あらすじ
旗本の黒崎が札差・笠倉屋にやってきた。すでに借り入れできない配下の侍に、さらに十両貸せと言う。突然の無茶な金談に違和感を覚えた弐吉は、2人の繋がりを調べ始める。黒崎は、弐吉の父の死にまつわる疑惑の相手でもあった。ただならぬ思いで黒崎に迫る弐吉に、公儀御用達の品の怪しい動きが見え隠れするのだが、確かな証が見つからず……。行き詰まった弐吉は、命がけである勝負に出る。
決意と覚悟のシリーズ第3巻!
感情タグBEST3
札差弐吉の勇敢な働き
札差・笠倉屋では、後継ぎの若旦那が相変わらずお店に迷惑になることばかりしている。
今回は、外で女を孕ませる事態を引き起こし、主人・金左衛門が息子貞太郎を連れて女宅を訪れて、金で事態を収めるのだった。貞太郎の軽率な行動は、一つ間違えればお店の暖簾に傷を付けるような事ばかりである。
手代の弐吉は、大得意先の御納戸組頭黒崎が連れてきた御納戸衆能美彦兵衛の金談の対応をした。本来能美の借金には応じられないところ、黒崎の要請を汲んで弐吉は能美に5両を貸し出して金談を済ませた。
だが、弐吉は無理を押す能美の要求を不審に思い、番頭・清蔵に相談した。そして清蔵は弐吉に黒崎の周辺を調べるように指図した。
弐吉は、父の死亡事件に黒崎が関係しているとの疑念を抱いていたこともあり、札差仕事と黒崎の調査を合わせて行う忙しい日々が始まった。特に、外出する用が出来た時には、容疑に浮かんだ者の屋敷に聞き取りを行ったり見張ったりした。
町回り同心、城野原の岡っ引き冬太がこれに加わり、協力し合い細かい調べを行った。そして黒崎と用人篠田を公儀呉服屋・玉置屋の主人と番頭が料亭で接待する所を見た。
公儀の注文品白絹500反に絡む、玉置屋と能美、黒崎の贈収賄事件が暴かれる。
能美が玉置屋に白絹500反を注文して、その代金の一部を黒崎に還元したことが判明したのである。黒崎は、かねてより上役溝口監物に贈り届けをして、自らの出世を望んでいたのである。その贈答品の購入に賄賂として得た金を当てていた。
弐吉は黒崎が本当に父の敵なのかを古着屋女房に面通し、確認してもらった。黒崎が父の敵と知った弐吉は復讐心に火が付き、更に贈収賄の証拠となる玉置屋の裏帳簿を見つけ、奉行所に届けた。奉行所経由で目付に訴えが回り、溝口監物も同時に事件を届け出て、黒崎と用人篠田、能美は切腹、お家は取り潰しとなり裁かれた。
弐吉の非常に勇気ある行動、即ち細かな調査活動と時に命知らずに侍に向かう態度は、とても立派で感銘を受ける。優秀な若い手代だ。
物語は捕り物風である。この若い弐吉が、自らの商売に一意専心務めれば、また別な面での課題を解決するだろうと期待が持てる。楽しみである。