【感想・ネタバレ】女の一生 二部・サチ子の場合のレビュー

あらすじ

第二次世界大戦下の長崎で、互いに好意を抱きあうサチ子と修平。しかし、戦争の荒波は二人の愛を無残にも引き裂いていく。修平は聖書の教えと武器をとって人を殺さなくてはならないことへの矛盾に苦しみつつ、特攻隊員として出撃する。そして、サチ子の住む長崎は原爆にみまわれる。激動の時代に、信仰をまもり、本当の恋をし、本当の人生を生きた女の一生を鮮やかに描き出す。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

キリスト教信仰と、被曝地となった長崎、そしてアウシュビッツ。
第二次世界大戦の被害がとりわけ大きかったこの二つの土地が描かれている。

けれどこの作品は、戦争そのものを描いた小説ではなく、
タイトルの通り「女の一生」――
サチ子という一人の女性の生き様を描いた物語だったのだと、読み終えて強く感じた。

修平にとってキリスト教は、ただでさえ制約の多い戦時中において、さらに重たい枷となっていた。
教会でも「いたずら」をしてしまうような悪ガキだった修平にとってもやっぱりキリスト教の教えは心の指針だったのに、戦争によってそれが壊されていく...
その中で抱え続けた葛藤は計り知れず、同時に彼のまっすぐな心の持ち方があまりにも綺麗で、だからこそ苦しかった。

修平の最後の手紙には涙が止まらなかった。
「辛い世代」――本当にそれに尽きる。
どれほど多くの将来を夢見た若者たちが戦争によって命を奪われたのだろう。
戦争は絶対にダメ、なんて軽く言える言葉ではないけれど、それでもやっぱり絶対にダメなんだと思った。

素直になれない性格の修平が、戦争が進むにつれて立場上ますます本心を表せなくなっていく中で、
詩を通してだけはサチ子にまっすぐな気持ちを伝えられていたことが胸に残る。
詩を通じて心を通わせる二人のあまりにも純粋な愛に心を打たれた。

二人の記憶はすべて、サチ子の心の中のチョコレート箱に、永遠に大切にしまわれているのだろうな。

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2026年01月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

遠藤周作らしいいろんなテーマがあった。
神の沈黙が、今回は「殺すなかれ」と教えながら戦争を黙認する教会の沈黙や、「神なんていない」という救いのないアウシュビッツに変奏していた。
神は直接の救いをもたらすわけではないが、修平の渾身の疑問を正面から受け止めて苦しげに分からないという高木牧師や、アウシュビッツに共に収容されていながら、いつもあなたのために祈っていると語るコルベ神父を通して、神の沈黙は沈黙ではないと語られている気がする。つまり、直接目に見える解決はしなくとも、苦しむ人ともに苦しむ愛なる神、のように。神のみならず人間も、他者の苦しみを前に無力だ。サチ子も修平の苦悩を前にマリア像に祈るしかできないし、ジムも長崎の不運に心を痛めながら原爆を落とすしかない。でもそこで祈ることや痛むことは無意味ではなくて、人間はつまりいつでもそういう存在を望んでいる。弱っている時、ただそこにいてともに苦しんでくれる相手を。「沈黙」「侍」と相通じるテーマで、とにかく苦しいけど深い。

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2019年05月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2021/6/29
長崎に行くことがあり、再読。
前に読んだ時より、コルベ神父の存在を強く感じた。
ヘンリックに与えた小さな変化は他の誰かにとっての大きな変化。人を少しでも変えるほど影響力を持ったコルベ神父はやっぱりすごい。
結末はわかっているのに後半読み急いでしまった。
今回は修平に寄って読んでしまう。どうにもならない運命に理由をつけて進んでいく。矛盾してることはわかっていても抗えない運命を受け入れる。
キリスト教はつくづく受け止める受動的な宗教だなと思った。
そは求むるところなき愛なり、これに尽きる。


かなり昔に読んだきりだった為、再読。
前より面白かった気がする。
キクの時と比べて話があっちこっちに行くので、サチ子に思い入れがしにくく、前は少し苦手だったところを今回は乗り越えられた。
キクと同じくイエス様もマリア様もいちばん大切なものを助けてくれない。それでもサチ子は最後まで祈る。在るものの中から幸せを見つけて、それに対して感謝する。
人生はこの形でいいのだと耐えていた。という言葉で遠藤周作の作品の全てに通じるものを見た気がします。
それでも修平とコルベ神父に何か救いを見せて欲しかったな。ヘンリック等々で救われるという解釈もできますが。でもこの感じがいいんだよなー…

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2018年09月25日

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ネタバレ

第二部は第二次大戦下での長崎を舞台とし、サチ子を主人公とした作品です。

 おさななじみのサチ子と修平は互いに好意を抱きあっていた。修平は聖書の「汝、人を殺すなかれ」という教えと戦争で人を殺さなくてはならないことの矛盾に悩み、やがて特攻隊として出撃する。一方、サチ子の住む長崎は原爆にみまわれる。


