャンはいずれコゼッタと別れなければならない。
革命こそ進歩だと考えるマリウス。退廃した正義を取り戻すため命を捨てる若き反乱者たち。激動の時代に生きた若者と、別人になり影に生きる老人。感情はすべての理論を凌駕する。
Posted by ブクログ
エポニーヌよ、最期まで良い子だった。
彼女の最期は悲劇的に見えるけど、彼に愛されないとわかった以上、彼の腕の中で死ねるのは最上の選択ではないか?
マリウスを想うエポニーヌや、コゼットを渡したくない感情がありながら瀕死のマリウスを助けるジャン・ヴァルジャンは、客観的描写のみで本人視点が描かれていない。一見矛盾のように見える行動を突き動かしているのは、複雑なようでいて実はすごく単純なものなのかもしれない。すなわち、良心だ。もしかすると「愛」という言葉の方が文学的かもしれないが、私はあえて「良心」と言いたい。
クライマックス、無事コゼットとマリウスが結ばれて、むしろこれ以上ないくらいのハッピーエンドになってもおかしくないのに、一人苦痛に歪みながら黙して去るジャン・ヴァルジャン、涙無くしては読めなかった。
ヴァルジャンが訪ねてこなかったことに一日気がつかなかったコゼット、無垢ゆえの残酷!
マリウスも力尽くで会わせまいとしてるわけではないのだから(ちょっと陰険だけど)会おうと思えば会える距離に住みながら、徐々に、コゼットの住む町まで行けなくなる、精神的隔たりが大きくなっていく様が胸を打つ。
ああ、孤独に苦しんで!彼は常に孤独だった。側にコゼットがいるときでさえも、真実は胸に秘め、いつも、一人で苦しんで決断していた。
真実を共有できるのはただ一人、宿敵ジャヴェール。でも、彼ももういない。
ジャン・ヴァルジャンとジャヴェールの二人は、ヴィドックという一人の実在の人物をモデルにしていたはず。…ずっとうちで積読になってる彼の伝記を読むべき時がきたか…。