あらすじ
仲間の助けを借りた甚夜は、南雲叡善の企みを阻止して皆を救うことができた。だが、目的の一つであった鬼哭の妖刀は、混乱の最中、吉隠によって持ち去られてしまう。吉隠が密かに狙っていた鬼哭に秘められた能力、それは甚夜にとっては葛野の記憶に繋がる大切なものだった……!? ――大正編が大団円を迎える。大人気和風ファンタジー巨編、第十巻!
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Posted by ブクログ
中西モトオ著『鬼人幻燈抄 十 大正編 夏雲の唄』は、長きにわたり積み重ねられてきた「人と鬼の物語」がひとつの時代を超える節目として、美しくも切なく結実した一巻である。
大正という激動の時代を背景に、変わりゆく社会の中でなお「変わらぬもの」を求め続ける人々の姿が、静かな筆致で描かれている。かつて何も守れなかった甚夜が、今度は誰かを守るために立ち上がる。その成長の軌跡は、過去から未来へと受け継がれる意志の炎のように、読み手の胸の奥を温かく照らす。
野茉莉との再会の場面には、時間の隔たりを越えた絆の尊さがにじみ出ており、哀しみの底にひそむ希望が静かに息づく。終盤で語られる「世の中は変わっていく。だからこそ、私たちだけは変わらず今を思い出せる場所を残す」という言葉は、この物語の核心であり、儚い時代を生き抜く者たちへの祈りでもある。
シリーズを通して描かれてきた“人の情”と“鬼の孤独”、そしてその狭間に生まれる“祈りにも似た生”の輝き――そのすべてが、大正編という舞台でひとつの円環を描き出す。本巻を読み終えたあと、深い静寂の中で自らの心にも“守りたい何か”が確かに息づいていることに気づくだろう。
『夏雲の唄』は、ただの時代小説でも、怪異譚でもない。これは、変わりゆく世界の中で“変わらぬ魂”を探し続ける者たちの詩(うた)である。
Posted by ブクログ
余談:夏雲の唄/妖刀夜話 ~鬼哭~ /溜那の話/大正編終章:街の小さな映画館/幕間:老いも若きも
鬼と鬼の闘いは続く 大正の終わりにも
この先も終わらない?
2009年(平成22年)の高校生活も続く
楽しそうに
鬼も一緒に?
そう あなたの隣に 鬼はいるのだよ……