あらすじ
武家社会の中で江戸の裏長屋暮らしだった少年・弐吉は、直参の侍の狼藉がもとで両親を亡くし、札差・笠倉屋で小僧奉公をすることに。逃げ場のない俊吉は、家族を奪った武家への強い恨みを心の底に持ちつつも日々夢中で働いていた。弐吉の一生懸命な働きぶりと持ち前の優しさが伝わり、周囲には少しずつ味方が増えていく。また、札差の仕事を通じて、傲慢で威張ってばかりいるようにしか見えなかった直参御家人のお金事情やそれぞれの家の問題点が見えてくる。「これは、おもしろい」弐吉は、この稼業に一生をかけようと決めた。
その矢先、笠倉屋からの貸金がある札旦那が、辻斬りの嫌疑をかけられて御家断絶の危機に。そうなると貸金は一文の回収もできなくなる。主人から「冤罪を晴らせ」と命じられた弐吉は札旦那の身辺を探り始め……。著者渾身の新シリーズ始動!
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札差屋小僧のお手柄
浅草森田町にある札差、笠倉屋の小僧、弐吉は将軍直参の侍に支給される切米を侍の自宅に配達した帰り道に、魚油屋上総屋五平が侍と思しき二人連れに殺されて、集金したばかりの金子、十数両を盗られた事件を目撃した。遠くからであり、日が暮れて辺りは暗かったため、顔や姿までははっきりとは解らない。目撃者は複数人いて、犯人は一人だ証言する者もいた。
魚油屋五平殺しと金子十数両の窃盗事件を調べるため町廻り方が探索に動いた。
事件の容疑者が聞き込みから3人が浮かんだ。旗本の梶谷と塚本、そして御大身の宇根崎将監とその用人阿部である。
町方の調べで梶谷が下手人の可能性が濃厚になったのだが、弐吉の証言どおりなら下手人が一人足りない。町方は梶谷を下手人として有力視していて、何度も笠倉屋を訪ねては弐吉の人柄や生い立ちなど、信用が出来る男かを確かめようとする。弐吉はお店では他の奉公人たちからも嫌われていて、普段から孤立している。弐吉に有利な面はなく、益々皆から疑われ弐吉も窮してしまう。梶谷は笠倉屋の札旦那である。下手人なら、72両という貸し金が未回収となり店の損失にもなる。そこで、こうした事情を勘案した笠倉屋は、独自に手代の猪作と小僧の弐吉に事件を調べさせるのである。
このままでは、弐吉にしても出世の道が遠のく。弐吉は事件の探索に力を注ぎ、自らの証言の信憑性を明らかにするのであった。
弐吉は事件の真相を捜して粘り強く街中を歩き回り、また細かく丁寧に調べて、やがて弐吉の証言通り下手人が、御大身宇根崎将監とその用人阿部の二人であると確信した。
宇根崎は将軍のお側仕えの役目に神経を擦り減らし、吉原の高級な郭で花魁遊びなどで気を紛らわすなど荒れた生活を送っていた。そして、もっとも酷いことは、憂さばらしに町人の辻斬りを働いていたことだった。
物語は短い文章が連なりとても読みやすい。私自身、読解力に欠ける点があるが、解らずに何度も同じ箇所を読み返す箇所もあったのだが・・・おもわず弐吉に同情してしまった。
Posted by ブクログ
江戸経済の話なら第一人者のストーリーテラー作家の作品。
多分これからの仕上がって行くであろう小僧の弍吉が主人公。
弍吉の才能を知ったのはライバルであった。こと極いじめられるが、持ち前の頑固さと分析力で事件を解明することに助力!