 この作品では、修平が矛盾に苦しんだことと、サチ子の修平を思う気持ちがすごくわかるなぁと思いました。この作品で修平が感じた矛盾は、作者自身が実際戦争中に感じたことだったそうです。
 ラストではサチ子は別の人と結婚し、家庭をもっています。しかし真剣に恋をした修平の事は一生忘れていないし、忘れはしないでしょう。最後の一文の「人生はこの形でいいのだと耐えていた」にはいろいろな思いが含まれているように思います。ただひとつ違和感なのは、サチ子は耐えているのではないと思うというところ。それはそれで、きっと幸せなんだと思うけどなぁ。


 また、第二部ではドイツのアウシュビッツでのユダヤ人に対する惨い仕打ちがまざまざと描かれていました。戦争の為せる業と思いつつも...やっぱりむごい。こういうことは二度と起こってほしくないですね。

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2014年02月18日

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ネタバレ

本編の主人公・サチ子は第一部の主人公キクの遠い親戚(祖母のいとこがキク)。
舞台は第二次世界大戦ごろの長崎。やはり切支丹が題材。

正直作者が取り込みたいエッセンスを全部一つの小説に入れ込むタイプの小説は好きではない。今回で言うと原爆、学徒出陣、特攻、アウシュビッツという要素がそれに当たり、山崎豊子の二つの祖国を読んだときにも同じような感想を持ったことがある。

一方で作者は人間の弱さ、強さ、汚さ、美しさ等あらゆる側面を捉えているため、惹き込まれる。
色々詰め込み過ぎかなと思う一方、色んな人が色んな立場で現実に向き合ったんだなと思わせる1冊でした。

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2025年07月31日

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ネタバレ

「あなたは――ご自分の為さっていることが、心にお辛いのですか? 死ぬまであなたのことを祈ります。ご自分に絶望なさらないように」コルベ神父の言葉が残る。そして、知る。これは、実話だったのだと。
「愛がここにないのならば、愛を作らねば」私たちは、この言葉を忘れてはいけない。神父の生き様を忘れてはいけない、と。

キリスト教は、何故か、加害者(悩める迫害者?)に寄り添うシーンが多いような気がする。弱者にではなく。

コルベ神父の印象が大きすぎて、サチ子を忘れがちです。しかし、時代は、学徒出陣から特攻、そして、昭和二十年八月九日午前十一時二分へと進んでいきます。
誰にも止められなかった。しかし、その記憶は、令和の今、どれだけ残っているのだろうか、と。

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2021年11月14日

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ネタバレ

 コルベ神父がアウシュビッツで同じ班だった妻子ある父親の身代わりとして餓死の刑を受けるという行動が「無償の愛」だと思った。
 女の一生〈1部〉キクの場合でも無償の愛について考えたけど、今回は自分が愛する人(家族や友人や恋人)のためではなく、見ず知らず,ただアウシュビッツでたまたま同じ班だった人の身代わりとして死ぬという行為、これこそが全く見返りを求めない愛だと思った。
 最後に、この小説でコルベ神父が実在の人物であることを知って更に感動した。この方を知ることができて良かったと思う。

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2021年05月07日

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ネタバレ

自分の状況とダブらせてしまう。
離れる人と留まる人。
祈る者と願う者。

もどかしく、美しく、醜く、悲しい。

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2011年07月24日

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ネタバレ

「死なないで」彼女は引き絞るように叫んだ。「生きて。戻ってきて」+++
 高校で出された課題本は一部だけでしたが、二部も読んでみたいと書店へ走った記憶があります。一部はひたすらに胸が張り裂けるような本でしたが、この二部はサチ子のひたむきな愛情に泣かされっぱなしでした。
 そしてこの本を読んだ翌年の、高校三年の夏。キャンパス見学の帰りに、私はふと靖国神社にたちよりました。余りの暑さに辟易して、境内に涼を求めたのです。ついでだからと参拝しようとなんとなく思って拝殿に向かいました。
 拝殿でお参りが終わったときに、車いすのおじいさんとすれ違いました。そのおじいさんは本殿にたどりついた途端てぬぐいを握りしめて、はげしく慟哭しはじめたのです。震えるおじいさんの背中と、言葉にならない悲痛な叫び、五月蠅い程の蝉しぐれ。社会人になった今でも、まだ胸に焼き付いています。
 サチ子はラストで生き残った修平の友人を見つけます。彼は生き残り、教会でなにを祈ったのか。大戦で散った若いいのちはせつない形だけれど私たちのなかに息づいている。それを実感した一冊です。

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2013年05月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一部の登場人物ミサの孫のサチ子の話だ。
人間を信じなければ、人間のために尽くすことはできない。
愛とは他の人々を幸せにしてあげることだ。見返りを求めてするのではなく、求めることがないのが本当の愛だ。
明日のことを思いわずらうなかれ。今日のことは今日一日にて足れり。

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2020年10月25日

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