あらすじ
帰省する途中でバイク事故に遭い、右腕を失った大学生の桜千早。それは不慮な事故ではなく、事件だったーー。入院中、失った筈の右手に縋りつく女性の手の感触……。「みつけて」と結露した窓に描かれたメッセージ。千早は自分が事故に遭った日に殺されたという女性のことを思い出す。一方、県庁に勤める堅物でまじめな大野木は、急遽、特別対策室の室長を任命される。そこは行方不明者や怪異現象などの曰く付きの案件を専門とする部署で、組織でも秘密裡の部門だった。特別な対策を必要とする案件を解決するべく、大野木は紹介された霊能者、桜千早と出逢う。オカルトホラーバディここに開幕。
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Posted by ブクログ
事件に巻き込まれて右腕を失った桜千早。実在しない右腕は怪異に反応する。
長身でエリートの大野木龍臣。見たことも経験もない怪異を担当する特別対策室の室長を命じられる。
桜が右腕を失うところから話は始まり、大野木と出会いバディを組み怪異に対応する話と言葉で説明すると淡泊だが、実際読むとなかなかに濃い話だ。
「殘仇」:桜の右腕を失い、能力に目覚めるきっかけの話。桜の人柄がこの話を読むだけでも分かる。誰かのために優しくも非情にもなれ。個人的には桜、よくやったと言いたい。
「掬魂」:大野木と桜が出会う話。こちらは大野木の人柄が分かる。真面目で堅実、怪異を信じてない。そういう人がそれを経験したらこうなるんだろうなーという予想通りだった。
「團詩」:自殺者の絶えない通称自殺団地。好奇心で首をつっこんで帰ってこれなくなるとは、元凶にも来ちゃった方にも、残念だったねくらいしか言うことない同情の余地なし。
「洩呪」:壮絶ないじめの上で亡くなった虻川千尋は生きることに未練がなかったのだろう。残された母親はいじめた生徒を、その親を、見て見ぬふりの教師を、守れなかった自分を許せなかったんだろう。ここまでのバッドエンドもなかなかない。
「叫禍」:思いこみによってどれだけの犠牲者を出したんだろう。同情する要素は1ミリほどあるが、自身と同じ苦しみを味わう親子を量産してるって性格悪いの次元越えてる。
「至双」:行方不明者の出るトンネルの調査。珍しく恐怖を感じない。それもそのはず話を通して帯刀老の紹介をされたのだから。
「酔う搖花」:遙か昔、人身御供のある時代。結末を変えることはできない。それでも、そこに至る過程を変えることで少しでも救いになるのならと行動した2人の覚悟を感じた。
立場を変えれば、見る人が違えば、その話は救いにも絶望にもなる。そういう1冊だった。
1話1話が短く、桜と大野木の性格も分かりやすく読みやすかった。
個人的には、帳尻あわせなハッピーエンドでなく、後味悪いバッドエンドがあるのがよかった。